その18
今日、奏の両親が親戚の家に泊まりで出掛けるので俺は奏に呼び出された。もう奏の両親は了承済みなのだが大丈夫なのかな?
まぁ逆に言えば相手の両親に凄く恵まれていると思えばいいか。それはそれとしていつぞやのことを思い出す。
あれはそう、俺と奏が付き合っていると周知の事実になった後しばらくしてからのことだ。体育の授業の時俺はゴミ当番だったので少し遅れて教室に行き着替えようとしていた時のことだった。
「あれ?神城さん」
「あら足立君どうしたの?」
「そっちこそ」
「ああ、図書室に本を返しに行っててね。足立君はゴミ出ししてたんでしょ?」
「まぁ……」
着替えたいんだけどな…… そう思っていると神城さんはわかってますよと察して体操着を持って更衣室に行こうとした時「あ……」と思い出したように言った。
「そういえば足立君と白石さんって付き合ってるってことはそれなりのことをしているのかしら?」
「え、それなりのこと?」
「そう、平たく言えば性行為的な」
「ゲホッゲホッ!!」
いきなりなんだよ?!
「ふふッ、面白い反応足立君」
「いやだって唐突にそんなこと聞かれるとは」
というか神城さんがこんな話題を切り出してくるなんて予想もしてなかった。もしかして神城さんはそういうこと経験あるのか?いや、神城さん美人だしモテてるしないなんてこともないだろうけど。
「ごめんねなんとなくよ。あ、これもなんとなくなんだけどそういうことするならちゃんと避妊しなきゃダメよ?」
なんとなくって…… そう言って神城さんは鞄から俺にある物を渡した。
「これって…… なんで神城さんが?」
「そう思うよね?知り合いに自衛的な意味で待ってればそういうことになった時安心だよって言われて渡されたんだけどお生憎様そんな相手居ないし使う機会がないから。だから足立君にあげるわ」
そう、神城さんが俺に渡したのは避妊具、つまりゴムだった。
「マジか……」
「いらなかった?」
「あ、いや、ええと女子から…… しかも神城さんからこんなの渡されるなんてちょっとビックリで」
「私から渡されると変かしら?変化もねふふふッ、まぁ持ってればいざって時に使えるでしょ?」
てなわけで神城さんから貰ったこれどうしようと結局持って帰ってしまった。付き合ってるんだからそのうち使うこともあるんだろうけど奏の両親にも悪いししばらくはないだろと机の中にしまう。
昼食を食べ両親に奏の家に行ってくると伝え俺は家を出る。
奏の家に着きインターホンを押した。するとドタドタとこちらに向かう足音が聞こえる。ガチャリとドアが開き少し汗ばんだ奏が俺を迎えた。
「優、待ってたよ!会いたかった」
抱き付こうとしたが奏はすんでのところで踏み止まった。
「なんだ?どうした?」
「私今お部屋掃除してて。ほら、ずっと暑いでしょ?汗かいちゃったから」
「なんだ、そんなことか。別に気にしないよ」
「私が気にするの!臭いかもしれないし」
「そうか?まぁ俺もここまで来るのに少し汗かいたしな」
「どれどれ?」
奏は俺の首筋辺りをクンクンと嗅いだ。こいつ自分は臭いかもとか言っといて俺の臭いを嗅いでくるとは。
「んー、優はいい匂い!」
「じゃあお前は?」
「ダメーッ!」
俺が近付こうとするとサッと後ろに下がった。なんて横暴な……
「あ、そうだ!お腹空いてない?ホットケーキとか食べる?」
「昼飯食べて来たけどちょっと腹空いてるかも。食べようかな」
「わかった、じゃあ作るからそこで寛いでてよ」
リビングの方へ行き奏はキッチンで鼻歌を歌いながらホットケーキを作っていた。
この前は奏にお世話になりっぱなしだから俺も何か手伝えることはないだろうか?と思いそういえば掃除とかしてたんだよなと奏に聞いてみる。
「いいよいいよ、無理に呼んでおいてそこまでさせられないよ」
「別に無理はしてないけどな、嫌だったら来てないしさ」
「優……」
「うん?」
「あのね、ついでに嫌じゃなかったんなら今日私の家に泊まってかない?」
「へ?」
まさかの泊まりの提案、しかも奏の家に。
「いやでも……」
「大丈夫!優ならうちのパパとママも大助かりだよッ!それに1人じゃ寂しいし」
「…… うーん」
この前奏にも世話になったしそれに確かに奏1人だと少し危ないか?
「ね?いいでしょ?」
「わかったよ、じゃあ母さんに電話するから」
「やったぁ!」
「それよりなんか焦げ臭くない?」
「あッ!!ホットケーキ」
ホットケーキはズブズブに黒焦げになっていた。




