その3
2年生になってから2週間ほどが経った頃優はクラスの皆と仲良くなっていた。でも私には少し気がかりがあった。隣の席のせいなのかはしらないけど神城さんと優はかなり仲良くなったんじゃないかと思う。
なんか嫌だな…… それに意外、あの神城さんが。私も優と変わらず接しているけど神城さんと仲良くしているのを見ると優を盗られるんじゃないかと思ってしまう。
優のこと悪く言うつもりはないけど神城さんって優みたいなのとは合わないような気がするけど。
優の隣は今まで私だったのに。 なんて変な独占欲みたいなのまで滲み出ている自分が醜く感じる。
「奏ー!今日席替えだね、私奏と近くになれればいいなぁ」
「うん、そうだね……」
佳菜はそう言ってくるが優と神城さんを見ていた私には右から左へと佳菜の言葉が流れていく。
「優は足立君と隣がいいんでしょー?」
「うん、そうだね…… ってあ!ううん、そんなことないよッ!!」
「いや今更感」
佳菜が茶化すように言ってくる。
「あはは、佳菜とも近くになれれば私嬉しいな」
「だから今更だって。改められると惨めに思えてくるからやめて」
「ごめん」
「なぁーんてねッ、それにしても足立君って結構人気ね、神城さんとも仲良いみたいだしモタモタしてると神城さんに奪われちゃうよ?」
うう…… それは聞きたくなかった。
「奏って分かりやすくアタックしてて足立君と1年の頃から仲良いのになかなか靡かないよねぇ?」
「分かりやすい…… それがダメだったとか?」
「なら逆に突き放せば?」
「そんなことしてほんとになっちゃったらどうするのよ?」
「あはッ、そうだよね! てことは……」
急に佳菜が真面目な顔になったので私も思わず真剣な眼差しで佳菜に顔を近付けると……
「もしかすると足立君は神城さんと奏、どっちが良いかを品定めしている最中かもしれない」
「し、品定め!?」
「そう、もしくは付き合いが長い奏だけど自覚してない嫌な部分を足立君は見ている分パッと隣に現れた美人の神城さんの方が良く見えてたりして」
「ええ…… うそうそ、そんなことないよね!?だって私足立君に…… ウザく思われてたりして」
いやきっとウザいと思われてる、自分でもしつこいかなと思ってたし。
「なんて冗談だけどね!なんて顔してんのよ」
「タチ悪いよその冗談」
そしてホームルームが始まり席替えの時間となりさらに私の気分を落ち込ませることが起こる。
優は窓側の1番後ろ。そして私は廊下側の1番後ろになってしまったのだ。しかも優の前の席が神城さんだったことが私の沈んでいる気持ちに拍車を掛ける。自分のくじ運の無さに絶望してしまう。
佳菜とも離れちゃったし。 はぁー…… 仕方ない、遠くからさり気なく足立君を観察してよう、目が合うかもしれないし。
その後の授業中私は何度か足立君の方を見たのだけど困ったことがあった。
あ、ううん。 困ったのは私じゃなくて隣の男子だと思うけど。 足立君は私の左一直線の奥に居るから私の隣の男子と思いの外目が合っちゃって向こうからしたら何?って感じだよね。
不便だなぁ……
そして休み時間になり足立君のところへ行こうとするとまた神城さんと話している。
別にそんなのお構いなく2人の間に入ればいいんだけど私がそこに行くことでどうしても神城さんと比べられるような気がするのはさっきの佳菜が冗談で言っていた品定めという言葉が頭から離れないからなのかな。
あ、そうだ! 私には頼れる友達が居るんだった。 その名は中野君! 優と仲良いからきっと神城さんとの間も何かわかるかも。
「中野君」
「え!?白石がなんで俺に??」
「へ?それこそなんで?」
中野君は私が話し掛けるとビックリしていたけどそれより問題は優のこと。私は中野君の腕を掴んで廊下に出てコソッと中野君に迫ると中野君は慌てて後ろへたじろぐ。 な、なんで!?
もう一歩、そうすると二歩くらい下がられる。
「え……」
「あ、いや」
「中野君!」
…… これってもしかして拒否られてる?まさか友達だと思っていたのは私だけだった? そんなことを考えてるとコツンと後ろから頭を突かれた。
「何やってんの?」
「なぁーんだ佳菜か」
「私で悪かったわね。中野君に迫って何してるん? つーか中野君顔真っ赤だし。あ、奏を足立君抜きでドアップで見たからだ」
「え?いや、そんなことねぇーし!」
「そうだよ、中野君は私なんて前から見慣れてるし。ってそんなことより中野君!」
「お、おう」
「最近優って神城さんのこと何か言ってたりする?」
そう言うと少し中野君は考えて盛大な溜め息を吐いていた。
「だよなぁー、そうだよなぁ」
「な、何か思い当たる節でも?」
「優と神城さんなら別に優はなんとも。 でも最近結構話してるよな、あいつだけちきしょう!」
「そうだろうね、ふふッ」
中野君のそんな反応を見て佳菜はクスクスと笑っているけど結局優と神城さんは?
「ええと……」
「多分神城さんと優はなんでもないと思うぜ?ただ単に席近いからだろ」
中野君がそう言うならそうなのかもしれない。中野君が教室に戻ると佳菜からこんな提案があった。
「そこまで気にならんならさ、いっそ奏から告っちゃえば?」
「…… 告る!?」
「そう、もう見知った仲だしさ。 足立君はそういうのしてこなさそうなタイプだし」
「うーん…… ううーん……」
そうした方がいいのかな? でも佳菜の言う通り私と優って結構知り合ってから長いかもだし誰かと仲良くされてモジモジと悩むよりはいいかもしれない。
私は焦っていたんだと思う。