第67話:はじめてのよるをへて──比喩である
14日目:交易都市ハラスラ:火蜂の宿、客室
……。
おおう。起きたら目の前に美少女が居るというのは良いね。
ロリよりの身長だから、抱き枕にピッタリである。
んー?
なんだろう、なんか、気分が、違う?
何時もより、スッキリと目覚められた気分だ。
体内の悪い気のようなものが抜けた感じ。
悪くない。
…………!?
なんだこの耐性!?
エルー!?
エル:<ドレイン耐性>を獲得しています。個体名:ユニによるものです。
ステータスも上がってる。
上がりにくかった生命力値まで上昇してるだと?
それに<苦痛耐性>?
なんで俺がこれを持ってるんだ?
レベル1なら分かるが……レベルMAX。
これは、ユニの耐性だ。
エル:未確定ですが、魂の絆を紡いだ相手のスキル・耐性を一部ダウンロード出来るようです。
なぬ?
つまり、配下を増やせば増やすほど、あの莫大なスキル欄が更に増えるので?
エル:未確定です。また、マスターが配下を作る可能性も高くはないと判断できます。
そりゃな。
俺の<人間ヲ嫌ウ者>の判定は激辛だ。
条件だって、難しいし。
その分の、見返りか?
<苦痛耐性>は、欲しかった耐性だ。
今までのユニの環境がわかっちまうけど、それは俺が変えれば良いだけだ。
問題はドレインだ。
そして、ユニに生えてる<サキュバスの因子>。
<全種族特性保有:因子覚醒>による、因子覚醒か。
サキュバスってのは、種族:人間としてのと、種族:魔物としてのがある。
人間サキュバスは美人。
魔物サキュバスは醜悪な容姿だが、騙すことで虜にする。
と大雑把に分けられる。
その人間サキュバスの方だな。
ユニの種族特性は、あくまでも、ジョブに就ける人間種族だしな。
俺の種族はそもそも頭おかしいけれど。
ユニのサラサラした髪を撫で、かわいい寝顔を鑑賞しつつ、更に肉体の生理反応を問題ないか確認しながら、スキルの説明を読む。
エクストラスキル
<サキュバスの因子>
個体名:ユニが魂から望んだネガイによって解放された因子。
サキュバス系種族の持つスキルが使用可能となる。
複数のスキルの上位スキルでもある。
<ドレイン>
本来の意味合いは流出・放出させるというものだが、創造神の設定により吸収という意味合いを併せ持つ。
対象──生物、非生物問わず──からエナジーを放出させ、吸収する。
熟練により、干渉放出量・速度、吸収量・速度が上昇する。
エナジーには、生命力、体力、魔力、氣力、精力等々が含まれる。
接触によるドレインが望ましいが、非接触でも可能。
距離による減衰は大きく、密着すればするほどに効果は増す。
<色事>
ノクタン的な能力。
本能的にどうすれば良いかが分かる。
色気、色香の上昇(上位者:レッドにより隠蔽・不活性化済み)
誘惑効果上昇。
性技効果上昇。
<精神魔術>
精神に影響を与える魔術。
<ドレイン><色事>とのシナジー効果有り。
<サキュバスの肉体形質>
サキュバス系種族の肉体的特徴の獲得。
後述するモードとの関わりがある。
老化スピードの激減。
成長という意味合いでは、むしろ加速する。
軽微な再生力を持ち、肉体が保全される。
舌が少し長くなる。
妖艶な角。尻尾の獲得。
尻尾の先端はハート型で、ある程度動かせる。
普段は、発現していない。
<因子覚醒:サキュバスモード>
より強く覚醒させるモード。
主に2つのモードがある。
<対敵モード>
角と尻尾が生え、精神力が強化され、敵に対する攻撃力がマシマシになる。
主に<ドレイン>スキルの強化。
<対レッド様モード>
ユニの、ご奉仕したいというネガイが形になったモード。
<性技>スキルの強化。
<ドレイン>スキルの特殊効果。
うわぁ。
ユニークスキルから生まれた、エクストラスキル。
すげー強いな。
エクストラ格でも、かなりの上位だぞ。
<精神魔術>は後で習うとしても、<ドレイン>か。
このモードで俺が食らったわけか。
え……。
エルさん!?
一線は! 一線は越えたんですか!?
エル:……no。所謂一線は越えていません。個体名:ユニはご奉仕しただけです。
そうか。
良かった……のか?
わからん。この領域に関しては。
それで、後処理は……それもドレインしたのか。
エル:ドレインにより、ユニのポテンシャルが上昇しています。また、マスターの体内に生じる穢れにも似た歪みをドレイン出来るため、継続的なドレインを推奨……推奨します。
歪み……。
ああ、生きている限り生じるものか。
<錬金術>とかである程度矯正しても、生まれるけど、ドレイン出来るのか。
この辺、特殊な呼吸法とかでどうにかならないかなー。
その、悪い気でユニの体調は?
エル:前述通り、むしろ好調です。マスターに限り、浄化に近い作用が有るようです。これは、マスターの特性にも関連します。
好調になるなら良いか。
明らかに血色いいしな。
転生にも近い改造を加えたから、ガリガリからは脱したけど、それ以上にツヤツヤしている。
<ドレイン>凄いな。
「……ん。レッドしゃま。おはようございます」
「おはよう、ユニ。良く眠れたか?」
「はい。ぐっすり眠れました!」
「そうか。それは良かった。少ししたら、朝御飯を頼もう。お風呂に入るか?」
「はい! 朝に入っていいんですか?」
「ああ、大丈夫だ。ユニ、お風呂に備え付けの鏡で、身体の変化を確認するといい」
「あっ、そうですね! 凄く良く見えます。聞こえます。動けます。レッド様、本当にありがとうございます!」
「どういたしまして。俺がしたいからしたけど、ユニが喜んでくれるなら良かったよ」
「勿論です」
「よし、お風呂に行こうか。お風呂に入って、ご飯食べたら、これからのことを相談しよう」
「はい! ってレッド様! ユニは歩けます!」
「気にするな。俺が連れていきたいだけだからな」
「もう……レッド様ぁ」
うん。元気なようだな。
なんか色々、寝ている間に有ったようだけど。
特に問題はないと見て良いか。
ん?
その服欲しいの?
良いよ、パジャマがわりにするといい。
さて、身体の洗い方から教えないとな。




