第6話:初めての異世界:イリガルド探索
1日目:草原
白い空間は、徐々に消えていき、周囲には、自然が視界に現れていく。
最初から、白は無かったかのように消え、俺は自然の真っ只中に立っていた。
──エル、周囲の生物反応は?
イレギュラースキル<人間ヲ嫌ウ者>の、簡易能力、周囲の生きている物を探る力。
本来の用途ではないため、効力は弱いが、サポーター:エルの力と、<感覚強化>スキルの力で、効果を増す。
<純粋なる殺戮遊戯>にも、近い効果有るしな。
──エル:敵性生物0。小動物は索敵範囲内に数匹存在します。脳内MAPに表示しますか?
yesだ。それと、MAPを常時展開出来るか? ゲームのアイコンのように。
──エル:了
……ふむ、半透明の地図が、視界の隅で展開された。注視すると大きくなる。
──エル:非常時は意識から外せるようにしています。意識すればすぐに展開されます。
うむ、素晴らしい。MAP系、地図系のスキルは取得してるのか?
──エル:yes。マスター:レッドの関知できる範囲が地図情報として統合可能です。エルとしての索敵能力は、マスター:レッドの関知範囲にある情報を更に精査し、考慮した結果の為、より広く索敵可能です。
うむ。助かるな。それと、マスター:レッドじゃなくて、マスターだけでいいぞ。
エル:了
うーむ、エルとの会話もいいが、他に誰か欲しいな。多様な意見が欲しい。人外で。
難しいことは分かってるが……奴隷制もあるし、考慮には入れておくか。
エル、町の方向は分かるな?
エル:矢印アイコンにて先導します。現在は仮称:神のデータによる推定情報です。より詳細な情報を取得することを推奨します。
おう。そうだな。んじゃー、MAPに神の情報を仮モードで表示しておいてくれ。それと、至近の町まで、怪しまれない速度で近づく場合の予想時間。あと、今の時刻は?
エル:表示完了。現在時刻は、世界時間において、明朝08:15。通常速度、不確定現象なしの場合、到着時刻は12:00~13:00程です。
エルさんマジ有能だ。世界時間は創造神が設定した時間で、時計のマジックアイテムはこの時間にセットされる。
当然のごとく24時間だ。凡そ、日本での常識は、ゲームの常識は使えるのだ。
創造神に感謝──元人間でも、神は人間ではないため──しまくりだな。
公用語は日本語である、人類語。日本語の慣用句は通じる不思議だ。楽だから良い。創造神以下略。
よしここでうだうだ してても仕方ない。町に向かいつつ、色々とタスクをこなすか。
──────────
町へと歩きつつ、少しずつタスクを設定し、こなしていく。
まずは、常時索敵。これはある程度をエルに任せるが、俺の能力:スキルの上昇により効果を増す。
スキルを得られれば、エルに使わせて、更に効率的にスキルは上がる。
エルは俺の一部であるため、エルがスキルを使っても経験値が入るらしい。
勿論、経験値は少なく、俺:レッドのいわゆるプレイヤースキルは上がらない。
上がらないが、能力が上がれば選択肢は増えるし、プレイヤースキルは後で追加すれば良い。まずは自力を付けなければ。
感覚強化スキルを意識して使用しつつ──パッシブスキルだが、意識することで効力・経験値が増す──辺りを確認。
一ヶ所だけでなく、全方向に浅く警戒。
これで良い。
加えて、魔力と氣力の扱いだ。こんなものは、元々存在しない身体を動かすようなもの。
なのだが、1から作り替えてるし、エルのサポートによりある程度意識して動かせる。
この2つは、全てにおいて重要だ。氣力を拳に集中させて殴れば、岩を砕けるし怪我もしない。
魔力を上手く扱えば、様々な現象を起こせる。
物理法則先生を困惑させるファンタジーエネルギーだ。
そしてスキル、<魔力操作><氣力操作>系統のスキルを得られれば、というかこのスキル系統がないと中級以上にはなれないとされているらしい。
俺自身も意識しつつ、エルに丸投げする。
後は採取かな。
エルの鑑定系により、薬草とか、木の実とかを探す。食べ物は旅装セットに入ってるが、多いに越したことはない。
偽装用以外はアイテムボックスに入れてある。
エル:右手の草は薬草:ヨムです。採取を推奨します。
あいよっと。旅装セットの1つ、ナイフで刈り取る。ヨムという薬草は、葉に薬効が有るので根は残す。また育つらしい。
ちなみに、思考超加速とサポート:エルにより、思考の分割は出来るため、マルチタスク可能。元々、右手で絵を描き、左手で書道出来るタイプでは有った。
並列思考スキルとかを習得出来そうだ。
ちなみに、エルの鑑定は、世界から情報を引き出すらしい。鑑定の練度により引き出せる情報レベルは限定される。
俺自身が鑑定するときも、エルに情報を取捨選択してもらわないと、思考超加速持ちの俺でも情報の洪水に沈むらしい。
ユニーク格とはいえ、ユニークとはそもそも人類の才能の到達点だ。凄いのである。
こんなに負担をかけて大丈夫なのか?
それはこうである。
エル:サポートすればするほど、能力は拡張・強化されます。現在は、処理能力にかなりの猶予が有るため、問題ありません。処理限界に近付いた場合、アナウンスします。
そう、自己進化型大天使であるエルちゃん先生は、使えば使うほど処理能力が上がり最適化されるCPUなのだ!
しかもその処理能力はスパコンにも引けを取らないらしいぞ!
何時の時代のスパコンかは明言しないけど。
そんなこんなで、ブーツのお陰で割りと楽に草原や森を突っ切りつつ、町へと急ぐ。
安全な場所へ出してくれるという神の言葉は正しかった。ファンタジーらしく、色々疑ってたよ、すまない神よ。
──エル:マスター、敵性生物:モンスターを索敵に捉えました。
さて、ファンタジーらしくなってきたな。
モンスターとかを操り出すと、ますます別のマスターっぽくなる。
手持ちに連れていけるのは、6匹じゃ足りない!
ボックスごと持っていこうぜ!