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ドライフラワー  作者: ys
2/6

オンシジューム


目がさめると窓から光がさしていた。

雨は止んだらしい。

兄はすでに出かけているようだ。

8時30分。

完全に遅刻だが私には関係ない。

たまたま同じような時期に生まれた人間が無理やり同じ箱の中に閉じ込められて3年間も集団行動を強要させられる。

窮屈でたまらなかった。

高校進学はしないと兄にいったが無理やり入らされた。

幸いなことに頭はそれほど悪くはない。

あの教室に蔓延する空気を半年間吸い続けてもう限界だった。

「やめたい。」

憂鬱すぎる。

兄が学校に通わせるのは異常者の私を全うな道に戻したいからなのだろうが私からしたら兄の方が異常で気持ちが悪い。

朝食は食べない。

以前食べたから登校して吐いたことがある。

あの空気の中では胃の残留物が私にとっては強敵である。

準備を済ませて外に出ると可能な夜とは違う空気になっていた。

朝特有の匂いに昨日の雨が少し混ざっている。

「気持ち悪い。」


登校するとカラスがやけに賑やかだった。

転校生が来るらしい。

猿のように喚く男子。

今日は一層居心地が悪い。

義務教育の中で植え付けられたスクールカーストは社会にでても変わらないなだと思う。

私のような底辺はいつになっても這い上がることはできない。

そのもそも上に行きたいわけではないが。

クラスの人間からは高嶺の花だのクールだの言われているがただ関わることが無駄だと思っているだけだ。

幸運なことに容姿だけは良く両親が産んでくれた。

そこだけは感謝している。

むしろ外人の父親がいて容姿が醜かったら生まれた時点で摘んでいる。


HRになり担任が転校生の紹介を始めた、

クラスは動物園に成り下がる。

「それでは、久瀬さん。入って!」

静かにドアが開く。

隙間からはドライアイスの煙のように冷気が教室を履いクラスを覆った。

この空気を感じたのは私だけだろう。

彼女と目が合う。

色白な肌に長く伸びた黒髪。

全てを見透かすような冷たい瞳だった。

「同類だ。」

思わずそう呟いていた。

彼女も感じ取ったようで私に向かって微笑えむ。

「久瀬ゆうきです。よろしくお願いします。」

最低限の挨拶を済ませて先に向かう。

私の後ろだった。

通り過ぎる時に彼女は小さな声で私に話しかけた。

「今、何人?」

久しぶりに恐怖を感じられた気がした。

背中に氷を当てられたように背筋が伸びる。

彼女の言葉はどんな言葉よりも冷たく淡々としていた。

私たちの中で静かに音が鳴り始めた。

ああ、私は今からこの女と一緒に咲くんだ。

霧のような確信が私と彼女の意識を包む。

誰も入れない2人の世界。

私と彼女は同時に笑った。


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