椎名岬
8月も中盤にそろそろ夏休みだ、期末テストを俺は無難にこなして無難な結果で終わった。まぁ実は奏でと一緒に勉強はしてたんだが。だから夏休み学校にくることはないし開放的な気分で過ごせる奏も同じくなようで……
「優と一緒なら補習でもよかったんだけどなぁ」
「夏休みに学校とかありえんわ」
とかなんとか言いながら奏と一緒に校門を出ようとすると校門の横から人影が飛び出してきた。
「お疲れ様でーすッ!優先輩!」
そこには1人の女の子が立っていた。見た感じとても可愛らしくて短い髪型でどこか子供っぽい…… って言ったら怒られるよなぁ。まぁ見た感じは可愛いんだがこの子が俺を先輩と言うからには1年生なのだろう、制服同じだし。でもなんで俺に声掛けたんだ?
「優この子のこと知ってるの?」
「ヒッドーイッ!優先輩私のこと忘れちゃったんですかぁ!?」
語気を強めにして彼女は言う。
「いや、まったく知らないけど?」
なんか奏が俺に怪訝な目を向けてないか?いやマジで俺こんな子知らんから。
「またまたぁ〜、優先輩はとぼけちゃって!」
「とぼけてるの優!? ほんといつの間にこんな子と知り合ったの?」
「そんな暇俺にあったと思うか?」
「優ぅ〜!!」と奏グイグイと俺の肩を揺さぶる。
「あははははッ!面白〜いッ!」
「てか誰だ?会ったこともないけど」
「あ〜あ、つい面白くなっちゃってからかい過ぎちゃいました」
「あたしは椎名 岬です、優先輩と奏先輩の後輩になります、岬って呼んでください。あ〜それと奏先輩、優先輩とは今日が初対面なのでご安心を!何故絡んできたかというと奏先輩が優先輩を独占してるからです!」
「え?だって優は私の彼氏だし……」
そう言うと岬は奏にグイッと近づいた。奏は急に近付かれたのでビクッとする。岬は奏より少し小さいから見上げがちだ。
「へぇ〜、見れば見るほど本当に可愛いですねぇ」
そう言いながらとても冷めた口調で奏に言う。
「えーと、椎名だっけ?」
「そんな他人行儀じゃイヤ!み・さ・きッ!!そう呼ばないと勝手に引っ掻き回しちゃいますよぉ〜?」
「面倒くさい奴だなぁ。じゃあ岬、なんか俺たちに用でもあったのか?」
「いーえ、特に!強いて言えば可愛いと噂の奏先輩を直接この目で見に来ただけです!じゃあ今日はこの辺で!バイバイ〜ッ!」
嵐のように場をかき乱し岬は帰っていった。
「なんだったんだろうあの子?」
「俺に聞かれてもなぁ、あいつが言うからに奏目当てだったんじゃね?奏はこの学校じゃ神城さんと同じで有名人だから気になったんじゃないか?」
「勝手に有名人にされても困るよ、私てっきり優目当てかと思って落ち着かなかったよ」
「あいつの言いようからしてそりゃないだろ」
なんか変な奴が現れたなと俺と奏はしばらくポカンとしていた。
◇◇◇
今日あたしは優先輩と奏先輩に会ってきた。1年生たちの中でも可愛いと噂されている奏先輩は近くで見ると噂以上にとても可愛くて可愛くてなんだか見ているととても許せなくなる。
奏先輩と付き合っているっていう優先輩にも挨拶をしておいた。優先輩もなかなかいい感じの男子じゃない。
だけど予想通りというか会った時からだけど奏先輩を思い出すと引っ掻き回したくなってくる。
あたしは結構モテる。奏先輩なんかよりよっぽど男の人を喜ばせる自信がある、恋愛なんて良くも悪くもインパクトを残せるかが大事だ、あたしはこの外見で。
中学でもあたしはもてはやされて高校生活でも優越感に浸りきりだろうと思っていたが上には上がいたようだ。
そう、奏先輩と神城先輩。この目の上のたんこぶたちだ。
要はひがみなんだけどね。あたしに目をつけられたのを後悔させてあげる。
奏先輩は何もしてないのに迷惑この上ないと話だと思うけどね、あはは。
なぜ神城先輩ではなくここまで奏先輩を目の敵にするかって?
優先輩と2人でいてとても幸せそうにしていたから。あたし昔から他人の物を欲しくなる性分なんだよね。
だから優先輩をあたしが貰っちゃおうかしら?そうなったらもう2人は修復不可能ね!
「せいぜいあたしを楽しませてくださいね、優先輩奏先輩」
特に奏先輩はね。




