新垣唯
「あ……」
授業の準備をするのにノートを出して教科書を出そうとしたらノートが滑り落ちて神城の席の下に落ちてしまった。
神城も築いたので取り難いな、と思っていると……
「はい」
「あ、ああ…… サンキュー」
神城は俺のノートを拾って俺の机の上に置いた、そしてそのまま前を向こうとした。
「なあ」
呼び止めてしまった。この前奏に「優もそろそろ仲直りしてあげたら?」と言われたことが過ったのだ。
「うん?」
「…… いや、拾ってくれてありがとうって」
「ふふッ」
「ん?」
少し抵抗があって同じことを言ってしまったら神城がクスッと笑う。
「いえ、どういたしまして足立君。私こそ」
「え?」
「また話し掛けてくれてありがとう、関わらないって言ったから話し掛け辛くて。あのね前のこと……」
「いいよ、知らない仲じゃあるまいし」
そう言うと神城は目をパッと開いて俺に微笑んだ。それから神城とは前のように話すようになっていった。
それから数日後……
「あー良かったよ、優も絵里と仲直り出来て」
「別に仲直りとかってものほどじゃ」
「足立君も私もなかなか素直じゃないからね」
「そうやって私を取り残して何か分かち合った風にするのはダメ、優は私のなんだから」
「わかってるわよ、ふふッ。あら?」
朝教室で話していると神城が教室の扉の方に注目するので俺と奏もそちらを見ると新垣の姿があった。
「あれ?新垣さんの髪型変えた、オシャレになってる」
「そうね、地味目だったけど少し垢抜けたわね」
今日の新垣はふわっと緩やかなパーマが掛かりほんの少し化粧しているのか一瞬誰かと思ってしまった。
「新垣さんおはよう、いいねその髪型。それに可愛い!」
「お、おはよう、そんな……」
奏が席に来た新垣に挨拶して髪型を褒めると恥ずかしそうに俯いた。
「エアリー風?なかなか似合ってるし垢抜けたわね新垣さん」
「神城さんまで…… そ、そうかな?」
俺の方をチラッと見たので俺は視線を他にズラした。
「今足立君にも何か言って欲しそうな顔してたけど?」
「そ、そんなことないよッ!」
「あらあら」
「余計なこと言うなよ神城」
「にしてもいきなりどうしたの新垣さん?」
誰もが気になっていたことを奏は聞いた。
「あの…… その、今もそうなんだけどもうちょっと明るくテキパキしてないとってバイトで言われてて。それでまず見た目から変えてみたら変わるかもよって言われて」
「確かにそれはあるかもね、ハッキリ言って今の新垣さん奏に負けてないわよ?うふふ」
「わ、私なんかが白石さんと比べられるなんてありえないよッ」
「なーんか絵里の言い方相変わらずトゲがあるなぁ。でも実際新垣さん凄く可愛いよ」
「いや、ははは……」
褒められ慣れてないのか新垣は机に突っ伏してしまった。そしてそんな新垣の変化に男子が噂していた。
「なあなあ、新垣見たか?めちゃくちゃ可愛くなってね?」
「思った思った、今まで地味で暗いし目立たなかったのにさ」
「白石と神城のツートップって感じだったのに食い込んできたよな」
「てか優の奴何気にあの3人と仲良くね?白石と付き合ってんのにさ。羨ましいぜ」
なんて声も聴こえてきた。
「よッ、色男!」
「なんだよいきなり?」
ヒロキと一緒に居た今井が話し掛けられる。色男って……
「足立君さー、奏と神城さん新垣さん3人抜きするつもりか?って噂立ってるよ?」
「優お前羨ましいぞ、いでッ!」
ヒロキがそう言った途端今井にゲンコツをされる。
「んなわけねぇだろう、大体神城は俺のこと好きじゃないし新垣も…… それとはちょっと違うし」
「うん、そうだと思った。奏は最近前にも増して足立君と居て楽しそうにしてるし。でも奏を傷付けちゃダメなんだからね!」
「わかってるよ」
新垣の変わり様にはビックリしたけどだからってそんな移り気になるわけないだろ。
そうして新垣が変わってからしばらくすると新垣はすっかり地味な女の子からよく告白される人気な女の子になっていた。




