その33
奏と別れる…… か、俺はその選択しか出来なかった。しかも直接会わないでスマホ越しで学校の帰り道にその旨を今伝えた。
俺はバカだな、大バカの意気地なしだ。奏の反応を見るのが怖くて。スマホをポケットにしまうと目の前が暗くなった。
「だーれだ?」
「…… 岬だろ?」
そう答えると目の前が開けた。
「もうちょっと引っ張ってくれないとつまんないじゃーん!」
「なんだよまた尾行してたのか?」
「そうでーす!奏先輩は?」
「あいつは体育で怪我したから今頃病院か家に帰ってるかもな」
「なぁーんだ、道理で優先輩がトボトボと帰ってるわけだ」
そんなトボトボしてたか?確かに足取りは重かったけど。
「なんか元気ないですよ、なんかありました?もしかして奏先輩と喧嘩したとか!?」
「あのさ、俺奏とは別れたわ」
「……… え!?ええーーッ!!」
岬の大きい声に思わずビクッとした、脅かすなよこの野郎…… って向こうも驚いてるか。
「失礼、奏先輩はそれを了承済みなんですか?」
「ついさっき別れるってメッセージ送った」
そうすると岬はキョトンとした顔すると笑い出した。
「あはははははッ」
「おかしいかよ?」
「あはは、ひひひッ、そ、そりゃもうおかしくて、あはははッ」
腹を抱えて大笑いする岬を見ていると腹が立ってきた。お前にとっちゃそういう受け取り方だろうが俺には違うんだよ。
「いい加減にしろよ」
「はあッ、ははは、いい加減にするのは優先輩の方ですよ?」
「は?」
「それで奏先輩はなんと?」
「わかんねぇよ、読んだのかすら見てないし」
「証拠見せてください」
岬は手を差し出した、そのメッセージを見せろということだろうか?
「なんでお前に?」
「いやー、優先輩にそんな大胆なこと出来るわけないと思って、小心者ですし」
「ざけんな、本当に送ったよ」
いちいち勘に触る言い方をする岬にスマホを渡した。
「どれどれ、ふぅーん……」
「もういいだろ?」
「あたし目が悪くて」
そう言って岬は後ろを向いたので嫌な予感がして腕を回して無理矢理スマホを取り上げた。
「ああんッ!でも遅かったね」
舌を出してしてやったりの顔をしている岬からスマホの画面に目を移すと……
『今○×△のところに居るから来てくれ』
そう書かれてあった。岬の奴なんて余計なことを……
「ほんとのほんとに優先輩は小心者ですね、それに意気地なしの大バカヤローです。そんな情けない人だとは思ってませんでした」
「お前ッ」
「けどそんな優先輩をあんなに好きでいてくれる奏先輩が易々と優先輩を嫌いになるわけないじゃないですか、何があったか知らないですけど今の優先輩はあたしから見ても最低です、ちゃんと会って話をつけてきてください」
「お前は事情を知らないから……」
「どんな事情があってもあたしが見てきた奏先輩と優先輩の間にはそんなやり取りで終わるなんてありえないです、あたしキッカケ作ってあげたんですよ?まぁあたしが作らなくても奏先輩は今頃飛び出して探してるんじゃないですか?怪我してる女子にそこまでさせていいのかなぁ?」
そう聞いてハッとした、そうだ奏はそういう奴だった、俺はどうかしていた。
「お、優先輩も探す気になりました?」
「当たり前だ!」
「お礼は後からちゃんとしてくださいね!」
「どうなるかもわかんねぇのに」
「わかってますよ、良かったね」
「まったく……」
俺は岬と別れて岬が指定した場所へ早く行かなきゃと走って向かった。
場所は奏の家から少し離れたバス停付近、岬の奴まだ奏が病院かもしれないのにこんな場所にと思いその場所へ近付いて行くと人影が見えた。
「優……」
「奏!お前足挫いてるのに……」
「呼び出したのは優じゃん。…… それであの別れるって」
奏が悲しそうな顔をしながらこちらに近付いてきた。ほんとバカだな俺、奏と別れるとかって。
そのまま奏は俺に抱き付いた。
「ごめん奏」
「嫌だ!優と別れたくないよッ、私優にとって何か気に食わないことでもした?してたら直すからお願い別れるなんて言わないでよ」
「違うよ、そうじゃない俺が悪いんだ。でもごめん別れるなんて言って」
「え?…… じゃあ別れない??」
「どうだろう、もしかしたら奏から別れたくなるかも」
そう言うと奏は俺の頬に両手で当てた。
「優、私は優の味方だよ。優最近何か悩んでたよね?そのことが関係してるなら話して」
「………… 話したら奏が傷付くかも」
「うん、そうかもしれない。けど優最初に言ったじゃん?傷付くことあるかもしれないけどそれでもいいかって。私はそれでもいいって言った、だから例えそうなったとしても話して欲しい。何より優が傷付いたような顔してるもん」
「ありがとう奏。わかった、あのな……」
俺は奏に神城さんとのことを話した。




