夕飯
「何を言っておるのじゃ。魔力を大地に練りこまなければいくら畑を作ったとて……」
「魔力を練りこまなくても、肥料と水と太陽があれば育ちますよ」
森を見る。
「ほら、この森の植物、誰も魔法で育てたわけじゃないでしょう?」
「森は、魔力のたまり場と言われておる。貯まった魔力に触れれば、森の魔力に影響され魔力のコントロールができなくなるだけでなく、命を失う危険が」
なんか、変なことを言ってる。
「おババさん、森の魔力に影響されて魔力のコントロールができなくなるって、魔力がない私たちがどう影響されるんですか?」
っていうか、魔力のたまり場ってなんだろうね。
日本だと森はマイナスイオンたっぷりで癒される空間って言われたり、富士の樹海は磁場がくるっていてコンパスがぐるぐる回るって言われてたり……とかいろいろあるけれど。
「おや?そういわれれば、そうじゃの。森と接するこの場所で長年暮らしておるし、森の入り口付近には何度も入っておるが、ワシはこの年までなんともないの……」
ドンタ君が私の手をつかんだ。
「魔力が無くても、畑を作れるのか?畑って、食べるものを作るところだろ?なぁ、俺たちにも、食べる物作れるのか?」
ドンタ君の目が希望の光でキラキラ輝いているのが分かる。
「時間はかかるし、大変だけれど、頑張れるなら」
ドンタ君が笑った。初めて、ドンタ君が笑顔を見せた。
「じゃぁ俺頑張る。そうして、パンを作って、おババに食べさせてやるんだ!」
おババの目がまた見開いた。
「おババ、パンが食べたいんだろ?俺、頑張るからな」
ば、ばか。ちょっと、この年になると涙腺緩くなるんだからっ。ドンタ君、なんていい子なんだろう。
絶対に、畑で小麦作ろう!
収納袋からパンを取り出すのは簡単だけれど、そういうことじゃないんだ。
あ、ディラが私の後ろで号泣してる。涙腺緩いお年頃ですか?人が泣いてるの見ると、不思議と涙が止まるよね。
「焼けたよ!ご飯だよ!今日はね、ネウスお兄ちゃんが砂ネズミを捕ってきてくれたんだから!ご馳走よ!」
ミーニャちゃんが葉っぱのお皿や木の器をいくつか運んできた。
ああ、あれから食事の準備を一人でしていたんだ。病み上がりだというのに……。もう、すっかり大丈夫なのかな?
ネウス君が、ミーニャちゃんから受け取った葉っぱのを持ってきた。葉っぱの上には肉片が乗っている。
「ユキ、ミーニャを助けてくれてありがとう。本当は全部ユキに食べてもらいたいんだけど、アイツらにも……食わせてやりたくて……」
と、ネウス君は申し訳なさそうに子供たちを見た。
ちょっとだけ裏話。
これ、改稿2回目はどっかで書いたよね。
初稿→きらら登場、子供の数が減る→ドンタ君の年齢が上がる
大きな違いはこれなんだけれど、細かい変更がザクザクある。
……が、誤字は減らない。
いいですか、改稿したからといって、誤字がなくなるわけではない。それがとまとクオリティ。
ただ、ドンタ君は年齢上げてちょっくら重要なポジションになりました。
そんでもって、悩んだのが、おばばの存在。おばばもいらないかなーと思いつつ、途中で退場してもらうとなると死んでもらうことになるし、うーんと思って……あんまり人が死ぬのって好きじゃないんで。
私の作品の中で命落としてる人間めっちゃ少ないです。いるにはいますが、安易に人が死んでお涙頂戴も違うと思うし。悪者なんてさっさと死ねばいいも違うと思うし。
ってなわけで、おばばの運命やいかに……




