その36
「ねえねえ!美味しいパフェあるの、食べに行かない?」
「パフェ……」
「露骨に嫌そうな顔しないでよ〜」
休日奏が俺の家に来て何を言い出すかと思いきやパフェとは。しかもデパートの中の……
「前行った時に食べようかと思ったんだけどさ岬ちゃんと優の水着選んでたら思いの外時間掛かっちゃったし優もお金なくなってたし」
「パフェ食べにわざわざ混んでるデパートにか」
それだったらガッツリしたもの食べたいななんて女子は思わないのだろうか?同じお金を使うんだったらって、別腹なんだろうなぁ。
「ねえ〜、行ってくれるのくれないの?」
「わかったよ行こう」
「やったぁ!さすが優」
「まったく」
まぁ奏にもいろいろ今までのことで心配も掛けたし。
「美味しかったら絵里誘って今度食べに行こうっと」
「美味しかったらって…… 美味しんじゃないの?」
「美味しいって評判だから。まずは優と一緒に行きたいじゃん?」
「なんか毒味みたいだな、いいけど別に。それにしても本当仲良くなったよなあいつと」
「優もそろそろ許してあげなよ?絵里もあれで反省してるし」
「そうだな、考えとくよ」
そうしてデパートに行きパフェがある店に行ったのだが美味しいと評判なせいなのか行列が出来ていた。
「マジかこの行列……」
「ね、凄いねえ」
それでも20分くらい待つとようやくテーブルが空いた。
「じゃあ私これにしようかな、優は?」
「うーん、フルーツパフェ」
決まったので呼び出しボタンを押すと店員がこちらに向かってきた、だが俺達の前まで来たのに何も言われない。
どうしたんだと思って店員の顔を覗き込んでみると……
「え?新垣?!」
「あ、足立君……」
そこにはなんと新垣唯が居た。
「新垣さんここでバイトしてたの?」
「は、はい…… 少し前から学校終わりと休日に。はッ!!ご、ご注文は!?」
「あ、うん……」
注文し終えると新垣は急々と去って行った。
「新垣さんがこんなところでバイトしてたなんてビックリだね」
「ああ、あの新垣がな」
「新垣さんってさ、優のこと好きだよね?」
「え!?」
奏が急に言ったことの方がビックリだ。なんとなく、なんとなくだけど俺は神城との一件があった時から何か引っ掛かってはいたけど。
「いやいや」
「なんか凄いキョドってる」
奏がジトーッとした目を俺に向けているのであの時のことを奏に話した。
「ふぅん、応援してるか」
「そうらしいけど」
「優が好きだからね」
「おいおい」
「優って優しいしカッコいいもんね」
声が低くなり俺に訝しげな視線を更に強める。そうしているとパフェが来たので奏は一口食べると……
「…… なぁーんてね!」
「へ?」
「私は優のこと信じてるもん」
ケロッと笑って奏はパフェの続きを食べ始めた。
それからデパートを出て帰り道を歩いていると後ろから足音が迫って来た。
「やっぱり!」
「あ!」
その足音の主は岬だった。新垣に続いて岬にも会うとは。
「岬ちゃん!?ひとり?」
「んなわけないでしょうが。ほら」
岬が親指でクイッと後ろを差した。そこには知らない男子が居てこちらにペコッと頭を下げた。
「岬の彼氏?」
「違いますよ、強いて言えば友達Bです」
「友達Bって……」
「あたしとデートしたかったようでたまには聞いてやるかと思ってたんですけど」
「いやお前声デカい聴こえるぞ?」
「聴こえて結構。それより優先輩、あたしにお礼するの忘れてません?」
「お礼?あ……」
そういやこの前そんなこと言ってたな。
「優、岬ちゃんにお礼って?」
「ええと……」
「奏先輩感謝して下さいよね?優先輩と今そうしていられるのあたしのお陰かもしれないんですよ?」
「え?」
「あーわかったわかった、何か奢ってやるからさ」
「やった!じゃあこのままこのメンツでどこかで遊びましょうよ」
「だってさ奏、いいか?」
「うん、いいよ。岬ちゃんとお話ししたいし」
「聞いて下さいよ奏先輩、優先輩ったら……」
そうして岬達と遊んでその日は過ぎて行った。




