第64話:世界に捨てられし混ざり者──比喩に非ず
短いです。
この作品は、あらゆる犯罪行為を推奨するものでは有りません。
あらゆる差別行為を助長することは有りません。
あしからず。
13日目:交易都市ハラスラ:闇の奴隷市
視点:闇市の奴隷商
交易都市ハラスラの裏の顔。
深い闇に潜む、財力と権力と暴力。
ここは、その1つの闇ギルドの傘下の下っぱだ。
表の奴隷市では売れなくなった中古品や、廃棄品。
表には出せない、違法ものや裏ものを売り捌く店。
ここでは何も起きなかった、とある者はうっかり金を無くし、とある者はうっかりゴミを拾ってしまう、そういう名目の場所だ。
衛兵や、都市上層部と話はついてるが、危険であることに変わりはない。
だが、どっぷり闇に浸かっちまった俺にゃあお似合いよ。
<奴隷術>持ちの犯罪者。
それもレベルの低い、な。
俺が担当する店は、訳ありの中でも、まだマシな方だ。
売れなくなった中古や、壊れた欠損奴隷が主。
来るのも、安い奴隷か、使い捨て奴隷、そして変態趣味の方々だけってね。
今入ってきたのは……やけに地味だな。
青い髪に、仮面か。よく有る格好だな。
檻に入れられ、首輪を鎖に繋がれた商品を見回してく。
……? 随分変なのに気を向けるな。
確かに、とびきりの売れ残り。恐ろしく気味の悪い種族だが。
「店主、アレは、なんだ?」
「スミマセンね。こちらには分かりかねます」
「わから、ない? だと」
「へぇ。見た通り、小人みたいな小せぇ身長に加えて、左右で色の違う目。
エルフのように長い耳に、獣人のように生えた頭頂部の耳。
しかも、山羊のような角まで生えてたようで」
「角……?」
「へぇ。額の横辺りに有る跡。
ありゃ角が生えてたそうで。
前の持ち主が折っちまったそうです」
「それは、耳もか?」
「へぇ。左のエルフ耳と、右の獣耳も。
どうも、前の持ち主に嫌われちまったようで。
ドワーフのように足は遅く、かと思えば手先は不器用。
腕や足は痩せて細っこいのに、胸だけはぶくぶく膨れて。
物覚えもわりぃときたもんで」
「それで、値段が格段に低いのか。
わざわざマイナスなことも説明してくれるし」
「へぃ。お値段は完全な捨て値です。
そこまで食わんでも動くんですが、やっぱり売れないもので。
どうしますか旦那。
どんな種族かも分からんし、気味が悪いってんで、一応未通のままですが」
「ふん……。
まぁいい。格安の使い捨てが欲しかったところだ。
買うとしよう」
「へぃ! 毎度有り!」
おお!
また売りに出されるかも知れねぇが、1回は売れたぜ。
ノルマもこなせるし、有りがたいこったぜ。
いやー、気味が悪いのなんのってな。
あんな生物、流石に棄てるわけにも行かなかったけど捌けて良かった。
「ああそうだ。今は貫頭衣を着ているが、マシな服は有るか?
これを使って用意してくれ。
残りは持っていくが良い」
おお!?
良いねぇ旦那。
「へぃ。用意させて頂きやす」
合わせても他の奴隷の金額にもならないが、俺の懐に少しは入ってくるな。
これでまた、アレが食える。
「おい! 6番! 出てこい! 新しいご主人様だ。せいぜい媚を売りな!」
つっても、あんま耳も良くねぇんだよな。
エルフと獣みてぇな耳してるくせに。
変な色の目ェしてるくせに、目も良いとはいえねぇし。
ちっ、おせぇんだよ。
さっさと動け。売れたんだから、殴るわけにゃあいかないしな。
アレを買うより、娼館の方がいいかね。
殴ってスカッとしてぇな。
金も入ったし。
貫頭衣よりはマシなワンピースを着せつつ。
「へぃ。旦那。俺が契約致しますんで」
「ああ」
レベルは低くとも<奴隷術>の契約ぐらいは出来る。
契約内容はプロット通りしか出来ねぇが、完全服従だ。
ここはみんなそうだしな。
<奴隷術>を6番にかけ、マスター変更っと。
「では旦那。血を一滴」
「ああ。ここにつければ良いんだな?」
奴隷服が貫頭衣なのは、奴隷印を表示させるときに、捲りやすいからだ。
大抵は背中に表示させて、契約の仲立ちをさせる。
旦那がさっと血をつけ。
「へぃ。これで完了でごぜぇます。
後は旦那の手で、この首輪を」
首輪がねぇと、問題になりやすいからな。
「ふむ。小汚ないな」
「すいやせん。あまり水を浴びさせていないもので」
「いやいい。安いからな」
無骨な首輪を旦那が締める。
「ありゃーとやんした」
「ではな。……行くぞ」
足が遅いと行ったからか、抱えていく。
小柄とはいえ、よくあんなのを抱えられんなー。
俺なら金もらっても嫌だね。
っと。
「アイツをくれ」
「へぃ。毎度有り」
今回は中々入りが良いねぇ!




