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魔王討伐するから見てて。


 ーーー翌日、部屋の扉を叩く音で目を覚ました。


 「タロー起きて! 大変なの!」


 本当ならふかふかのベッドでもうちょっと寝ていたかったんだが、扉を叩いているアイシャの様子が何かおかしい。

 ベッドに別れを告げて扉を開けた。


 「朝から騒がしいな」

 「やっと起きた! 早くお父様の所へ行くわよ!」

 「国王のところに?」


 どうして? って聞く前にアイシャに手を引かれて謁見の間へと連れて行かれた。

 昨日の今日で何があったんだ? もしかして魔王軍がもうそこまで侵攻してきたとかじゃないだろうな。


 ---




 「・・・・・・は?」


 俺は自分の耳を疑った。

 本当に驚くときって人それぞれなんだろうけど、俺の場合は驚きを少しでも緩和するために別のことを考え始めるようだ。

 今みたいに何に驚いたかじゃなくて、どのように驚いているのかを考えてる。

 つまり何が言いたいかと言うと国王の話にめっちゃ驚いているのだ。


 「間違い・・・ではないのですか?」


 国王は静かに首を縦に振った。


 「私も確認したわ。その情報に間違いはないわ」


 マジかよ・・・。

 別に国王やアイシャを疑ってるとかじゃなくて自分自身を納得させるためだ。


 「魔王が・・・死んだ」

 「うむ。魔王城の近くに配備させていた兵士から魔法で連絡があってな。魔力が完全に消滅したのを確認したそうだ」

 「魔王は何か病を患っていたのですか?」

 「いや、そういう話は聞いておらん。ただ・・・」

 「ただ・・・?」


 国王は少し言うのを躊躇っている?


 「昨日の夕刻あたりから魔力に異変があったそうなのだ」

 「昨日の夕刻・・・ですか?」

 「それって・・・」


 アイシャがまさかという表情で俺を見ている。

 そう・・・そのまさかだろう。

 俺も薄々勘付いてはいたが、魔王が死んだ理由。

 それはーーー


 「俺がこの世界に召喚された時間。つまり魔王は俺のスキルによって死んだのか」

 

 自分で言ってて馬鹿らしいがそう考えるのが妥当だろうし、国王やアイシャもそう思っている。

 て言うかそれしか理由が見つからない。


 「タローよ、一度部屋に戻っていてくれるか? 其方もそうだろうがこちらも状況を整理して次の答えを出さねばならん」

 「そう・・・ですね。魔王が死んで世界は平和になりましたもんね」

 「そうだな。だが魔王の下には凶悪な配下がいる。そやつらの動向も探らねばならんのだ」

 「わかりました。部屋で待機してます」


 俺は謁見の間から退出すると部屋に戻った。


 「魔王が・・・死んだ・・・か」


 ベッドに大の字で寝っ転がる。

 魔王がどんな奴でどのくらいの強さで今まで何をしてきたのか知らないまま決着がついた。

 男なのか女なのか、そもそも性別の概念がないのか。

 異世界の人間じゃないと勝てないほどの強さなのか。

 召喚されたとき周りの人たちは泣いていたから、魔王は人間に対してそれほどまでに非情なことをしていたのか。

 すべて憶測だが勝手に死んだ魔王に対して俺の魔王像を押し付けてみる。

 何故そんなことするのか? 理由はただの自己満。

 魔王を知らない俺が魔王が死んだことを喜ばしく思うための状況を作り出そうとしている。


 「アイシャ・・・悲しそうな顔してたな」


 謁見の間を出るときにアイシャの顔を見たんだが滅茶苦茶悲しそうな顔をしていた。

 たぶん魔王が死んでこの世界での俺の存在意義に対して心配してくれてたんだろう。

 悲しいかな・・・魔王が死んだ時点で存在意義は完全になくなった。

 だって魔王討伐の名目で俺は召喚されたんだからな。


 「終わった・・・とか、くだらないこと言ってる場合じゃないな!」


 俺は勢いよくベッドから起き上がった。

 それらしい雰囲気出したけど、この程度のイレギュラーで挫折するほど俺のメンタルは繊細じゃない。

 だって元の世界で十七年間も圧倒的な不運と付き合い続けてたんだ。

 普通の人なら自ら命を絶つような人生を「運がねえな」ぐらいで送ってた俺だぞ?

 今回のことなんてそよ風にもならんわ。


 というわけで何かしないとな。

 善は急げだ。

 せっかくこんなチートスキル貰ったんだから、この世界の情報を集めて俺にしかできないことを探してみよう。

 ここに書庫か何かないかアイシャにでも聞いてみるか。


 「きゃあっ!」


 部屋の扉を開けたらアイシャがいた。


 「・・・・・・何してんの?」

 「べ、別にたまたま通りかかっただけだから」


 どんだけテンプレなツンデレだよ。

 ツンデレの教科書があったら一番最初に載ってるレベルで引くわ。


 「あっそう。てかさ、この世界のこと知りたいんだけど書庫とか無いの?」

 「・・・あるけど知ってどうするの?」

 「単なる探求心」

 「ふーん。案内するわ」

 「どうも」


 どんな情報が得られるかわからんが今は何でもいい。

 どうせ暇になるんだから少しでも知識と情報を入れたい。


 「まったく・・・人の気も知らないで」

 「ん? 何か言った?」

 「別に! 早く行くわよ!」

 「はーい」


 残念、聞こえてましたー。


 

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