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その22


「あ〜あッ……」

「ウザかったなあいつ」



昼休みになり奏はいつものようにベランダで俺と昼食をとる。だが奏のテンションは低い。



何故なら休み時間に岬が訪ねてくるのだ。その度にテンションが下がっていた。岬も岬だ。よくもまぁ上級生のクラスに臆する事もなく堂々と来れたもんだ。



その度胸と執念は何か他の所にまわしてもらいたい。



「優ごめんね、こんなにへこんでる私と一緒にいると嫌になっちゃうよね?」

「奏が謝ることないだろ、嫌になってるのはあいだよ岬って奴」

「あの子なんで押し掛けてくるんだろ?」



俺も聞きたいよそれは。



弁当を食べ終え奏は俺の膝に頭を置いた。するとガチャッと屋上のドアが開いた。まさかな、と思ったらやっぱり……



「あ〜、やっぱりここに居たんですねぇ!いいなぁ、奏先輩だけ優先輩を独り占めにして!」



思わず奏も起き上がり視線を奏に向けた、そして後ろから岬が俺に抱き付いてくる。



「わ〜い!優先輩って肩広〜い!」

「おい、いい加減にしろよ!」



だが岬を退けようとした瞬間チュッと俺の頬っぺたに岬がキスをしてきた。



「え?」

「優先輩のほっぺ頂いちゃいましたぁ〜!」

「ううッ……」



それを見た奏は涙を滲ませて屋上から走り去ってしまった。



「奏!」



追いかけようとすると岬が俺の腕を掴んで止めた。



「いいよぉ、あんなのは放っておいてあたしら2人で楽しみましょうよぉ?」



甘えた声で岬は言ってくるが苛立ちの感情しか出てこない。



「なぁ、お前一体何が目的なんだよ?楽しいか?」

「はい、とっても楽しいです。優先輩とお喋りするのは!でもあんなんでしょげる奏先輩とお付き合いしてる優先輩って可哀想。そのかわりあたしと付き合いませんか?あたしだったらいろんな意味で優先輩を満足させてあげますよぉ?」

「あいにくお前のことは迷惑にしか感じない、それがわからないのか?」

「せっかくのあたしのお誘い断るなんて優先輩は奏先輩に弱みでも握られてるんですかぁ?あ、惚れた弱みとかはなしで」

「奏はお前みたいに平気で人を傷つけてくるような最低野郎じゃない!お前なんかと比べるのも失礼だ」



俺はそう言い奏の後を追った。



「うーん、いい感じ。ああ言われると意地でも落としたくなっちゃうなぁ」



岬は冷たい笑みで呟いた。




クソッ!奏はどこ行ったんだ?探しあぐねて教室に戻ると俺を見かけた今井が訪ねてきた。



「足立君、奏となんかあった?奏具合悪くなったから早退するって言ってたよ、何かあった?」

「わかった、じゃあ俺も気分が悪くなったから早退するってことにしといて!今井さんの想像通りだよ」

「やっぱりって、え?足立君も帰るの!?」

「じゃあ上手いこと言っといて!よろしく!」



俺は足早に教室を出た。すると神城さんを見掛けた。



「あら足立君、そんな焦ったような顔してどうかした?」

「あ…… えーとちょっとな」

「白石さんと何かあった?喧嘩?」

「いや喧嘩っていうか」

「ああ、例の小うるさい1年の子?」

「まぁそんな感じ」

「へぇ〜」

「ごめん、てことで俺急ぐから!」

「うん、気を付けてね」



昇降口に行き奏の靴があるかどうか確認する。やっぱもうないか。



でも今から走れば帰ってる途中に会えるかもしれない、俺は急いで奏の家に向かった。



もう少しで奏の家だ、まだ見つからない。もう家に帰ったのか?



そんなはずない、いくらなんでもどこかで見掛けるはず。するといつも帰っている路地と違う方向によく見知った人影を見つけた。やっと見つけた!



「奏!」

「ゆ、優?追いかけてきてくれたの?」

「ああ、だけどいきなりいなくなるなよ。こっちはマジで焦ったんだぞ?」

「ごめんなさい、優に迷惑かけちゃって。そんなつもりじゃなかったんだけど頭真っ白になっちゃって。このまま家に帰るのも嫌で学校に戻るのも嫌で。うぅ……」



奏は泣き出してしまった。



「じゃあ俺の家にでもいかないか?」

「…… うん」



家に着きリビングのソファに奏を座らせる。両親はどっちも仕事だから今はいない。コーヒーを淹れ、そっと奏に渡す。



「優の淹れてくれたコーヒーすごく美味しい」

「てかインスタントだぞ?誰がやっても大体同じだって」

「えへへ、そうだけど。学校サボっちゃった……」

「だな、まぁたまにはいいんじゃないか?」

「ねぇ優」



奏が立ち上がり俺の側まで来る。

チュッと岬にされた所と同じ所にキスをされた。



「これでよし……」

「そんなことしなくてもあんな奴に靡かないよ」




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