第7話:はじめてのさつがい
1日目:草原と森の切れ目
対象を、視認。なるほど、あれは魔物だな。
緑色の矮躯。醜悪と表現できる顔。汚い腰蓑に、より汚い身体。手には無骨な棍棒。
はいどん!
【ステータス】
個体名:───
年齢:半年
性別:男
種族:ゴブリン(ゴブリン種)
レベル:22
ランク:2
そう、ゴブリンなのです。
この世界では、妖精の一種、とかではなく、ゴブリンという系統の一種。鬼の因子を持つ種族だ。
んーー?
なるほど、俺の人間嫌い。向こうでは、動物には反応しなかった。動物園に行ったとき、猿やゴリラといった類人猿にも、殆ど反応は無かった。
しかし、ゴブリンに対して、少し反応している。
これは……相手が、亜人と呼ばれる種族だからか?
ふうむ、これではエルフや獣人等と呼ばれる者達も対象かな?
まぁ、全ての生物を滅ぼすと決めたのだ。それは人類に問わず。それも関係してるのかもな。
エル:その可能性は高いです。マスターの≪人間≫に当たる存在は、人間以外に、別種が公に認められていなかった仮称:アースとは違い、イリガルドでは拡大されていると考えられます。ただし──
おっ、良い引きだな。
エル:ただし、自らの眷属にしたものは別になると考えられます。
眷属、<とある神与の迷宮創造>に、関連したものだな。
エル:yes。ここでゴブリンを殺害することで、情報は増えます。
ならば、ゴブリンを、殺そう。
嫌うことに理由が無いのなら、殺すことにも理由などいらない。
殺される理由が有るだけ、マシだろう?
俺も殺される覚悟など、とっくに済ませているのだから。
ゴブリンのスキルを表示。
【ゴブリン・スキル】
ノーマルスキル
<棍棒術:レベル:1>
棍棒の扱いを補正するスキル。
<繁殖:レベル:1>
他種族のメスを孕ませた時、生まれる個体をスキル保持者と同じ種族:ゴブリンにするスキル。妊娠確率、出産成功確率を上げる。
ゴブリンの種族スキル。
<性欲上昇:レベル:1>
性欲を上昇させる。性欲に関わる能力を微上昇。
ゴブリンの種族スキル。
なるほど、年齢からも分かっていたが、まだまだ弱い個体。ゴブリンの成人(?)は、半年足らずらしい。
エル、生命力等の表示を、俺と敵、バー形式で表示。及び、現在の俺のステータス。
エル:了。
【ステータス】
生命力:1000
体力:97/101(+1)
魔力:90/102(+2)
氣力:90/102(+2)
おっ、少し上がってる。小一時間の鍛練でこれは良い傾向だな。
勿論、エルのサポート有ってこそだが。
効率も徐々に上げられるし、集中力という概念の無いエルだからこそ、と言えるだろう。
んじゃま、戦闘開始だ。
──────────
こちらは森の木に隠れた状態。<人間ヲ嫌ウ者>の簡易能力により、隠蔽力上昇。
本来は、精神やステータス隠蔽だが、潜伏にも少し効果がある。
相手は草原側。獲物を探してるのだろう、キョロキョロしている。
初手はこちらから。潜伏状態から、石を投擲する。
まさか、奇襲できるのに、遠距離武器あるのに、近付くわけもない。
ステータスを確認し、こちらの方が強いと確認しても、こちとらまだ殺害バージン。喧嘩すらまともにしていない。
手頃な石を、アイテムボックスに収納しておいた。足で踏んでも収納できるから楽だったよ。
その石を、<投擲>スキルで強化する。身体を氣力で強化。
石も氣力で包んでみる。……うっわムズ! しかしエル先生のサポートで包み込む。
消費するなこれ。まだまだ平気だが。
現在使用可能スキルをフル稼働させつつ、石を振りかぶり、投擲。殺気など漏らさない。<人間ヲ嫌ウ者>の完全隠蔽効果だ。
ブーツの性能で足音も最低限。ピッチャーのような投げ方で、投石は、直撃!
向こうを向いていたゴブリンの、棍棒を持っていた右肩を強打! チッ、頭を外したか。エル、今のデータを参考に出来るか?
エル:サポート可能。繰り返す毎にアップデートします。
よし、混乱しているゴブリンがこちらに気づく前に、再投擲!
こちらに気付いたゴブリンが慌てて左手を盾にするが、ゴッ──っと鈍い音を立て、左腕を砕く。
氣力を込めた石だ。中々に効くだろう。スキルもコミコミだしな。
第3球、投げました!
逃げようとしたゴブリンの後頭部にクリーンヒット。ゴブリンは倒れた!
──エル、辺りを確認。
軽く石をゴブリンに投げ付けて確認しつつ、索敵。
──エル:確認完了。索敵範囲において、異常は検出されませんでした。ゴブリンの生命力も0と確認済み。
よし、とりあえず初めての殺しは上手くいったな。
主人公は非常に慎重です。やることがやることなので。
ぼく悪い人間じゃないよ? とか言われても殺せます。
スライムでも殺せます。人間ならなおさら殺しに行きます。