僕の彼女は
突然だが僕の彼女は歩けない。
小さな頃、脳の難しい病気にかかってしまい、それ以来歩くことが出来なくなった。
厳密には歩けないだけじゃなく手や指の動きがぎこちなかったり、急に力が入ったりなどもするそうだ。
けれど、幸いな事に彼女----ハルは知能に関しては異常のないとても聡明な人だった。
何より、とても真っ直ぐな優しい女の子だった。
例えば友達が悩んでいる時真っ先に気付くのはハルだし、人の陰口を言っている所を見た事がない。
----ハルは怒ると怖いし結構怒りっぽいが、陰口の類は大嫌いなので自分が納得しない事は面と向かって直接言うタイプだ。
実際僕は何度も怒られているし、ハルの周囲にもハルにコテンパンに言われた人も多い。
それなのにと言うべきかだからなのかと言うべきか、ハルの周りにはいつだって人が絶えなかった。
ハルという女の子は、見た目は幼くて可愛らしい印象なのにその実とても男勝りで姉御肌だった。
かと思えば料理や裁縫が得意だったり(手の動きにも軽度の障がいがあるとは思えない器用っぷりである)話題のイケメン俳優にキャーキャー言ったり、意外と泣き虫で甘えたな所があったりなど「あぁ、ハルも女の子らしい所があるんだな」と感慨にふけることもある。
----そう、ハルはただ歩けないと言うだけのどこにでも居る普通の女の子だ。
僕は初めて出会った時からそんなハルに惹かれて、少々怒りっぽかったり頑固な所もあるハルが世界で一番大好きだった。
先に言っておくとこれは、カワイソウな彼女と紡ぐせつないラブストーリーでも最後に彼女が死んで愛を叫ぶ感動モノでも彼女が歩けるようになるまでのキセキの物語でもない。
どこにでもいるごく普通の男、僕ことシュンとどこにもいるごく普通の女の子、ハルのどこにでもあるような他愛もない物語だ。




