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その34


「うん、うん…… そっかそっか……」



奏は俺の話を聞いてコクコクと頷いていた。だが……



「ふえッ…… ううッ、グスン」



やっぱりショックだったのか泣き出してしまった。



「ごめんな奏、不意にやられたとはいえ俺の不注意だった」

「そ、そんなことないよ、優は何も悪いことしてないじゃん、でもでもッ…… 」

「ああ、ごめん奏…… ごめんな」

「優……」

「ん?」



奏は俺の胸に埋めていた顔を上げてキスをした。



「へへへ、でもちゃんと言ってくれた嬉しいよ優」

「もっと早く言えば良かった。ごめんどっち道自分勝手だったよな、奏に黙ってるなんて」

「ううん。優も辛かったんだよね、だから神城さんと話をしよう?」

「ああ」



俺は奏を家まで送って帰ろうとした、けど奏に服をグイッと掴まれた。



「うん?」

「ここ最近少し優素っ気なかったよね?理由はわかった、わかったから今日はその分一緒に居たい。まだ帰らないで」

「奏……」

「えへへ」



ニコリと笑って奏は家に俺を招き入れた。奏も結構ショック受けてるくせに俺に負い目とか感じさせないように明るく振る舞っていた、本当に早く話せば良かった。



そうして次の日の学校の放課後屋上の階段に神城を呼び出した。



「どうしたのかしら2人で呼び出したりして。直々にお別れの申告?」

「違うよ神城さん。私優とは別れない、それを言いたかったの」

「あら、白石さん足立君から話を聞いた上で?足立君ね、私とキスしたばかりか……」

「神城ッ!」

「優、私は大丈夫だから」



奏は俺の手をキュッと握ってそう言った、岬の時とは違い奏は怯まなかった。



「へぇ、白石さん意外とタフなのね。メンタル的に弱いと思ってたんだけどむしろ足立君より堂々としてるじゃない」

「何がしたいの神城さんは?」

「私のテリトリーに入ってきたのはあなた達じゃない?」

「そんなの偶然じゃない、それにそれで優を追い詰めるなんて理不尽すぎるよ」

「そう理不尽よ、それが何か?ちょうどいいから舞い上がってる白石さんも潰してあげようかと思っただけだしね」



神城の奴もまったく動じずに淡々と答える。



「寂しいんだね神城さんは」

「は?」



けどポツリと奏が呟いた言葉で神城は若干声が上擦った。



「口ではそういう風に言ってるけどだったらなんで神城さんはそんなに苦しそうな顔をしているの?」

「何が……」



苦しそうな顔?俺にはわからなかったけど奏はそう思ったらしい、そして的を当ていたのか先程と違い神城の顔は少し動揺しているように見えた。



ていうかなんか俺この2人の間に口を挟めない雰囲気なんだが……



「ごめんなさいだけど…… 私神城さんが少し苦手だった、こんなことがなくてもいつか優を取られてしまうんじゃないかって。だから神城さんのことはよく見てたからわかる、優の雰囲気がおかしくなった時から神城さんも最近ピリピリしてた」

「ふぅん…… 白石さんにそこまで見抜かれてるなんて以前から足立君に構いすぎてたのが仇になったかしら」

「神城さんは優のことが」

「別に…… そんなことないわ。ただそこの彼は私と同じで上辺ばかり取り繕うような人間だったからなんとなくよ」

「なッ!?」

「同類だからわかるのよ足立君」



こちらを見てニタリと笑い掛ける。こいつと同類だと?思い返してみればビデオカメラで嵌められたように俺もいつぞや奏と岬に絡んでいた三馬鹿を動画撮ったとか言って嵌めたっけ…… いやいや、そんなのはただの偶然だし。



「まぁいいわ、ところでこれどうしましょうか?」



神城は鞄から例のビデオカメラを取り出した。



もしやこの際いろんな奴にあの動画晒してやろうなんて魂胆か?神城のことだからしっかり編集して俺を悪者に仕立て上げてそうだ。



「ちょっと待って」

「何よ白石さん?」

「それをどうするつもり?」

「ばら蒔こうかしら?」

「いいよ」

「は!?ちょッ奏??」



奏からとんでもない言葉が出たので驚いた。いいのかよ……



「うん、でも優1人だけにはさせないよ?」

「え?」

「神城さん、だったら私にも同じ目に遭わせて?」

「はあ?」

「優が悪い目に遭わせられるなら私も被る。優だけに辛い思いはさせないから」

「奏、お前……」



奏はそう言って神城を見据えると神城はフッ笑う。



「………… ふう、もういいわバカみたい。動画なんてとっくに削除したわ」

「神城さん……」

「もう私はあなた達に関わらないわ。それとごめんなさい」



そう言って神城は階段を降りて行った。


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