第70話:初めての都市探索──ユニにとっての──で偽装工作に勤しむ
14日目:交易都市ハラスラ、都市中
都市を進む。
ユニとはお手手繋いで、人混みをすり抜けていく。
俺は<隠者の半仮面>を着けていないが、ユニは着けている。
そして、フード付きのコート着せているから、目立たない。意識されない。
フード付きコートって、フードコートっぽいな。語感。
どうでもいいことは置いといて。
昼から宿を出て、必要なことをこなしていく。
宿は明日まで取っているし、延長できるが、俺の第2目的はダンジョンへ、ひいては迷宮都市ガザラエンへ行くことだ。
第1目的は、言うまでもなくユニを甘やかすこと……じゃないこの世界にカタストロフを巻き起こすことだ。
焦っているわけじゃないが、リソースは限られている。
寿命も不明だけど、ダンジョンの力を使えるようになれば、より災厄を起こしやすくなる。
……ん? あれ食べたいの? よし買おう。
フォルトゥーナ、お前もか。勿論買おう。
最初の目的地は、ジョブ神殿だ。
最短ルートを避けながら行くと、ちょっと遠かったね。
ああうん。
<超直感・観>と<幸運>達が反応したんだ。
ネズミや犬、猫の小動物達のネットワーク。
俺とエルの<索敵>により、あっちは危険だと判断できた。
横暴な好色貴族だな、あれ。
太って肥えて、醜く醜悪な豚貴族フラグだ。
あっ、奴隷持ちの冒険者がフラグった。
『止めてください! この娘は僕の奴隷です!』
『何を言うか! 買い取ると言っているだろう! 木っ端な冒険者には過ぎた額だろう。
素直に受け取っておけ、庶民が!』
『止めろ、止めろぉぉぉ!』
うわー(棒)。
あの貴族、多分上層部と繋がりがあるな?
衛兵が止めにはいるどころか、世渡り上手な衛兵が、他の衛兵を止めている。
あの冒険者も、Cランク位だな。
奴隷を持てるランクではあるが、貴族に逆らえるランクじゃない。
それも、顔の利く相手じゃあな。
『……旦那様』
あれ豚だからね。
イフ、今はダメだ。
いつか必ず、ああいうのにお前を突き立ててやる。
怨嗟を撒き散らしたいのなら、機を見計らうことだぞ。
『勿論でございます。そのときは、是非に』
ああ、存分に苦しめてやれ。
貴族に手を出そうとして、結局衛兵に引っ捕らえられた冒険者は泣きながら連れられて行く。
あーあー、それが豚の狙いだってのに。
うっわ、気持ちの悪くなる顔だこと。
俺に関わらなくて良かったぜ。
ジョブ神殿へ到着。
俺のジョブではなく、ユニのジョブだ。
ユニはまだジョブに就いてないし、ジョブ枠も有る。
レベル1でジョブに就くレアケース。
可能性理論とか有るのだろうか。
「ジョブ神殿へようこそ」
「この娘のジョブチェンジを」
俺の冒険者ギルドカードを提示し、ユニの首輪を見せる。
この首輪も、良いのに替えよう。絶対だ。
「確認いたしました。金貨1枚、お預かりしました」
金銭感覚については、ユニも情報交換で把握している。
金貨1枚ということで、当初ユニは目をぐるぐるさせて可愛かったのだが、必要経費だと納得した。させた。まる。
買った奴隷をジョブに就かせることは良く有る。
時折、酷いご主人なら、ジョブ代金を借金として背負わせることも有るとか。
それだけジョブは効果的なんだけどね。
ジョブ装置部屋に入り、ユニをスキャナーに立たせる。
奴隷のジョブは主人側が選ぶのが一般的だ。
よって俺も部屋に入れる。
スキャン終了。
戻ってきたユニを抱っこしつつ、習得可能ジョブを確認。
……多いな。
「多いですね」
ユニも字が読める。
情報交換で以下略。
俺ほどじゃないが、候補が幾つか有るな。
<情婦>ってなんだ。サキュバス強すぎだろう。
<精神魔術士>、<誘惑者>、<吸収者>。
やっぱりサキュバスの因子が関係しているな。
おっ。
「あっ」
<混沌たる災厄>
秩序を破壊せし、災厄の権化たる混沌。
このジョブを持ちし者は、更なる混沌へと至り、災厄を撒き散らすだろう。
あらゆる全てに対して、補正大。
「レッド様、これなんてどうでしょう」
「ああ。一番目を引くし、強力だ。
ユニはこれでいいのか?」
「はい! レッド様のお役に立てそうです!」
ああうん。
俺の<殺戮者>より、余程強そうだよ?
これ上位ジョブじゃね? かなりの。
まさかのレベル1での可能性理論がガチだと言うのか!?
ユニは<混沌たる災厄>を選び、ジョブを習得。
……うむ。ステータスも上がっているな。
スキルの内部レベルも上がっているみたいだ。
「レッド様、このジョブでもっと頑張りますね!」
「ああ。まずはそのジョブを隠蔽しておこう」
「はい!」
見られたらヤバいジョブだからね? 今更だけど。
──────────
ジョブ神殿の次は、冒険者ギルドへ。
まだおやつ時前だから、空いているな。
奴隷の登録と、ユニのギルドカード作成だ。
やっておいた方が、後々便利なのである。
「では彼女、ユニさんの登録をします」
ユニの指に針をぷすっと。痛くないからねー。
ユニ用のギルドカードは縁取りは、白くなる。
「これでGランク冒険者として登録が完了しました」
鑑定はしていない。必要ないし。
ランクも上げる気がないからだ。
「奴隷と主人ですが、パーティーを組んでおきますか?」
「お願いします。パーティー名は<仮面の色彩>で」
「……はい。登録いたしました。パーティーランクとしてはFランクとなります」
「有り難う御座いました」
『<仮面の色彩>ですか?』
『ああ。仮面はこの仮面なんだが、便利でな。
そして、俺はレッド、赤で。
ユニは白銀の髪。
そして、色は様々に変えられる。
だから色彩だ。他の意味合いも有るけどな』
この仮面、めっちゃ使いやすいわー。
しかも、レッドという名前。
直感で決めたわりには使いやすいし。ネタになるし。
さて、冒険者ギルドの依頼をささっと確認し、ささっと逃げる。
フラグを避けるというのは大変だね。
──────────
ユニを連れつつ、お買い物。
フラグ多いな、流石に。
しかし、その全てを避けるのである。
ふはは、見えているぞー!
いきなり、俺の目の前で倒れようとした女性を素知らぬフリで避け、俺の後ろで歩いていた人に押し付ける。
そういうのは正義感主人公にやってろ。ハラペコキャラめ。
買うものは、服飾メインのアイテム群。
糸や布。鋼糸。
錬金術系アイテムやらなんやら。
フォルトゥーナ司令官の元、買っていく。
ランク:レアも買えたし、<幸運>はやはり良いね。
宿に戻って、生産開始だ!




