その17
学校も終わり部活など特にやってない俺はさっさと帰ろうとしていた。コンピュータ部とかサボってるのかやってるのかよくわからない…… いやサボってるのは俺か。まぁ融通の効く部活に入っていて良かったな、すんなり帰れる。
あれ?ふと思ったが奏って部活とかやってないのか?いつも俺に合わせて帰ってるし今まで気にしてなかったから聞いてなかったな。
奏の友達の今井はバレーボール部と言うのは奏と話してるのをチラッと聞いていたけど。
「あの……」
横から消え入りそうな声が聞こえてきた。あ、新垣さんか。
「今日はありがとう、足立君」
「いいよ、これくらい。忘れたんなら遠慮なく言えば良かったのに」
まぁ彼女の性格からして難しいだろうなぁ。
「私ってこんなんだから‥‥」
「まぁクラスの奴らに気軽に話して馴染んでみろよ?新垣の良さに気付くやつもいると思うよ?てか結構可愛い声してんだな」
「えッ!?…………」
新垣は逃げるように廊下に出て行った、どんだけだよ。
そろそろ帰ろう、奏も今井にバイバイしてるし俺が帰るタイミング待ってたんだろうな。
「優、一緒に帰ろう、まだ雨降ってるから相合い傘できるねぇ〜!てか新垣さんと何話してたの〜?」
「ああ、新垣さんが筆記用具忘れてかしてたからそのお礼言われた」
「そっか、新垣さんってあんまり話さない感じだけど。それより優の隣の新垣さんが羨ましいなぁ〜、私も優に優しくしてもらいたいんですけどぉ!」
「奏くらいだよ」
「ん?」
こんなに振り回されるのはな。
そして2人で1つの傘をさして俺たちは帰る、奏の目論見通り相合い傘だ。
「そう言えば俺知らなかったんだけど奏って何部なの?」
「今更?私は文芸部。居ても居なくてもって感じの部活だから融通は利くんだ」
「じゃあ俺と似たようなもんか」
「ていうより優に合わせてそっち系の部活に入ったんですけど〜?」
少しムスッとして奏は俺の鼻に人差し指を当てた。
「そうだったのか、うん奏っぽい」
「優も優っぽい!ねえ、帰ってもいっぱい連絡していい?」
「前からいっぱい連絡してたような気がするけど?」
「既読スルー」
奏はキッと睨み付けられる。 あー、そうだった。
奏の家の方が俺の家より少し学校に近い。だから奏は傘をそのままかしてくれた。明日は奏の家に寄ってから学校に行くか。
◇◇◇
それから暫く経ちもう8月になる。真夏真っ盛り、照りつける太陽が熱い。暑い‥‥
優と私は順調だ、もう学校でもすっかり付き合っていると知れ渡ったし、優も休みの日はよくデートしてくれた。その間に何かあったと言えば佳菜が優の友達の中野君とカップルになったことだ。
中野君は神城さんに好意を寄せていたんだけどそれを聞いた佳菜が「まぁどうせ無理だろうけど」と半ば面白半分で神城さんとの仲を取り持ってあげると一肌脱いだらいつの間にか中野君と佳菜が両思いになっていたのだ。
何はともあれ佳菜良かったね、まさか中野君とくっ付くとは思ってもみなかったけれど優の友達の中野君だもの、なんか不思議だね。
それはそれで佳菜と中野君も付き合うようになって少し経ったけどどこまで進んでいるんだろう?
私と優はお泊まりした日以上のことはまだしてない、逆にあれ以上は何があるのって感じだけど。
優はどう思ってるんだろう?優は相変わらず神城さんとはそこそこに話すけどそれはよくよく考えれば優の人当たりがいいだけだもんね、新垣さんとのことがいい例だもん。
私優のことになると少し考えすぎちゃうところがあるみたい。重たい女にはなりたくないけど結構そんな感じの発言してたよね私。
ああ、ダメダメ…… 部屋で1人でいるとついついそんなことで考え込んでしまう。
そんな時に私にとって朗報が舞い込んできた。両親が隣町の親戚の家に行ってきてお泊まりになるからいないのだ。
本当は私も行くはずだったけど優と居たいから断っちゃったので私1人家に残すのは心配だってことで優を呼ぶから大丈夫って事にした。
パパとママ優のこと大好きだもんね、こんな時は優の人当たりの良さに感謝しちゃう。
ともあれ明日から優がお泊りしてくれるんだし私は部屋で1人気合いを入れた。それはそうとして机の引き出しを開けてある物を取り出す、それは……
「避妊具、これがゴム……」
どうしてこんな物を私が持っているのかというと付き合っていると私と優が付き合っていると知れ渡ったある日友達から「付き合ってるならちゃんと避妊具使いなよ」と言われて渡されたんだけど。
あの日から優はパパに間違いだけはしないようにと言われて「そう言われてるのにこれ以上は奏の両親に背くことになるから」ってなかなか踏み切ってくれなくて……
私何考えてんだろ? 優はちゃんとそんな風にいろいろ考えててくれてるのに私だけ悶々としてるなんて。私もちゃんとしなきゃ!
「はぁー……」
こうして1人で悩んでいるうちに疲れて眠ってしまった。




