表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/35

移動

 立ち上がると思いのほか少ネウス君の身長は高かった。175はあるな。155の私の頭半分以上は背が高い。

「こっちだ」

 ネウス君が剣を片手に持って歩き出す。

『ユキ~』

 先を歩くネウス君。なぜか、ディラはドナドナされているかのように悲しげな眼で私を見ている。ネウス君に運ばれるのが嫌そうだ。

 なんでよ!女性に荷物を持たせるなんて死にたいとか言ってたんだから、今の状況はハッピーだよね?

 荒野を歩くこと、およそ1時間。そろそろ疲れたなぁと言うところで、ネウス君に声をかける。

「休憩しようか。あとどれくらいなのかな?」

「2日」

 はぁ?え?えええ

「ふ、2日?え?だって、飲み物も食べ物もなしで歩いてたの?」

 ネウス君が、ああと小さく頷いた。

「ちょっと待っててくれ。食べ物と飲み物探してくる」

 探す?

 きょろきょろとあたりを見回しても、岩と土で、川も木も見当たらないけれど?

 ネウス君が、剣をそっと地面に置いて、走り出した。

「あー、ちょっと待って!食べ物も飲み物もディラの収納袋の中にあるから大丈夫ー」

 と言う間もなかった。

 はー、まぁいいや。休憩休憩。

 地面に腰を下ろす。服が汚れるけれど、もう十分汚れているから関係ないか。

『ユキ、お腹空かない?喉も乾かない?』

 ディラがそわそわとしている。

「んー、さっき食べてからまだ2時間くらいだから、お腹は空いてない。喉は乾いたけれど……。水とか入ってる?」

 果実水は、果汁分がたっぷり過ぎて、さすがに飲み続けるにはちょっと辛い。

『水なら、水魔法で出せば』

 魔法、ね。魔力ゼロだって言ったはずだよね?

『えっと、水の魔石が入ってると思う。魔法で出した方が早いから使ったことないけれど小指の爪くらいの大きさの物で、酒樽1杯くらいの水は出るかな?』

 おや、そんな便利なものが。

「ありがとう。えーっと、水の魔石とコップを2つ」

 収納鞄から取り出し、しばらく待っていたらネウス君が戻ってきた。

「小さな物しか見つからなかった」

 手には丸いサボテンのようなものがのっている。

「ありがとう、えーっと、どうやって飲む?食べる?の?」

「こうするんだ」

 と、ネウス君がサボテンの棘が刺さらないように、石ころを、サボテンを挟み込む形でコップの上で持った。

 ぎゅーっと絞ると、水分がコップの半分くらいサボテンの汁が溜まる。

「はい」

 ニコニコと笑うガリガリのネウス君。

 全部を私に差し出そうとしてる。……喉が渇いてるよね?君も。

「これは、おいしいの?」

 念のため確認。アロエゼリーの中のアロエを思い出すと、ほんのわずかな甘味があったように思う。青臭さはなかった。コップを持ち上げ匂いを嗅げば、そのアロエに近いような気がする。青臭さはない。

「さっきもらった果物のように、美味しくはない」

 しょげるネウス君。

 いや、そういう意味じゃないんだけど。

「でも、あの、このあたりで採れるやつのなかでは一番うまいやつで」

「そう、君は美味しいって感じるんだね?」

 それが聞きたかった答えだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 体重175kgとな!?(嘘) カクタスの日本語名称である「サボテン」は絞り汁を石鹸水代わりとして使っていたからシャボン(石鹸)が訛ったものなんだそうですね。 通り道に誰が植えたかアロエ種…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ