第71話:さあ、限界を越えていけ──魂の全てをかけて
14日目:火蜂の宿、客室
お宿に戻り、生産を開始する。
ユニは<精神魔術>や<ドレイン>についての熟練に励むように言ったため、ベッドの上で考えながら頑張っている。
それ以外は良いよ、使う機会が勝手に来るから。
俺はまず、必須の装備品を作っていく。
取り出しましたるは<適応進化蜘蛛の再生布>だ。
ランク:ハイエストな逸品の布。
この布を使って、俺の服とコート。ユニの服とローブを作る。
まずは理解だ。
スキルの粋を尽くし、エルによる解析を行い、ある程度の理解が及んでいる。
<容易加工>のスキルにより、理解もしやすいのだ。
しかもこの布、ある程度なら他の材質と合わせられるし、色も変えられる。
布の織り方も把握し、ほどく。
<再生布>から、<再生糸>に。
<錬金術>を中心に、生産系魔術を全力起動。
<操糸術>を生産系スキルとして起動させ、糸の強度やくせなどを変えていく。
裁縫などに使う器具は買い、俺用の器具に仕立て直したり、1から作り済みだ。
糸を紡ぎ、布としていく。
大量の魔力と魔術を籠めながら、氣力で感知系・操作系を向上。
俺の体格だけじゃない。
身体の動かし方から、ポケットの位置。
伸縮性、通気性などを整えていく。
2本の腕では足りないので、精密作業向きの<魔力手>や、<念動力>を駆使して形成していく。
既に<極限集中>は発動した。
……
…………
………………よし。
俺の装備はこれでいいな。
下着まで作ったが、要るかな……要るな。
都合良く、ズボンやパンツが破れない戦闘マンガの世界ではないのだ。
フラグ満載の世界では有るが。
再生機能付きのパンツは必要だろう。
布に余裕はある。複数枚作ろう。
シャツとパンツ(こちらはズボン的な意味合い)は快適性を重視。
だが防御力はそこそこあり、耐性もある。
メインの防具はコートだ。
こちらは、<再生糸>を加工。
細胞群を寄らせ、硬く布というよりは革のような質感に。
かなり魔力を使ったが、良い具合だ。
魔石を加工したボタンや、金属を仕込みつつ、暗器をセットできる加工を施す。
……………………うん。
良い感じだな。
防御力重視だが、回避に主を置き、受け流し可能なコート。
色はダークブラック。俺の目に合わせて見た。
どっちも色変えられるけど。
赤髪黒目、黒コート。……なにか!?
ここは世界:イリガルド!
ふつーですー! 厨二病関係ないですー!
古傷がうずくだけですー!
うむうむ。良いのではないかな。
後はグローブを作って……出来た。
うーん。少し指回りが悪いな。直そう。
俺の指使いは生命線になりうるし。
グローブの内側に魔印と魔法陣を刻んで……と。
魔石を砕いた魔石粉の粒子を揃えて、加工して、むっず、これ。
だが出来るな。よしよし。
グローブ、上下服、コート。
ブーツは元々最高級品だ。
武器は、まずイフさんを手入れしつつ。
『旦那様、くすぐったいで御座います』
ここかー、ここがええのんかー。
『ああ、旦那様ぁ』
ナイフ相手に何をしてるのだろう。
……うわ、<愛撫>スキルで攻撃力上がってるよ、マジか。
投擲武器のアップデートを行いつつ、新武器? を工作。
アトラトル、スピアスロアーと呼ばれる、投槍補助具だ。
これはゴブリン達にも支給するとして。
頭が壊れそうになるのを保護しつつ、<錬金術>を化学分野に適応させつつ、鉄武器の改良っと。
俺の主武器……主武器なんだろう? うさぎ?
まずは剣、これは幾つかの形を。
レイピア等の細剣。
中型の使いやすいロングソード系。
大剣も作っておく。使わないと思うけど。
槍と、杖。あと斧だな。
盾も作って、弓矢セットを仕込んで、と。
モーニングスターを依頼されたので、作成。
これ、使うのか?
使いこなせれば凄く使えるけど。
うーん。俺の性格や戦闘スタイル上。
大体投擲系に偏るな。
基本的に忍者か暗殺者で良いと思うこの頃。
次は、お待ちかねユニの装備だ。
可愛く作るのは当たり前である。
目立つことなど、隠蔽すればいいのだよ!(迫真)
武器は杖かな。
護身用に短剣を。
ロリ巨乳娘がハンマーってのもロマンだけど、それは未来の話だな。
今のユニは後衛向きだ。
<精神魔術>と<ドレイン>を主体とした、撹乱系魔術師かな。
それはそれとして、安全な場所が確保できたらハンマーをミニスカで振り回して貰おう。
勿論、魔法少女風の衣装でなぁ!
エル:マスター。<極限集中>の使いすぎにより、脳の活動レベルが低下しています。
よし。休憩しよう。
なに考えてるんだ俺は。
これでも俺は紳士であるはずだ。
人間と関わらなかったので、あんまり自信ないけど。
<精神魔術>を練習していたユニを抱え、そのユニはモフモフうさぎのぬいぐるみ(デフォルメ)を抱え、リアルうさぎのフォルトゥーナは器用にスプーンを使ってプリンを食べている。
卵が手に入ったので、作ってみた。
水属性は使えるし、氷も使えないことはない。
火属性の温度管理も出来る。
砂糖も流通しているので、カラメル絡めてアラモード。
ここ、火蜂の宿特製の蜂蜜を使った蜂蜜クッキーも作ってみた。
美味しい? 甘くてザクザクで美味しかった?
それは良かった。
よし、これも飲むといい。
レモンを使ったさっぱりするジュースだ。
むせないようにゆっくりとな。
レシピとかはあまり知らないしなぁ。
エルさんが記憶掘り起こして適応してくれてるけど。
あと<料理>スキル御大にマジ感謝。
糖分を補給し、脳に回ったので、作業再開。
いやー、ユニを抱っこしてると凄く癒されるわ。
イヤらしく見られる気もするが。
ユニの杖を2つ。ナイフ2つは完成した。
ユニお手手とも合わせ、握りや重心の角度を微調整。
これから更にアップデートを繰り返せば良いだろう。
現状の最高峰だ。
さて、問題は服だ。
靴は作成した。
俺のブーツの複製だ。
凄くリソースを食ったけど、靴は重要なんだ!
ユニおみ足に合うことを確認し……ソックスか。
<適応進化蜘蛛の再生布>や、<再生糸>を靴下に合うように加工。
んー、タイツも作れるかな。この分だと。
今回はまだ難易度が高く、優先度が低い。
普通にソックスだな。
手袋も作りつつ、髪止めも作ろう。
保護と回復付きの髪止め。
そしてチョーカーをつくって、と。
見映えの良い、首当たりの良いチョーカーを。
細い首が痛々しく見えないように。
しかし、首輪には見えるように。
ユニの意見も聞きつつ、作り上げる。
え? もっと首輪首輪してた方がいいの?
所有されてる感じが強いから?
もー、可愛いなぁ。(ナデナデ)
さあ、強敵である。
好感度の敵である、しょーつは作った。
え? ショートパンツの略ですが?
そもそも好感度など、ユニ以外は気にしないし。
あっ、エルの好感度は気になる。イフも。
エル:『エルの好感度は常時変化がないようだ』
エルさんがお茶目なゲーム表記だと!?
『旦那様ー。イフことワタシも旦那様のことをお慕いしてますよー』
そうかそうか。
「ユニはレッド様のこと大好きですよ?」
そうかそうかー!
貴様らデレ早すぎだろー! 可愛いぜこんちくしょう。
ユニをむにむにしつつ、データを更に取る。
さあ。
データはある。
スキルもある。
素材となる材料だってある。
始めよう。
「<限界弑逆>! 限定発動だ!」
ぶらじゃー作るためだけに、すべての戦力を注ぎ込む者:レッド。
エルさんはかなり止めました。
最終的にレッド君が押し通して、限界を越えた製作に挑む。
これは限界への挑戦である。




