第85話:オーク集落への殺戮戦その6
15日目:オークの集落
視点は俺に戻る。
エルに他のチームを監視してもらってるが……まさか図ったかのようにジェネラルが別れていくとはな。
ゴブリン隊はアウトが頑張ったようだし、辛くも倒せた。
魔鳥編隊は負傷も有りながら、<連携>により倒せた。
ユニ……モード使ったか。
あれ精神も一時的にブーストするから大人っぽくなるんだが、貯めた精力使い果たすと元に戻った上で退行しちまうからな。
また精力を<ドレイン>させて貯めさせないと。
みんなジェネラルを倒せたから、経験値は期待できるな。
よくリスポーンせずにやれたもんだな。
なあ、そうは思わないか?
「『貴様、殺してやる』」
殺すのはこちらだよ、オーク・キング。
ランク6、それだけの威圧は有る。
取り巻きに、オーク・ヒーラー? 奴を最初に殺るか。
オーク・マジシャンも居る……!
エル! アイツ<氷属性魔術>持ちじゃねぇか!
洞窟内に、食糧保管用の氷室が有るのを不思議に思ってたが、なるほどオマエか!
エル:解析します。
イフはオーク・ジェネラルを甚振ってる。
周りの平オークも、毒やロープ、スネアで動けなくしている。
成長の早い芋の蔓を<木属性魔術>で育て縛り上げているが、あの芋はなんていう種類だったか。
「『お前らはサポートしろぉ!』」
おっと、来るな?
『ダーク。お前にかなり無理させるが、行けるか?』
『ヒヒンッ(もちろんです)!』
いい覇気だ。
ダークの身体を<氣力活性>。
リジェネレートを付与し、常時回復。
身体強化は速度と回避に特化。
『行くぜ』
『ヒヒーンッ!』
ダークの<脚術>で、<突撃>を発動。
オーク・キングも、でっかい棍棒を振りかぶってくる。
『ジャンプ!』
『ヒン!』
ダークと<連携>し、イメージを伝えていく。
加速のままに、空を行く。
「『何!? だが上空では避けられまい!』」
棍棒のスキル技が発動し、氣力の込められた一撃は……スカッ!
「『何故だ!』」
<変態機動>は、騎乗時にも効果があるんだ。
空中に<足場障壁>を張っていき、更に加速!
「『え?』」
狙いはテメーだよ、ヒーラー!
『<馬上槍突撃>!』
ダークとの<連携>技だ!
得られた速度エネルギーと位置エネルギーを、威力に変換!
ガッツリ首に突き刺さるハルバード!
怒り狂い棍棒を振り回してくるオーク・キングに、落とし穴と草木の罠を発動。
ダメか、<直感>持ちだな。
<罠之技術>はエクストラスキルなんだが、高レベルの<直感>か。
とは言え、分かっても当てるだけの罠を張ればいいだけだ。
ジャンプして落とし穴を避けたのは悪手だったな。
「『グガッ』」
<魔力機雷:隠蔽>だ。
威力は低めだが、数十発炸裂すればまぁまぁ効くだろう?
「『氷結の槍!』」
『<魔力手>+<炎之腕>』
セミオート式の炎手で氷槍を掴み取る。
……ふむ。ツララのスキルとはやっぱり違うな。
魔術なら、エルさんの得意分野だ。
オーク・マジシャン(氷)の顔を炎手で燃やし、気絶させておく。
おいおい、練度が足りねぇな。
うちのアウトなら、燃やされながらでもグーパンチ放てるんだぞ。
「『<貫棍騒砕>』!」
『ヒン<緊急回避>!』
『<風之流壁>』
ふふん。うちのお馬さんは後ろにも歩けるのだよ!
後ろに何があるかも伝えてるしな。
ほう、ドリルのような棍撃か。
悪くない。
余波も避けたが、無理な動きでズタズタになった筋繊維を更に強化回復。
邪魔は消した。
『<極限集中>発動。ダーク、後20秒、全力で動け!』
『ヒン!』
キングの棍撃、薙ぎ払い、突き、叩き付け。
それを避け。いなし、突き返す。
所々に空中機雷を仕掛け、オーク・キングの行動を誘導。
気付いてもなお、動かざるを得ないだろう?
魔術リソースの半分をダークの強化・回復に。
もう半分を罠と嫌がらせに。
優しさは入ってない。
オーク・キングの動きを解析していく。
一瞬毎に、キングの動き方、癖、選択肢を把握し狭めていく。
それが分かるのだろう、焦りながら攻撃してくる。
おやおや、キングになって真面目に戦ってなかったのか?
それとも格下ばっかりだったか?
自分より上位が居るなんて当たり前のことを忘れちまったら、死ぬだけだぞ。
「『<壊塵乱舞>!』」
辺り構わず、振り回すスキル技。
効いてるようだな、薄ーく広げた<精神魔術>。
気付かれない程度に、違和感すら感じない干渉。
俺はオマエを甘くなんて見ていない。
キングまで至ったその力を、1枚1枚読み取り剥がしていく。
今だ!
『<念動力><投擲><剣術>全力で並列起動』
魔力と氣力を溜めておいた投擲武器群を<レッドの腕輪>より解放。
時間停止機能により劣化はなし!
『<投擲軍殺到>!』
包囲した投擲武器、短剣に始まり苦無、棒手裏剣、刃物系を殺到させる!
「『棍氣防壁』──!」
棍棒を地面に突き刺し、氣力の壁を築く。
展開した武器達を刺して刺して刺していく。
「グガァア!」
抜けた。
しかし一撃一撃は強くない。
耐えればいい。そんな面だな。
『やってしまえ、一番の大物だ』
『さいっこうです! 旦那様ー!』
何故ナイフをバラまいたか。
今さら<直感>しても遅い。
実はジェネラルの精神を破壊し終わったイフは戻ってきていた。
一番の攻撃力を誇る、屠殺の一撃。
壁の空いた隙間から狙えた、鎧のない強靭な太もも。
「アアアア゛ア゛ア゛──!」
一瞬、意識が飛んだな?
氣力の全てを込めた、殺意の一撃。
『<刎首斬牙>』
ハルバードの斧刃が、オーク・キングの首を切り飛ばす。
──死亡、確認。
すぐさま元オーク・キングの血液に干渉。
全力で血抜き。
──脂肪、確認。
よし、オーク・キングのお肉が新鮮なうちに血抜き完了。
血も使えそうだな。
キングをやられて恐怖し逃げ惑う……こともできず罠にはまりどうにもできないオーク達。
『総員に告げる!
これより二軍メンバーも出撃させる!
死なさないように、経験値を稼がせろ!』
ゴブリン26体。
魔鳥8羽。
召喚。
『お前達! 一軍メンバーの指揮の下、オーク達にその武器を! 爪を突き付けろ!
出来る限り素材を無駄にしないようにな!
行け!』
『ハッ×26』『クルッ×8』
皆固まって動いていく。
魔鳥達は空の先輩達に向かって飛んでいく。
魔鳥達も、とんでも理論をよく形にしたな。
あれなんちゃって科学だったのに。
さて、クールダウンさせたダークを歩かせ、顔を燃やしたオーク・マジシャン(氷)のもとへ。
気絶してるうちに、<精神魔術>で洗脳。
うーん。レベル低いし難しい。
直列起動!
レベルが低くても、強引にパワーアップ!
……よし!
回復魔術をかけ、起こす。
「『ナンナリト、ゴメイレイヲ』」
あっちゃー、強引すぎたか。
まあいいか。
オーク語は分かるけど、発音がめんどい。
『お前の使える<氷属性魔術>を全て見せろ』
念話って便利。
「『ハッ、ワカリマシタ』」
おー、こういう構成で。
魔力質をこう変換させて、あー! そこにこの因子が入るわけかー!
エルさん!
エル:スキルへと昇華可能。現在作業中です。
よーし!
ほらほら、もっとみせろー!
オーク、真面目に防衛戦。
レッド+フォルトゥーナ、真面目に食糧調達。
アウト:意識の差が酷いっス。




