第79話:弱きは殺せ、豚は潰せ。猟犬など歯牙にも掛けず、猪さえも吹き飛ばせ──我ら狼ならぬ殺戮者である
15日目:街道外れの草原
おっ。
<レッドの腕輪>内に、ゴブリン隊が帰還したな。
エルからも聞いてはいたが、危なげなく、人数も絞って捕らえることに成功。
経験値の質が求められる、レベル50の壁を、揃って攻撃することで、なんとか越えることが出来たらしい。
あれでランク3って、詐欺だわな。
装備も良いし。
俺の魔物達は、加速した世界で、効率を考えた訓練を行い。
死さえも越えて戦うからな。
実践経験の量は低いが、質は高く。
本能で生きている魔物達よりも、スキルレベルや、素のステータスが高い。
やはり、理解できる頭脳ってのは重要だな。
ん? 人間か。
装備は……Fランクだけあってごみ装備だな。
とはいえ、勿体ない精神は有るので確保しておいて。
死体はどうするか。
<レッドの腕輪>のリソースに変えても良いんだが……。
ユニが<ドレイン>を取得してくれたお陰で、魔素の吸収が早まり、効率も上がり続けている。
最初は何故にサキュバスだと思ったが、最高の因子だったな。
勿論その旨をユニに伝え、誉めておいた。
ユニはそれに喜んでその胸を弾ませていた。
うーん。
取っておくかな。
綺麗に形が残ってるし。死後間もない。
時間停止機能も有るから、保存も大丈夫。
一応凍らせておくか。
トレントのネームド、ワルドに肥料として与えるのも良いけど。
それは桜型のトレント(?)にしておこう。きっと鮮やかな花の色になる。
パカラパカラ……等と音を出すこともなく、馬達は進んでいく。
揺れにより、ユニの大質量も揺れているが……うむ。
大分、揺れを制御できてるな。
邪魔になりにくくなっている。
流石はユニーク。だが、まだまだだ。
目指すはレジェンド、ミソロジー。
そしてジェネシス、アルティメットランクのぶらじゃーだ!
……何を目指してるんだ俺は。
──────────
アホなことを考えつつ。
オークの集落が感知領域に入った。
…………多いな。
多分これ、更にオークがおーくなったら(誤字に非ず)高ランク冒険者に依頼出されるな。
平のオークが100体以上。
何らかの役職持ち=ランク4が数十。
指揮官らしきランク5が4。
そして。
『オーク・キングが居る。ランク6だ』
全員に伝えていく。
魔鳥達が航空から<鳥瞰>した画像。
俺が様々な方法で感知したもの。
それらのデータを共有しつつ、戦法を練る。
まず、オークの集落。
洞窟らしきものが有り、その周りに集落が広がっている。
大きな屋敷が有り、そこにキングの反応だ。
こりゃー、生産系の上位種が居るな。
ゴブリンとは桁違いの集落だ。
洞窟は、食料保管庫。
及び、繁殖場所だな。
人間の女、それが何人か居る。
オークのメスは集落内に居て、普通に暮らしているようだ。
繁殖道具と、数少ない仲間という違いだな。
オークもメスが産まれにくい種だ。
まー、当然のごとくどうでもいいのだが。
俺の目的は、殺戮による経験値とリソース。
そしてお肉である。
フォルトゥーナに影響されてるな、これ。
どこかで<料理>してくれる可愛い人外っ娘居ないかねー。
今のところ、ユニに伝え少しずつ教えてるけど。
さて。
今回も<純粋なる殺戮遊戯>を使う。
相手は、初めてのランク5、6。
明らかに陣営としては負けてるな。
なのでそこを補うゲームメイクか。
……こんな感じかな。
ゲーム名・馬上の一騎駆け
ルール1:原則として、俺、レッドは馬に乗っていること。
身体の一部が地面に触れてはならない。
ルール2:ゲーム中、オーク達は集落内から出ることができない。
俺、レッドがルール1を破ることで出られるようになる。
ルール3:俺、レッドの位置情報は常に敵対者に知られ、ヘイトを溜めやすい。
ルールも相手に知られる為、更に狙われやすくなる。
ルール4:敵対者の殲滅を以てゲーム終了となる。
敵対者を逃がした場合、取得経験値大幅ダウン。
ゲーム成功の場合、取得経験値にボーナス特大。
何時ものごとく、逃げられない特殊フィールドの形成。
そのことを相手に知らせ、危険度を高めることでフィールドをより強力にする。
これ、ユニークスキルで逃げられる可能性が有るんだ。同格だから。
より強化することで、万全になる。
また、他の魔物達に攻撃が行きにくくなるってのも狙ったけど。
そして今回は、ペナルティー有りだ。
失敗すると、取得できたはずの経験値が減る。
その代わり、成功すると増える。
逆に言えば、それだけのペナルティーなんだけどな。
もっとデカイペナルティーは、止めておく。
というかエルさんに止められたました、はい。
『みんな、分かったな。
主な作戦プランはAプラン。
場合により、幾つか変えていくぞ。
俺はダークに騎乗しながら、ハルバードと魔術で無双する。
基本的に近付くな』
確実に、オーク達は俺に殺到してくるからな。
そして、それこそが勝率が高いのだ。
『今回、魔物達は格上に挑むことになる。
なので、<レッドカード>は必須。
ゲームルールに、俺の危険度を上げることを盛り込んだ為、復活が早い。
意味がわかるな?』
つまりはゾンビアタック。
ちなみに死んでリスポーンすると、最終獲得経験値が少しずつ減っていく。
まあデスペナだ。
『死なないに越したことはないがな。
その為、今回は3チームに別れて攻撃する。
第1には、ゴブリン隊にアウトとフォルトゥーナ、ライトが入る。
このフォーメーションでの訓練もしていたから、様になるだろう。
第2に、魔鳥4羽で1チーム。
追加した二軍達は<レッドカード>をインストールしていない。
メインメンバーが主になる。
第3が、ユニにレッドール4人。そして簡易ゴーレムによる盾だ。
ユニチームは決して無理せず、ゆっくりと狩っていけば良いからな』
総員がきちんと理解したかを確認。
異論もないようだ。
いや、俺が危険だという異論もあったにはあったが、きちんと説得した。……エルを。
さあ、殺ろうか。
太陽が最も高くなったら、ゲームスタート。
ライト、ダークの装備を完全戦闘装備に換装。
俺も、装備をハルバードに。
<魔鋼製殺刃ハルバード>
ランク:エクストラ
スキル:<殺傷力:強化>
コイツは、鋼を魔化させて、1から形成したものだ。
鍛冶系スキルは無いものの、イメージ力と現代知識チート、<錬金術>でゴリ押しし。
<人間ヲ嫌ウ者>と<意識投射>の殺意を乗せてスキル化した、汎用武器である。
これ、<槍術>と<斧術>だけではない。
槍の穂先を、剣身に見えるほど長くし、<剣術>スキルも発動できる。
あと何故か<杖術>も効果がある。
投げれば<投擲>スキル。
俺の魔力で構成されているか、<念動力>との相性も良い。
長い武器であり、使いこなすのも難しいが、馬上ではむしろ適性の有る獲物だ。
全員の準備が済んだ。
俺も強化ポーションを呷る。
──さあ、ゲームスタートだ!
──────────
『総員……ってーーーーー!』
俺は今まで制御重視で、威力二の次にしてきた。
今回は、割けるリソースをほぼ威力に注ぎ込み、詠唱しまくった魔術撃。
意味の有る指ならしで、パチンと鳴らした瞬間。
溶岩が幾つも降り注いでいく。
殺意マシマシの、<溶岩流星>。
うん。ミーティオ。メテオじゃないの。
あれは魔術や魔法ではなく、物理さんだからね。
魔鳥達はブレスを放ち。
ゴブリン隊は魔術、<投擲>、<弓撃の雨>などを放ち。
フォルトゥーナは抜いた角を力一杯投げ。
アウトはアルティメット・グーパンチ・セカンド(長い)をぶちかまし。
ユニは<精神魔術>による、<怒気撹乱>という、怒りで正常な判断力を無くす妨害魔術を。
レッドール達は投槍具を用いた投槍を。
ゲームスタートと同時に叩き込む。
大混乱。
それでも、元凶がここに居ると分かり。
俺を倒さなきゃどうにもならないとも強制的に理解させられる。
ユニの<怒気撹乱>により拍車がかかり、こちらに殺到してくる気配がする。
俺はダークを、拍車ではなくブーツで軽く叩き意思を繋げる。
勿論、必要の無いカッコつけだ。
「ア゛ア゛ア゛アアアア!!!!!」
挑発を込めた<意識投射>を腹の奥から叩き付け、ハルバードを構えいざ出陣!
迫り来る平のオーク達に、ハルバードを見せ付けながら<魔力弾>のフルバースト。
加えて。
『いけ! イフ!
<念動力>で支えてやるから、殺意のままに殺し尽くせ』
『勿論ですとも旦那様! 豚ども! その命を苦しみの果てに散らしなさい!』
イフを<投擲>し、オークに突き立てイフがひゃっはー。
ハルバードを振るい、槍のように喉を貫き。
斧のように頭蓋を叩き潰し。
剣のように腱を切り裂く。
時折片手で振るい、投擲系武器をばらまき、撒菱を撒き、錬金術アイテムをばらまいては、イフを操ってオークに突き立てていく。
「オラオラオラオラ、<風輪火斬>! かかってきやがれ、豚どもが!」
ハルバードをぐるぐる回し、斬撃の風・火を飛ばしていく。
あっ、お肉のいい匂い……っと!
「ゲギャギャギャ!」
実はオークのしゃべる言葉も、解析すればわかる。
意味の有る言葉だけを広い、基本は無視だが。
出てきたのは、ランク5のオーク・ジェネラルを指揮官とした、ランク4の上位種達。
『ヒン』
『ダーク、落ち着いていけ。
今のお前は、装甲騎馬になっているし、俺が強化しまくっている。
俺の<変態機動>に合わせて来ればいい。
お前と俺の力を見せつけるぞ!』
『ヒヒーン!』
さあやろうぜ、オーク・ジェネラル。
まごうことなき、ネタタイトルです。
オープニングが好きでした。
ああいう、真面目にアホな作品って好きですね。




