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その40


少し寒くなってきたとある日のこと奏と屋上で弁当を食べていた。



「はっくしゅッ!ううぅ……」

「そろそろ寒くなってきたよな、弁当も中で食べないか?」

「そうだねぇ〜、図書室とか暖かそうでいいかも」



そんなことを喋っていると屋上の扉が開いた。誰かなと思い俺と奏は陰から顔を出してひょっこり覗いてみると新垣と知らない男子だった。



「あれ何組の男子だ?」

「見覚えないなぁ、先輩じゃない?」

「ぽいな、てかこんなとこで新垣の奴あの男子と何してんだ?」

「あ、もしかして…… 優、もっと顔隠して!」

「お、おい」



奏にグイッと顔に両手を掛けられ引っ込められる。



「なんだよ?」

「こんなところに新垣さんが自分で来るわけないじゃん、ひょっとして告白されるのかも」

「え、告白?」



そう聞いたので慎重に顔を再度出す。俺の肩に奏は手を掛けて俺の頭の上から奏も顔を出して覗く。



「奏、よく考えたら俺らこんな覗き見していいのか?」

「本当は良くないけど…… 気になる!」

「何が?」

「私も優と付き合う前はたまに告白されてたけど私以外だったらなんて言うのか。こんなとこに出くわすなんてあんまりないと思うから参考に」

「参考にって……」



コミュ力皆無な新垣で参考になるのかよ?だったらまだ神城に…… って奏は神城ほどクールじゃないから無理か。



そんなことを他所に新垣は男子から詰め寄られていた。



「一目見た時から好きになって…… もし誰ともまだ付き合ってなかったら俺と付き合って欲しい。お願いします!」



おお、相手が切り出した。新垣に告白した男子は同じ男子の俺から見ても結構イケメンの部類だ。



「わッ、ストレートな告白ッ!」

「お前結構興奮してないか?」

「そ、そんなことない、でも優にもあんな風に言って欲しいかも」

「お前なぁ」



奏が前のめりになって俺の肩に置いた手がギュッと強くなった。果たして新垣はなんと答えるのだろう?少し間があいて新垣は答えた。



「ご、ごめんなさい!!」



そんな新垣は気不味そうに相手に謝る。



「断っちゃった」

「断ったな」

「うぅ…… 優に断られた時のこと思い出しちゃうかも」

「それをぶり返すなよ、俺だってちょっとあの時のこと気にしてるんだから」



それにしてもやっぱり新垣モテるんだな、実際告白なんてされてるところを見るとそう実感する、あの新垣がな。



新垣に断れた男子は少し俯いた後顔を上げると……



「ええと…… 理由とか聞かせてくれるかな?」

「え、理由?ですか…… あの、その…… 私好きな人が居て」

「同じ学校?」

「はい……」

「そう。でも好きな人が居るからって諦められるか?もし俺と君が逆の立場だったら」

「え?」



あれ?これで終わりじゃないの?告白した男子は新垣に予想外に食い下がってきている。



「なかなかあの男子引き下がらないね」

「なんかそういうとこ奏みたいだな」

「え?私?!でも本気なら一度断られたくらいじゃそうなるよ」



そうなんだろうけどなんかだんだん雰囲気がおかしくなってきた。その男子は新垣に詰め寄り腕を掴んだ。



「あ、あの!?」

「俺、その君が好きな奴より君を好きだと思う!」

「え、や…… いたッ」



いやいや、だからって新垣ちょっと迷惑そうにしてるだろ!



「優〜ッ!ちょっとあれ危なくない?新垣さんが」

「確かに雲行きが怪しくなってきた」

「私達で助けない?」

「は?」

「同じクラスメイトだし放っておけないよ優」

「だけどどうやって…… って!」



奏は俺の肩を引っ張って新垣とその男子の前に出た。



「え?え?足立君白石さん!?」

「ん、誰?」



そりゃビックリするよな、俺も奏にその場に連れ出されて??な状態だし。



「ごめん新垣さん、私達ここでお弁当食べてたんだけどちょっと出て行きづらくて」



まぁ出て行きづらかったのはそうだけど仕方ないな。



「えーと悪いな新垣。それと先輩」

「なんだクラスメイトか友達?あれ??」



新垣は手が離れた先輩の元から俺と奏の方へ小走りで走って間に入った。



「はい、新垣はこういうの慣れてなくて。だからこいつ少し困ってます」

「あー、そっか。いや、困らせてごめんね?」



先輩は頭をポリポリと掻いて新垣に謝った。



「い、いえ……」

「あ、お昼時間そろそろ終わるよ、教室に戻らなきゃ。ね?優、新垣さん」

「そうだった。なんかすみません、邪魔しちゃって」

「いやいいよ。こちらこそ邪魔して悪かったな」



そう言うと先輩はあくびをして屋上から出て行った。なんだあれ?あれだけ言って結局はダメ元だったのか?



「あの…… 足立君白石さん助けてくれてありがとう」

「ううん、同じクラスメイトなんだし困った時はお互い様だよ」

「まったく。何事もなく済んで良かったよ、戻ろう新垣」

「う、うん……」



その時制服の袖をキュッと新垣に摘まれた。



「新垣?」

「あッ、ええと…… ちょっと怖かったから。ってごめんなさい、ごめんなさいッ!!」



その光景を見ていた奏に新垣は謝った。



「い、いいのいいの!確かにああなるとちょっと怖いってのわかるから。ね?だから落ち着こう?もう大丈夫だから」



奏は新垣の背中を優しく摩ると新垣は少し落ち着いたみたいで俺達は教室に戻った。


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