第83話:オーク集落への殺戮戦その4
本日4話目、ある意味5話目。
15日目:オークの集落、オークも半壊
視点:魔鳥の1種氷鳥、氷
ツララは飛びながら思う。
またわたしが纏めることになるんだなー、と。
魔鳥たち4羽は姉妹のようなもの。
それぞれに得意不得意は有るが、上下はなく同位だ。
だが纏め役が居ないかと言うと、違う。
基本的に持ち回りでやっているが、大抵はツララが行うことになる。
何故なら、冷静だから。
それぞれの属性、炎、氷、風、雷。
創造主であるレッドが持つ、その属性に対するイメージのようなものが反映されたのか、ツララが一番冷静なのだ。
そして、一番上手く行くのもツララが纏めた時。
なので姉妹の纏め役は自然とツララである。
別に良いけれどねー、ともツララは考えている。
何故なら、纏め役なら創造主であるレッド様に誉められやすいのだ。
優しいレッド様はみんな誉めてくれる。
だけど、纏められて偉かったねー、ともう一個誉めポイントが増えるのだ。
そんなことも考えられるから、冷静と言われるのだが。
そして思う。
今回は、危険だと。
何時もなら、遠距離攻撃を潰したあと、悠々と制空権を取って攻撃できる。
苦し紛れな遠距離攻撃をしてきても、対処はしやすい。
しかし今回は最初から動員されている。
そしてまた思うのだ。
遠距離持ちを、引き付けると。
相手も制空権を取られることが危険なこと位分かるだろう。
対応のために、魔鳥編隊に手を割かずにはいられない。
そうすれば、地上のみんなは楽になる。
そしてわたしたちの得意なことは、回避だ。
何故なら、一番叩き込まれるから。
生存すること。それが第一。
ついで、相手を殺すこと。
生きて、殺す。
<レッドカード>が有るからと言って、死んで良い訳じゃない。
それじゃあ、成長できない。
だから、そんなことをもっといい感じに盛りつつ。
勝ち気な炎。
移り気な風。
スピード狂な雷に伝えていく。
『クルッ(いくよ)!』
──────────
高い所からの情報をエル様経由で送りつつ。
4羽1編隊で突撃。
バラバラにならないよう。
しかし固まりすぎないように飛んで攻撃していく。
それぞれのスキル。
<炎矢><氷槍><風刃><雷球>をメインに飛ばしていく。
嘴と爪を使った攻撃も出来るが、オークには目でも狙わないと効きにくいし、近距離では不利だ。
リソースを気にしつつ、上空から攻撃を浴びせていく。
<連携>持ちでも有り、特に姉妹達とは効力が高いため。
攻撃がぶつかることはなく、むしろ効果を高めていく。
例えば、溜めブレスを放とうとしているホムラが居たら。
特に回避が得意なハヤテが攻撃を誘い。
ハヤテが狙われ過ぎれば、わたしが出の速いフロスト・ブレスで牽制。
冷気で動きが鈍ったオーク達に最速のアズマが<雷球>をばら蒔いて更に麻痺させる。
そこに一番攻撃力の高いホムラの、溜めに溜めた爆発タイプのブレスを発射。
一番邪魔なアーチャーを燃やしていく。
うーん。
ランク4は固い。
だけど、弓の弦は燃やせたようで、1人落とせた。
投石では効果が薄れる高度を保ちながら、こちらの攻撃が弱まらない高度を保ちながら。
スキルとブレスを放っていく。
────!
『一時上空へ避難して!』
『了解×3!』
全力で避難する。
ここまでアーチャーの矢、マジシャンの魔術の余波を食らった位で、それもポーションですぐ回復した。
身体の動きを妨げない程度に装備した首輪やベルトに付けられたホルスター。
それらは思念で動くため鳥の身体でも使いやすいもの。
減っている魔力を回復するため、それだけじゃなく体力も回復させる。
ここからは、激戦だ。
「ガァァァ!」
ジェネラル。
無手かと思ったそのジェネラルはその実、<投擲>使いの遠距離型。
氣力で槍を作り出し投げるという、とびきり危険な奴だ。
『みんな、この距離を保てば挙動で緊急回避出来る』
投げた槍を操作する能力が有るかもしれないことを考慮しつつ。
『でもそれじゃあ、倒せない』
そう、わたしたちは航空のデータを得るため。
そして空で戦うために産まれた。
『やるよ、みんな。舞い系スキル全開。
アイツを倒すまで、止まらない!』
『了解!×3』
スキル<氷柱舞>。
わたしの新たな代名詞となるスキルだ。
わたしであれば、冷気を撒き散らしながら、ブレスと<氷槍>の連続使用。
その他、氷系スキルを使えるようになるモード。
地表へ加速し、重力加速度を持って<氷槍>を射出。
同時に凍結のバッドステータスを付与するフロスト・ブレスを広範囲に放っていく。
攻撃はジェネラルに集中。
遠距離のない取り巻きは一時的に動けなくしておけば良い。
わたしは凍結。
ホムラは火傷。
ハヤテは切創。
アズマは麻痺。
それぞれの属性を活かした阻害効果。
特にハヤテとブレスを合わせることで、威力と範囲を増すことが出来る。
オーク・ジェネラルの全力投擲を、こちらも全力で回避していく。
回りに撒き散らす冷気は、センサーにもなるわたしの領域だ。
他の感覚だけでは捉えられない速度でも、それぞれの領域でカバー。
姉妹の得た情報は、混乱しないようにジェネラルの投擲だけに限定。
それだけは全力で回避──『ホムラ! フォグ!』『──あいさー!』
干渉しないようにしていたホムラの熱気とわたしの冷気を合わせて、一気に濃霧を作り出す。
それをハヤテが更に干渉。
わたしたちを隠す領域を即座に作り出す。
1羽でやるよりも、余程大きく、余程早く出来る濃霧。
わたしたちの領域だから、視覚はクリア。
『キャッ』『グッ』
ホムラとハヤテが被弾した!
業を煮やしたジェネラルが、投擲後の氣力槍を、分裂させた。
威力も分散するが、放射状に広がる槍に込められた氣力は多い。
領域に入り込んだ密度の高い槍群を上手く躱しきれなかった2羽は、ダメージを受けてしまった。
『アズマ! 領域を使って牽制して』
『やってやるさー!』
負傷用ポーションをぶっかけ、回復させていく。
『すまねぇ』『当たっちゃった』
『動ける? 動けるならどのくらい?』
ホムラは回復しだい戦線復帰可能。
『けっこう厳しいかもー』
ハヤテは飛行は何とかなる。
でも戦闘行動は厳しい。
ハヤテは一番紙装甲で、回避特化だもの。
それでも回復はさせ続け、この領域を維持させる。
その間、アズマはこの冷気と熱気が入り交じり、風によって干渉された霧を用いて。
領域を構成する粒子の摩擦で生まれる静電気、その電位を自前の雷と合わせて落雷。
よくわからない理屈だけど、雲で雷が起きることくらいは知ってる。
アズマはその辺り勘でやっているみたいだけど、領域が雷雲に近い状態となり、再度氣力槍を作成し投擲しようとしたジェネラルへと雷を叩き込む。
金属に近い魔物鎧だったのか、高圧高電荷を叩き込むと感電して、麻痺させることに成功。
ランクの高い魔物は復活も速い。
ここだ、ここしかない。
アズマには更に雷を発生してもらい、周りのオーク達を痺れさせていく。
負傷中のハヤテに負担をかけるけど、風で加速してもらう。
ホムラにも熱による操作で気圧差を作ってもらい風の補助を。
加速。
全身から放つ冷気を更に強める。
これから放つは最大の大技。
至近距離で、ジェネラルにぶつける。
領域を飛び出し、更に加速!
麻痺しているジェネラルに向かって、回転を加えながら飛翔────回復が速い!
麻痺していても、気合いで氣力槍を作り出しておき、飛び出してきたわたしに向かって、全力全開の投擲!
────ばらばらに、砕け散る鳥の身体。
その瞬間。
また強力な雷が直撃、再度麻痺。
砕けたのは、勿論冷気のわたし。
いつだったかアウトという変なゴブリン相手にも使った、氷像のデコイ。
レッド様直伝の騙し討ち。
わたしはツララ。
レッド様の目であり槍である、ツララ。
食らいなさい。
『<氷柱舞>!』
莫大な冷気を放ち。
鋭利で巨大な氷柱。
その目にしっかりと、突き刺さりなさい!
落下速度を威力に変えて叩き付け、すぐさま上空へ飛び去る。
「グラァァァァアアアア!!!!!」
なけなしの馬鹿力で、石を投げてくる。
「グガァ!?」
でも残念。
それは虚像。
冷気と熱気で作り出した、幻影の陽炎。
ランク5のジェネラルが、ランク3のわたしの攻撃がクリティカルでもそうそう死なないと思ってたから。
保険をかけておくのは当たり前。
でも雷や今までの攻撃を食らってきて、あと一押しでしょう?
『ホムラ、やっちゃって』
『あいあいさー! 溜めに溜めまくった、全力全開のブレス。食らいなさいなー!』
逃げようとしても無駄。
こっちには雷がまだいるの。
ぼろぼろの神経を更にショートさせ。
『<焔熱舞>、<爆炎のブレス>!』
そこに強烈な炎の一撃。
「グガァァアアア!」
冷気で冷やされた防具。さぞかし熱気で脆くなるでしょう。
そんなこと気にするまもなくで死ぬでしょうけどね?
……あっ!
あれじゃあ防具が回収できない!
……ホムラに押し付けましょうか。
かなり力を使いすぎた。
一度高空に戻って回復しましょう。
ハヤテも深手を負ってますしね。
この作品は異世界です。
この世界の物理法則さんとは違うところがあるかもしれません。(保険はかけておくのは当たり前)
魔鳥達も肉食うさぎさんも、知能が高いのできちんと思考してます。
ただ単に、喋れないだけです。
また思考形態が人間、亜人種と異なるためです。
レッド君には感情が伝わるし、エルせんせーにより意思や意図は伝わってます。
ランクアップすれば、更に意思伝達は上昇します。




