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その35


ほんとバカみたい…… 私つまらないことしたな。



さっき足立君と白石さんに呼び付けられて私は屋上の方に向かっていた。なんのことかはもうわかってる、自分で蒔いた種だし。



でも足立君にあの日私が夜遊びしていることがバレた時……



足立君か、ちょっとビックリしたけど彼なら頼めば黙っててくれそう、そう思った。



けどその瞬間私にドス黒い考えが浮かんだ、知らない仲でもないしヤラせてあげてもいいかも足立君次第で……



今まで胡散臭い態度な足立君とどうでもいい会話をしていてそこに白石さんという彼の彼女。育ちの悪い私はそんな足立君が楽しそうな顔をしているのがたまに無性に腹が立つ事があった、態度には表さないけどね。



そういうこともあって意地悪してみたくなった。足立君を追い詰めて白石さんと別れさせて私がそこで優しく足立君を包んであげる、そして足立君が私を好きになったら捨ててやる。



下らない恋愛ごっこをしている2人にはいい勉強よねと……



私は彼と彼女を不幸にしたかったのかな?自分に不満があるから?親が最悪だったから?



私の両親は美人なママとかっこいいパパ、だけど私のパパとママは結婚しているのにどっちにも愛人が居てお互いそのことをわかっているのか夫婦の仲は冷めたものだった。



私はなんでパパとママは結婚したの?とずっと聞きたかったけど聞いてしまったら2人の仲が壊れてしまいそうで聞けなかった。



けれどそんなの関係なしに終わりはいつの間にかやってきた。パパの愛人がママを殺そうとした。前はわからなかったけどなかなか離婚しない2人に愛人が痺れを切らしたんだと思う。



でも失敗した、いえ成功したのかな?パパはその人と別れたが殺されそうになったママとしてはパパとはもう生活出来ない。



小学3年生の時ママは私を引き連れて今住んでいる街に来た。引っ越した先でママは相変わらず自分の美貌をひけらかして男と遊んでいた、私は家にひとりぼっちなのは前からそうだったけどこれからはママは少しは私に構ってくれるのかな?なんて淡い期待を抱いていた私は落胆した。



そうしてママは寄る年波で前ほど男が釣れなくなったママは私がどんどん自分に似て外見だけは綺麗に育っていく私が気に入らなくなったんだと思う、ママが連れてくる男も半分私が目当てみたいなところがあったから。



「お前なんか引きとらなれば良かった」



そう言われた。でも言われる前から態度でわかっていたけどいざ言われてみるとショックだよね、腐っても自分のママなんだし。



それから私はママと離れた、そしてパパに会いにいった。パパは久しぶりに会った私を見て抱きしめてくれた。



もう遅いのパパ…… どうして家族でいた時にそうしてくれなかったの?どうしてママと仲良くしてくれなかったの?どうして私を作ったの?



私は一人暮らししたいとパパに言うとパパは私の要望を聞いてくれた。



一人暮らしをしてるうちにいろんなことを考えた、2人はどんな気持ちだったんだろうとパパとママになったつもりで考えたけどわからなかった。



だからパパと同じくらいの歳の男の人と付き合ってみることにした。そしたら気持ち悪いだけだったけどお金持ちだったので私は今まで面白くなかった分その男の人を財布として利用した。



もちろん違うオジサンとも付き合ったし同年代くらいの男の子とも付き合ったことはある。まあ近くの人じゃないけどね、お金は余ってたし美人は得かも。



でも………… あれ?私ってママと同じじゃない?それはそうだ、私はあの両親の子供、そんなところを見てきた私にもそういう資質はあったのかもしれない。



あははは、もう考えるの面倒くさいや。



見た目だけは良くしてくれた分私は遊んだ。それなりに勉強も出来たし運動も出来るしお金もあるし容姿もいい方、なのに私は満たされない。なんでなんだろう?



そんな毎日を送っていたところに足立君とバッタリ会って今に至る。



足立君を追い詰めてもつまらなかった、白石さんにとって悪いことをしている自覚もちゃんとあった。私も殺されそうになったりして?なんてママと同じね私は。



それから2人の前に立つとなんて言われるだろうと思っていた。足立君は不安そうな顔をしている、白石さんは……



「神城さん、だったら私にも同じ目に遭わせて?」



??



「優が悪い目に遭わせられるなら私も被る。優だけに辛い思いはさせないから」



…… 私はそんな白石さんの言葉を聞いて途端に自分のやってることが本当に下らなくて自分が凄く惨めに思えてこの場から消えてしまいたくなった。



そして足立君に意地悪するために撮った動画も削除したことを伝えてここまでして勝手だけど金輪際関わることはしないと決めて立ち去るつもりだった。



なのに……








◇◇◇









「ねぇ絵里」

「馴れ馴れしいわよ」

「だって友達になったんだし」

「一方的にね」



神城と奏が仲良さそうに話している。いや、神城の言うように奏が一方的なんだけど。



あの時奏は何を思ったのか神城を追い掛けて行って呼び止めた。そして俺と同類なんだったら自分とも仲良くなれるよと言った。



それに対して俺も神城もポカンとしていたが神城はそんな奏の呼び掛けを無視して帰って行った。



その次の日も奏は神城に話し掛けていた。神城は俺らにもう関わらないと言ったので最初はそんな奏を無視していた。



けど次第に周りから「なんで白石さんのこと無視しているの?」という呼び掛けに変な空気が漂ってきたので仕方なく神城は奏と話すようになった。



「あんた最近神城さんにベッタリねぇ、苦手そうな感じ出してたのに」

「話してみるとね、そうでもなかったの」



それから帰り道……



「なんか凄いな奏って」

「どしたの急に?」

「俺はいまだに神城とは話せてないしムカついてるのに奏はそんな神城とも丸く収まるように積極的に話してる」



すると奏におでこをツンと人差し指を当てられニコッと笑った。そして……



「優が側に居てくれるからだよ」



そう言う奏を見て奏こそ俺の側に居てくれてありがとうと思ったけど口に出すのが恥ずかしくて奏にニコッと笑い返した。




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