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すごいスキルだったみたいだから見てて。


 幸運に豪運に極運?

 幸運はわかるけど豪運と極運って、そんな熟語聞いたことない。

 ただわかるのは本来一人の人間に対して所持できるスキルは一つのようだが、二つどころか三つ所持している俺は異常のようだ。

 ーーーそれも全てレベル10。

 さっきの鑑定士の女性がレベル7でドヤってる感じだったからレベル10はかなり高いか、もしくはカンストしていると判断してもいいだろう。

 ていうか俺が幸運? 元いた世界では全くの無縁だった幸運というワードが俺に関わろうとしていることに若干の警戒心を抱いている。

 ただこのスキルを持っているとわかったことで、ここまで何も起こらずに辿り着けたことに納得することができた。


 「あ、あるえない・・・」


 アイシャ驚きすぎて噛んでるし。


 「すみません、スキルを三つ所持していて全てレベル10が凄いのは何となく伝わりましたが、この幸運と豪、極運というのはスキルとして優秀なんでしょうか?」


 鑑定士が国王にアイコンタクトで説明の許可をとったようだ。


 「す、すみません。すべてが初めての経験でしたので私も内心取り乱してました」


 眼鏡の端を持ち上げながら呼吸を整えている。

 それよりも初めての経験ってなんかこの人が言うとエロイな。


 「スキルについて説明させていただきますね。スキルというのは本来一つしか所持できませんが偶発的に二つ所持している方もいらっしゃいます。しかしタロー様はその上の三つ所持されています。これは千五百年の歴史のある我らがアスカンタ王国を含め、全世界の国々でも未だに三つ所持しているという報告は聞いておりません」

 「と言うことは、タローが最初の事例って事?」

 「そういう事になります。恐らくですが最初で最後かと思われます」


 三つ持ってるのが凄いの分かったし、このスキルがどういうモノなのか聞きたいんだけどな。


 「では続きを」


 俺の視線で気付いたのか鑑定士は説明の続きを話し始めた。


 「今回のスキルですが、幸運と豪運は確認されていますが極運は初めて聞きました。恐らく豪運の上位互換だと判断するのが妥当だと思いますが初めてなもので断言はできません。ただ仮に豪運の上位互換でレベル10となるとスキルの恩恵に想像がつきません」

 「レベルは10が上限ですか?」

 「はい。スキルレベルは1から10に段階分けされます。このスキルレベルは経験を積むことでレベルが上がります」


 スキルについてはだいたい分かった。

 これは俺の推測なんだが元いた世界で不運を経験しすぎて不運のレベルが上がってカンストしていた。

 そして今回の召喚でスキルの内容が何らかの理由で逆転したため幸運系のスキルを全て所持してレベルもカンストしたんだろうと現時点ではそう考えている。


 「ちなみにですが豪運でどの程度の恩恵が受けられるのですか?」


 うちはうち、他所は他所って親によく言われてたけどやっぱ気になるじゃん?


 「アスカンタ王国に豪運レベル6を所持している者がいます。ヘルベルト=ターナーという名で商人をしています。ヘルベルト商会を立ち上げてわずか十五年でこの国の流通のほぼすべてを牛耳っており巨万の富を築いています。彼曰く“気の向くままに行動していたらいつの間にかこうなっていた”だそうです。つい先日も」


 ・・・・・・は!? 豪運レベル6でこれ!?

 いやいやいや!! 豪運レベル10でその上位互換かもしれない極運レベル10の俺ってどうなるの!? 逆にすぐ死ぬとか無いよな!?

 ダメだ、自分で死亡フラグ立ててる場合じゃないな。

 

 実際まだ恩恵をあまり受けてないけど、これなら魔王討伐も不可能ではないかもしれない。


 「ありがとうございます。自分は具体的にどうすればいいのですか?」

 「ふむ、そうじゃな・・・詳しくは明日にでも話すとしよう。今日は疲れただろう、部屋を用意してあるから休んでくれ」

 「わかりました。ではお言葉に甘えて休ませていただきます」


 あっちも俺のスキルがぶっ飛んでたせいでどう判断すればいいのか分からないんだろう。

 俺としても色々整理したいしお開きになる方がいいかもしれない。

 

 用意された部屋まではアイシャの侍女が案内してくれた。

 んー、これが普通なんだろうが当然案内された部屋まで何かしらの不運に遭遇することはなかった。

 嬉しいんだけど違和感が半端ない。



 ---


 部屋に案内されたはいいが特に何もすることがない。

 部屋は過去に泊ったことはないけど超VIPルームってこんな感じなんだろうな。

 誰が描いたかもわからない絵画や誰が作ったかわからない壺や皿が置かれている。

 そして用意されていた服も何か着るのに少し躊躇う派手な装飾がされている。


 「タロー入るわよ?」


 この声はアイシャだな。


 「いいよ」

 「おじゃましまーすって・・・着替えないの?」

 「この服の方が落ち着くから」


 ちなみに今の服装は元の世界で死ぬときに着ていた学校の制服だ。

 アイシャはフーンと興味なさそうにそう言うとベッドに腰かけた。


 「どうかしたのか?」

 「別にー。ただタローが何してるのかなって思っただけ」

 「何だよそれ」

 「いいでしょ別に」


 ほんとに用事は無かったようだ。

 ベッドに腰かけて足をバタバタしている。

 最初に見た時や謁見の間でのアイシャとは別人のように元気がない様子だ。

 ・・・もしかして。


 「お前、罪悪感感じてんのか?」


 足のバタバタが止まった。


 「・・・怒らないの?」

 「怒ったら元の世界に返してくれんのか?」

 「・・・やり方わかんない」

 「じゃあいいよ」

 「でもっ!!」


 あんまり優しい言葉かけたりすんの得意じゃないからどう話を終わらせたらいいかわからない。


 「いいって。俺は元いた世界で死んだからアイシャの召喚に引っかかったのかもしれない。例え元の世界に戻れたとしても俺は死ぬだけだ。それならこっちの世界で生きていく。そう思ってるから許した」

 「そうだったんだ・・・ありがとう」


 何だよ気の強そうなお姫様だから礼とか感謝の言葉を言うのに抵抗あるのかと思ってた。


 「ただ一つだけ言っておく」

 「うっ・・・何?」

 「召喚に関しては何も言わない。けどな怒られて気持ち楽にしようとか考えんな。召喚した奴がそんなんだと召喚された俺は惨めになっちまうだろうが」

 「わかった、ごめん」

 「おう、じゃあ腹減ったから飯食わしてくれ」

 「わかった! すぐに用意させるね!」


 アイシャは笑顔になり部屋を出て行った。


 「はぁ・・・疲れた」


 俺はベッドにダイブした。

 慣れないことをすると疲れるな。



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