第69話:縫製技術は高等技術である──思考加速及び伝達による擦り合わせ
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とても有り難いことです。
あのあらすじを乗り越えて、読んでくださる読者様方。
これからもお付き合い頂けると幸いです。m(_ _)m
14日目:火蜂の宿、客室
ムズい。
なんだこの設計思想と、工作難易度。
女性用の下着って、こんなに技術使われてるのか……。
一旦置いといて、俺の持ってる素材群を見直そう。
仕立て直した服は着せているし。
うーん。前世の姉はぶらじゃー着けてなかったし、必要なかったしな。
うーん。うーん。
母親は確か大きかった気もするが気に止めてないし。
エル:掘り起こしますか?
noで。
妹という存在も居たが、どうだったか。
確か一緒に連れていかれたような。
男を下着店に連れていくべきではないと思うのです。
ボディーガード役の兄に、どっちがいいと聞かれてもな。
あの時は、店員と話すことでなんとかしたんだったか。
その時の記憶も役立っている……だと……。やるじゃないの、前世のオレ。
「ユニ、これから朝御飯で人を呼ぶ。すまないが、この仮面を着けてくれないか」
「仮面? これは確か昨日着けていた……」
「そうだ。今のユニは、人に嫌われることはない。
その代わり、可愛すぎて人目を引いてしまうんだ」
「ふぇっ!? ユニが、ですか?」
うむ。可愛い。
驚くと、連動して揺れるシステムが搭載されているのか。
「ああ、正直可愛すぎる。
嫌われることなく、人の世を歩けるようになったのに、隠させて悪いとは思うけどな」
「そんなことありません! ユニは、レッド様に見ていただくのが、それだけが望みです!
他の人間なんて、どうでもいいです!」
「そっ、そうか。その仮面は、俺の持っている仮面のレプリカでな。
人に気づかれにくくなり、人目につかないマジックアイテムなんだ」
「わぁ、凄いアイテムなんですね。 」
「だから、俺と二人きり以外のときは着けたままにしてほしい」
「はい! ユニの全てはレッド様のものです!
このユニの顔も、レッド様に貰ったものです。
レッド様に見ていただけるなら、それがいいです。
……これ、少し大きいようなんですけど」
「マジックアイテムだから、顔に合わせて変化するから、大丈夫だ」
「はい。わっ、くっついた」
うむ。俺には隠蔽効かないけど、大分マシになるだろう。
口元だけでも、可愛すぎるのだがな。
客室備え付けのベルを鳴らし、丁稚が来る。
「失礼します。御用でしょうか」
「朝御飯を頼む。客室で食べるから、オススメを、これの分だけ頼む」
手に硬貨を渡しつつ、こっそり、しかし相手には判るようにポケットに硬貨を放り込む。
「畏まりました。食べれないもの、避けた方が良いものはございますか?」
ユニに顔を向けるが、ないよね。
そりゃー、奴隷生活してりゃね。
「大丈夫だ。今日のメニューをそのままで」
「畏まりました。お持ちいたします」
動きの良くなった丁稚を見送り、食事を待つ。
やはり、あのコンシェルジュはレベルが高いな。
丁稚はまだまだだね。
おっ、早いな。
テーブルに並べ、丁稚は下がっていく。
「あの、レッド様。二人でこんなに食べられるでしょうか?」
「大丈夫だ。そもそも、余る位だけど、それでも良いんだ。
後で、全部説明してやるからな?」
「はい!」
「じゃあ、まずは食べようか」
ナイフとフォークの使い方も、<教導>と<念動力>で教えつつ、複数の思考を使い分け、服飾のアイデアやデータを纏めていく。
俺個人でも並列思考は出来る。エルさんだけで事足りるけど。
うっわ、本当にリソース食われるな。
朝食だが、なかなかボリューミーなメニューを食べつつ、おっ上手い。
蜂蜜が巧く使われてるな。
パンにも、蜂蜜が良く合う。
「ごちそうさまでした」「でした?」
俺に合わせて、手を合わせている。
うむ。腕で潰れている。
食べ終わると、テーブルに乗っている。一部だけ。
楽なのだろう。
食後に歯を磨く。やり方知らない?
はい、お口あーん。
特製歯ブラシに、軽く歯磨き粉をつける。
これも、<錬金術>の特製品である。香料要り。
食後すぐに磨いた方が良いらしいしな。
ユニのちっちゃなお口に、歯ブラシを潜り込ませ、磨いていく。
モニタリングしながら、綺麗に磨いていく。
俺の口は魔術でささっと。
虫歯菌に負けるような、やわな歯じゃないし。魔術も、むしろ効果高いし。
上の歯を丹念に。下の歯を丁寧に。
前歯を優しく。奥歯をコシコシと。
ん? 歯磨きが気持ちいいの?
あっ、<愛撫>スキルの効果か。
しゃかしゃか磨いていき、はい、ぐちゅぐちゅぺー。
歯磨き粉の効果を落とさないように、あまりゆすがないように。
「覚えた?」
「えーと、うーん。その」
「大丈夫。何度でも教えてやるかな」
大丈夫大丈夫。あの姉に比べれば、余程早いだろうし。
あの姉、なかなか自分でやろうとしなかったからな。
結局、長いこと俺がやってたな。しかも途中から色々と注文つけてきたし。
お口を拭い、一緒にベッドに座る。
俺はあぐらで。
ユニは俺の胴体をまたがるように乗っている。
うむ。胸板でなにかが潰れている。流石は大質量。
「じゃあユニ、さっき言った通り、額を合わせて」
「はい、レッド様」
ユニはしっかりと俺に抱きつき、落ちないように。
俺は、ユニの頭と身体を支えるように。
お互いの額を合わせる。
『聞こえるか、ユニ』
『はい! 聞こえます!』
これから行うのは、情報の擦り合わせだ。
俺が何をして来たのか。
何を目的にしているのか。
何故、ユニを選んだのか。
何をしているのか。
ユニの力はなんなのか。
全てを、伝えていく。
まだ会ってから1日も経っていない。
それでも、この娘は信頼できるし、それで裏切られたのならそれまででしかない。
<レッドの腕輪>で、時間の加速を。
<思考技術>による、思考加速を。
額を合わせることには、強い意味合いはないが、物理的距離が近い方が送受信が楽なのは確かだ。
ユニに負担のかからない速度で、ユニの思考速度も同期して上げていく。
時間を掛ければ可能だ。
それに、現在世界に登録されている種族。これから登録されたらその都度更新される、全ての種族のメリットを発現する。
それがユニだ。
人間に分類される種族に限られるが、その中でも思考能力の高い種族は幾つかいる。
ユニは気付いていなかったが、肉体面だけでなく、精神面も強くなっているのだ。
エルを知覚させつつ、神式情報ファイル送信で、データを送っていく。
アウトにやったような無茶はしない。
そもそも、アイツが耐えるとは予想外である。
マンガ全巻セット送って良く壊れなかったな、とっちゃん。
いっこいっこ、驚いてるユニ可愛い。ぷるぷる揺れてるし。
しかし便利だなー。これ。
かくかくしかじか、これこれこうこう。
本来の意味とは違った感じで捉えられるけど、正しくこんな感じで送れる。
反対に、<ドレイン>や、<精神魔術>を手解きしつつ、それらを教わる。
むむ、なかなか難しいが、少しは習得できそうだ。
<サキュバスの因子>は、使えるようになるだけでなく、使いやすいようにサポート機能や、強化機能も含まれるようだな。
色々と教えていき、魔物も使役していること。
人類滅ぼしちゃうよ計画とかも、教えていく。
『ユニも頑張ります! 人間を根絶やしにしましょう!』
ああうん。
反対どころか、頑張るってよ。
元々、災厄を起こすために、人類への恨み辛みはある。
ただ、その吐き出し方を。吐き出していいのかも知らなかっただけだ。
ユニをデザインしたやつも悪いが、ユニを災厄に至るように、石を投げつけたやつも悪い。
結論、人類みな悪い。
ユニの奥底には、人類への負の感情はある。
それ以上に、俺への感情が強いのもまた、明白だ。可愛い。マジ可愛い。
ネガイにもそれが表れている。
『レッド様ぁ。力が強いです』
『っとすまんすまん』
可愛すぎてつい。
むにゅむにゅしながら、同時にデータも取っておく。
多角的なデータが必要だ。
とりあえず、ユニにも、殺らせてみるか。
ダメならダメでいい。
そんな目的で、この娘を俺のものにした訳じゃない。
ユニがユニである、それが大事なのだから。
『はい。ユニは頑張ります。
レッド様のお力になれるのなら……ふにゃ』
っと、ついつい抱き締めてしまうな。
可愛すぎるのがいけない。
やはり、俺の前以外では仮面を着けさせておかないといけないな。
昼頃までかかりながら、お互いの情報交換を終える。
エルさんが途中で呆れてた気もする。気がするだけだが。
魔物たちとの面通しもした。
とは言っても、メインの奴らだけだが。
どこか親和性を感じるのか、良好な雰囲気だ。
というかゴブリン達がユニを姫扱いである。
大将の大切な人だから。
うむ。間違ってないな。合ってる。
イチャイチャしすぎっス。羨ましいっス。とか念話してきたアホが居たので、紅血の間を更に地獄化させた訓練場に叩き込んだ。
不思議だったのが、幸運肉食うさぎこと、フォルトゥーナさんである。
ユニ側は可愛いです! だったのだが、フォルはめちゃくちゃ警戒してた。
なんでなのか、モフりながら読み取ったところ。
自分のポジション:撫でられ役を取られないか不安だったらしい。
ふふふ、愛いやつめ。
全くもって誤解である。
それぞれの良さがあるのだからな!
全力の説得により、不安が解消されたフォルは、ユニに抱えられるまでになった。
基本的に、俺以外には触らせないが、俺の大切な人なら、ということらしい。
俺が最優先順位。ユニは2番目に設定されたようだな。
あっ、何うさお手手で持ち上げてるの。
なに、ユニもぬいぐるみみたいで可愛い?
今度作ってあげよう。
フォルトゥーナも、なに? 柔らかいけど、重い? そりゃね。
「それじゃ、一度出ようか。色々と済ませよう」
「はい! レッド様」
幾つもやることあるしな。
ユニには仮面を常時装備。
フォルトゥーナは、フォルトゥーナ司令官になってもらい<幸運>を。
きちんと、フラグには対処しないとな。
エル、フラグは?
エル:網羅済みです。
よし、いざ出陣だ!




