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「そうだよ、魔力があるやつらにとったら、たかが火だ。だけど、俺たち魔力無しには……そのたかが火すらも……火すらも……魔法が使えないから手に入れることができない……」

 ドンタ君が悔しそうに唇をかむ。

『ユキ、火の魔石があるよ、火の魔石!』

 火の魔法に、火の魔石……。

 魔力が無いから何?

「それだけじゃない……。火だけじゃないよ、いつ病気になって死ぬのか、明日食べるものはあるのか、毎日毎日いいことなんて全然なくて、このままずっと生きていたって……辛いことばっかりなら、死んでしまった方が」

 この子たちのやせ細った姿。食べる物がない苦しみも不安も分からない。私には……この子たちの辛さなんて分からない。

 けれど、けれど……。

 魔力がないから何もできないという言葉がよみがえる。

 魔力がないせいで幸せになれないとか、魔力がないから死んだ方がましだとか、そんなの間違っていることだけは分かる。

 だって、地球には魔法なんてなかったんだ。

「ディラ、木の棒や木の板、それに綿ぼこりと紐、入ってる?」

 おババたちから少し距離を取ってディラに話しかける。

『え?どうかな。紐はある。綿ぼこりは……』

 ここは森の入り口だ。なきゃ取ってくるだけ。

「ネウス君、剣をよろしく。ちょっと森に行ってくる」

『ユキ、置いてかないで!ユキ!』

 ディラが後ろでわめいてる。

「ユキ、駄目だ、森の中には危険な生き物がいる!俺も行くっ!ユキを守るっ」

 ネウス君がディラを抱えて慌ててついてきた。

 危険な生き物?

 ああ、だから森があるのに森の中の食べ物を取ることができないのかな?それともこの森には食べられるようなものは実ってない?

 それとも……魔力がないから森へは入れないとかいうわけじゃないよね?

 ざくざくと足を進めるけれど、結界に阻まれて入れないというわけでもなさそうだ。魔力が無くたって大丈夫じゃないか!

「大丈夫、奥には行かない。あった。よく乾燥した朽ちた木の棒。それから、ああちょうどいい。弓なりになった棒。うん、強度もあるね」

 それから、倒れているシュロのような木のあみあみになってる皮をはぐ。乾燥してパリパリ。細くて細かくて燃えやすそう。

 持ってすぐに村に戻り、収納鞄から紐を取り出す。

 これで材料はそろった。本当は穴の開いた木の板の方がいいんだけど仕方がない。一度炭化した部分を使った方がいいんだけど、これも仕方がない。

 収納鞄からナイフを取り出し、木の板にくぼみをつける。穴というほどきれいにはできない。それから木の棒の先を少し削る。

 弓なりの棒に紐を括り付け、紐は棒にくるっと巻く。くぼみをつけた板に、木の棒の先を当て、木の丈夫を別の木で押し付ける。

 さぁ、これで完成。弓きり式火おこし道具だ。

「何じゃね、それは?」

 おババが首をかしげる。

「見ていてください」

 もしかすると、この世界では何らか違う法則が働いていてダメかもしれないので、期待させないように黙って作業を進める。

 だけど、もし、魔法というものに頼った結果火をつける方法が知られていないだけだとしたら……。


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