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その4


俺は窓側になり満足していた。正直奏にこれ以上踏み込まれたくない。



そこまで鈍感ではないから奏の気持ちもなんとなくわかっていた。けどこのままでいい、付かず離れず。俺はきっと奏と付き合っても釣り合うとも思えないし何よりこんな考えの奴と付き合ってうまく行くはずがない。



好かれてるってわかったのは割と前からだ、俺みたいなのに興味を持つなんて光栄だな、それも奏みたいな可愛い子に。



でもきっと失望するだろうし友達のままで居た方が面白おかしく過ごせるよ、でも奏のことは友達だとは思ってる本当の意味で、だからこれでいい。



この席になって奏の席も決まった時にチラッと奏の方に目をやるとあからさまに俯いていた。そう都合よく何度も隣の席なんかになれるわけないじゃないか。



まぁまた神城さん(なんとなく神城さんは『さん』付けしないと失礼な感じがする……)と近くの席になるとは思わなかったが。今度は前の席に神城さんに隣には「新垣 唯」少し暗い感じの子だ。正直俺はこのくらいが心地いい。



後ろの席には坂木さかもと 康太こうたこいつは最近仲良くなった奴だ、悪くはないかな。



そうしてこの席にも慣れてきた頃……



「ねぇ、優。明日土曜日でしょ?小テスト近いし一緒に勉強しない?」



奏がそんな提案をしてきた。奏は学年では中間くらいの頭の良さ、俺とあまり変わらない、少し俺の方が勉強出来るくらいだ。



別に勉強しなきゃいけないほど追い込まれているわけでもないがこれといって特に断る理由もない。



「いいじゃんそれ。しっかり奏に勉強教えてあげてね、足立君!」



聞いてたのか今井がそう推してきた。こうなってしまったら断ると気まずくなるので「いいよ。」と答えるしかなかった。



「やったぁ!じゃあ優は私のお家でお勉強会ね!ママにもしっかり連絡しておくからよろしくね」



内心盛大なため息をついて週末に差し掛かっていた。



土曜になり重い足取りで奏の家に進む。

面倒だな、友達はいいけど休みの日はひとりでゆっくりしていたかった。



実は1年の時奏と仲良くなってから何度か奏の家には遊びに行ったことがある。奏のお母さん、お父さんとも面識がありすっかり仲良くなってしまったのだ。



ピンポーンと鳴ると数秒後に奏が嬉しそうに扉を開けた。



「優、いらっしゃい!入って入って」 



奏は嬉しそうに手を引っ張る。思いの外勢いよく引っ張られたのでよろけてしまってよろけて奏にぶつかりそうになり密着してしまった。



「あ、ごめんッ」



バッと奏が離れた。まったく…… 嫌な奴だな俺は。



「俺こそ悪かったな」

「ううん、えへへ」

「奏ー、優君来たのー?」



後ろの方から奏のお母さんの声が聞こえた。いそいそと奏のお母さんもこちらに来た。



「優君、お休みのところ奏に勉強教えてもらって悪いわねぇ、でも私も優君来てくれて嬉しいわぁ。 さぁ、奏の部屋行ってて。今お茶持ってくから」

「はい、ではお邪魔します。あまり俺も勉強出来るとは言い難いので力にはなれませんが」

「いいのよ、奏ったら優君くるの楽しみにしてたんだから」

「お母さんはいいから!恥ずかしいでしょ!」



奏はお母さんを押してキッチンの方へ追いやった。



「優!今お菓子とか持って行くから私の部屋に行っててー!」



2階に上がり奏の部屋に入る。奏ってなんか無防備だな、いくら俺だからって自分の部屋に勝手に行っててとか‥

ガチャリとドアを開けて奏の部屋に入る。



俺の部屋と違い、女の子らしい部屋だなぁと思う。小綺麗にまとまっていて小さいテーブル、ベッドにはうさぎのぬいぐるみ、なんかキラキラして見える。



前来た時とあんまり変わらないなぁと。まぁ当たり前か。勉強している最中だったのか小さいテーブルには教科書などがそのまま開かれていた。少しすると奏もお菓子とコーヒーを持って入ってきた。



奏の部屋で勉強して1時間経った頃だろうか。互いに頭の力量が同じくらいだけあって思ったように教えられてるのかな?と疑問に思い始めた時奏での様子がおかしい。



顔を真っ赤にさせて変にモジモジしている。気になって「奏?」と呟くと奏はハッとしたように下を向いた。




「ねぇ優」

「どうした?」

「優は私と居てドキドキしたりする?」「え?」

「私はね、優と居ると凄くドキドキする。最近になって特に。初めはね、優のこと気になって友達になりたいなって思ったの。でもね、段々優のこと……」



そこまで言うと奏は黙ってしまった。しばらくの間沈黙が訪れる。奏は耳まで真っ赤にして意を決したように俺の目を見た。



それ以上はやめてくれ、勉強で呼び出しといていきなりそれは卑怯じゃないか。



「ねぇ優、私のこと好き…… ?」



俺の中で何かがヒビ割れるような感覚が走った。できれば聞きたくなかった、いや。いつかはこんな日が来ると思っていた。



奏がなんでこんな俺を好きになったかは奏の思考回路のが導き出した結果なんだろうが。いきなり言われたことに奏と付き合った場合の利点と欠点を己の中で瞬時にシュミレートする。



はははッ、目の前で真剣に告白されたのに今後をシュミレートとかって、よく出来たお友達だな俺は。 これはこう言う他にないだろう。



「奏のことは好きだよ…… 友達じゃん」



途端に奏が真っ青になり酷く動揺している。



ああ、これはダメかも。来週からどうやって接しよう?どうやって奏を避けようと最低な思考がぐるぐる巡る。



「そっか……そうだよね、私ってバカだ、こんなこといきなり言われたら気持ち悪いよね。ごめんなさい」



先程の奏の高揚が嘘のようにだけどとても悲しそうな表情で強張った笑顔を作る。 ダメなのは俺のこの人間性で奏はちっとも悪くないのに。


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