第63話:奴隷市──現代日本で育った奴等はどういう気持ちで奴隷を買うのか
13日目:交易都市ハラスラ:奴隷市
本日は奴隷市。
ここで、奴隷についてざっと出すのは規定路線である。
奴隷には、幾つか種類が有る。
大体のファンタジー作品と似たようなものだ。
まずは借金奴隷。
金がない、だな。
また、寒村の身売りも含まれる。
借金奴隷には、無理なことは出来ない。
衣食住の保障が必要になるし、業務以外の事を強要できない。
普通の丁稚奉公よりも、自由は少ないが、まぁマシだろう。
必ずしも良いところに貰われるとは限らないのが、お約束。
次は犯罪奴隷。
犯罪を犯しました。以上。
という訳もなく。
軽犯罪と重犯罪で別れるが、この奴隷には、かなり何でも出来る。
犯罪者の人権?
生きてるだけマシだろなに言ってんの?
である。
人権言うならお前が買えや、である。
勿論、解放は禁止だ。
軽犯罪なら、ある程度の期間で解放されるが、重犯罪者はダメー。
人権運動した人が最終的に奴隷に殺されるのはよく有る話。
大体はみんな大好き鉱山と娼館だな。
また、冒険者が使い捨てとして買っていくことも。
たまーに、異世界勇者が、「僕が彼らを改心させて見せる!」とか。
「彼らは冤罪だ! 助けて見せる!」とかね。
この辺は、運命補正が働く不思議だ。
そして、戦争奴隷。
この世界:イリガルドでは、ふつーに戦争がある。
前世のアースであった経済戦争とかではなく、武力戦争だ。
何人間同士で争ってるの! 魔物がいるのよ!
うるせぇ! テメーらなんて宗教の違いで殺し合うだろうが!
権力で殺し合うよりマシよ!
はい、不毛。
そんなわけで、戦争の捕虜が奴隷です。
ここにも貴族フラグ!
また、魔物による侵攻で、身を持ち崩した人達が、大抵は借金奴隷なんだけど、戦争奴隷になることもある。
最後に違法奴隷。
違法だよ? 闇では出回るけど。
1度人の手に渡り、戻されたら見分けつかないけどな。
奴隷には、<契約>なり、<奴隷術>なりで魂に契約を施すことで、奴隷とする。
首輪とかは、外から分かりやすくするためだ。
他者の奴隷に危害を加える、加えられることのないよう。
命令の受信機・増幅器でもあるが。
この奴隷業は、資格制だ。
そう、そこのあなた。
そうです。抜け道一杯有ります。
資格のない<奴隷術>保持者は大体犯罪者か、エライ人の私兵である。
さて、午前は奴隷の見せ、と売り出しだ。
見せは、午後のオークションで行われる奴隷達の下見せだ。
オークションに出すほどでもない、つまりは価値のない奴隷達は、ここで売られる。
鑑定協会の鑑定書付き奴隷は高いが、信頼性が高く人気がある。
そして、異種族も多いな。
この国:ヤエコーマ王国は他種族への迫害はないが、他の国にはよく有るし。
ここ、交易都市ハラスラは他国からの輸入品もかなりの割合を占める。
いわゆる、獣人ってのも多種多様だな。
犬系1つとっても。
犬・狼系があり。
犬耳、犬尻尾だけの場合。
顔が犬、犬頭の場合。
身体全体が獣よりで、直立した犬という場合。
ちなみに、彼ら犬系獣人に『やーいコボルトー』と言ったら殺し合いを覚悟しよう。
だけど、強い魔物に例えると、喜ぶ場合が有る不思議。
アレか。
やーい、猿ーとか言えばキレるけど。
ボディービルダーに、ゴリラみたいな筋肉だな! みたいな?
魔物との違いは、ジョブに就けるか、魔石の有無、そして言語が共通語:日本語であるかどうかだ。
まぁ、世界で最も繁殖している人族に迫害されやすいがな。
数で負けるし、人族の悪辣さは凄いもの。
確か、異世界から勇者が来る度に迫害が弱まるんだよな。
勇者からの好感度を上げるため。
特に、7代目の勇者。自称ケモナーサークルで御座る。は特に異種族の保護に熱心だったとか。
この自称は、最初に勇者が言った言葉が今でも残っているのだ。
最初の言葉は考えろ。
おー、エルフも居るな。
ドワーフや、あれは……ハーフリング。小人ってやつか。
ダークエルフに、あれはリザードマン?
爬虫類系だな。魔物と区別が付きづらいので注意。
あっちは鱗が所々くっついてる種も居るな。
だが、やはり人間──人族の方が割合が多い。
そして、やっぱり異種族でも<人間ヲ嫌ウ者>が効果を発揮する。
前に他の町で見掛けたときからわかっちゃいたが、やっぱり残念だ。
オークションも軽く覗いていくが……。
『さぁ! お次はギャンブルで身を持ち崩した麗しき元Bランク冒険者!
ギャンブル癖を封じれば、その戦闘力と美貌は文句なし!
金貨4枚からスタートォ!』
マイクに近いマジックアイテムか。
風と音の属性かな?
もしくは、<咆哮>とか、そのものずばり<拡声>スキルか……。<拡声>だった。
おーおー、値段上がってくな。
表の市だけあって、身元も鑑定もしっかりしてるしな。
Bランクなんていう、壁を超えた人材が金で手に入るんだ。合法的に。
あれは、貴族の家令か何かかね。
良い値で買い取られたようだが、ギャンブル狂いに払われる金額など些少。
これからの働きで借金は減っていくのだろうが……飼殺しにされそうだな。
残念ながら、目当ては居なかった。
ではまた夜に、東区画へと赴くか。
──闇の奴隷市
──より雑多で、人の命など価値のない場所
──蚤の市よりも悪辣な会場
──そこに、<超直感・観>でも、<幸運>でもない
──俺自身の勘が、叫ぶ
──そこに、居ると
エル:何がいるのですか?
カッコつけてるんだからマジで止めてよー!
くっ、締まらねぇ!
次回、ヒロイン……出せるかなぁ?




