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第60話:蚤の市・鑑定・幸運──つまりフラグは立っている。

 

 12日目:交易都市ハラスラ:火蜂の宿



 うむ。ベッドが良いとグッスリと眠れるな。


 別途料金制の食堂も、とても美味しゅうございました。

 全力で感知して、料理人たちの技術や、食材の選び方をラーニングした。


 そして、この宿自慢の一杯。

 蜂蜜の火酒。

 宿名通りの、この酒。

 うむ。上手い。


 酔うことはないが、味としては最高だな。

 ミードという、蜂蜜から醸造するお酒のはずだけど、何でこんなに度数上げられるんだろうか?


 マジックアイテムかな?

 うまうま。

 出立するときに買っていくかな。

 瓶でも売ってるみたいだし。


 ちなみにこの世界:イリガルドでは、大体15才で飲んで良いんだよ。

 そもそも自己責任だよ!


 うるさい客も居なかったので、静かにbarで飲めた。

 渋いマスターも、若造とバカにすることなく、情報をくれた。

 蜂蜜から作られたお菓子も良い味してたな。

 蜂蜜も買おう。



 本日は蚤の市。

 なんでこんな都合が良いか?

<幸運>先生だからさ。

 実験的に、<レッドの腕輪>内と視界を繋ぎ、外を見せている。

 時間加速は勿論使用せず、同速度の部屋。

 イメージとしては、スペース母艦の指令室だ。


 司令官の座る位置に、モフッとフォルトゥーナさんが座っている。

 どうみても銀近似家族だ。 (あれは森の庭だが)

 可愛いので良し。


『キュッ、キュー!』


 シレイを差し置き、フォルトゥーナ司令官により、『あっちの方角』へ向かうと良いらしい。


 北地区にずらりと並んだ出店や、フリーマーケットを鑑定して歩いていく。

 途中で遭遇したスリの指を折りつつ、こっそり心も折りながら進んでいく。


 パチモンも多いなー。

 おっ。


「見せてもらってもいいかな?」


「おう兄ちゃん、がらくたに興味があるのかい?」


 言葉通り、がらくただらけだ。

 欠けた皿、底のない壺、点かない魔法ランプ、切れない刀、etc.etc.


「なにか掘り出し物がないかと思ってね」


「ガッハッハッ。ここにおいてあんのはうちの村から持ってきたがらくただらけよ。

 気に入ったのがあったら売ってやるよ。

 俺ァ蚤の市に毎回来ててな。

 売れなくても来んのよ」


 少し小汚ないおっさんと会話しつつ、じっくりと<鑑定>する。

 特に、『キュー! キュー!』と、マントと眼帯を着けた兎がウサミミをフリフリはしゃいでいる。


 おっさん、娼館の話とかどうでもいいから。

 何処が良いとか……ほうほう、人外っ娘専門娼館?

 いや、それはいい。


「それじゃ、この壺と、刀と、布で」


「兄ちゃん物好きだねー。

 よっしゃ、全部で900万エンだ」


「はい。900万エン」


「兄ちゃんノリが分かるねぇ。こういうがらくたが欲しけりゃあっちの通りも多いから行ってみな」


「ありがとうございます。荷物を宿に置いたら、また行ってみます」


 900万エンて、どこの昭和のイメージだよ。



 ──まっ、900万エンですら安いぐらいの品だがな。



 持ってきた大きな袋に入れつつ、こっそり<レッドの腕輪>に収納。


 その後も、掘り出し物を探していく。



 ──────────



 昼になったので、出店で椅子の有る所でご飯。

 祭りに近いため、高くなっているところも多いが、きちんと値段が釣り合っている所を選んで買い込んだ。


 うむ。上手いなこのハンバーガー。

 ポテトの塩分がもたらす美味さよ。


 俺の肉体は、この程度じゃ不健康にもならないしな。

<身体特殊構成>で、消化・吸収能力も相当に上がってるし。


 食べつつ、解析を続けていたエルさんが上げてきた情報を読む。


 色々掘り出し物を見付けられた。

 いやぁ、楽しいねぇ。

 ついでに折りまくったスリは7人だ。

 女だろうが、子供だろうが、俺は差別をしない!


 特にフォルトゥーナと<超直感・観>が最も反応した最初のおっさんの店で買った品は凄い。


 まずはこれ。


<薄汚れた底のない壺>


 底が抜けている壺。

 持ち主に不運をもたらす。



 と、簡単に鑑定しただけでは単なる呪いの品だ。


 だが、きっちりきちきち細部まで鑑定し、偏執的なまでに調べ尽くすと……。



<満たされぬ幸福の壺>


 ランク:ユニーク

 スキル:<幸運吸収><幸福譲渡>


<幸運>系のスキル保持者のみ、正しくその効果を発揮する壺。


 それ以外の()()では、満たされぬ幸福に掻き毟るような苦しみに襲われ、幸運は抜けるように落ちていく。


<幸運>保持者の場合、壺には敵対者の幸運を収集し、味方の運勢を上げる効果がある。

 満たされぬ幸福、それは永遠の幸福を表し、更なる幸福を呼び寄せる。


 更に、この壺の保持者が何らかの支配下に有る場合。

 そして、その支配下にあって幸福を感じている場合。

 抜けた幸福は支配者へと向かい、支配者の運命を幸福へと導く。


 満ちぬ幸福であるため、その幸福の上昇は、とどまることを知らない。


 しかしそれは、心からの幸せを保持者が感じている場合のみである。



 ユニークな品だ。二重の意味で。

 こういうアイテム類には、ランクが有るのは前述した。 (第18話だよ!)


 ノーマル。

 レア。

 エクストラ。

 ハイエスト。

 ユニーク。

 レジェンド。

 ミソロジー。

 ジェネシス。

 アルティメット。


 という分類だ。

 ユニークは下から5つめ。

 ジェネシス以上は基本的に無視できるので、上からも近い位置だ。


 ユニーク格に相応しい、とんでも能力だ。

 幸運と幸福に関わる壺であり、最初から<幸運>でないものには不運と不幸を。

<幸運>であるものには、更なる幸福を与える壺だ。


 これ、たった300エン:銅貨3枚で買える品じゃねぇぞ……。

 オークションに詳細鑑定付きで出したら、白金貨:1億エンクラスだ。


 エルさんが綺麗に磨いてくれたのだが……、材質が分からねぇ。

 ミソロジースキルとはいえ、現在ユニーク格のエルさんが分かんない程とは……。


 エル:精進します。


 薄汚れた、というより薄く土の張られた表面を綺麗に磨くと、ガラスのような質感の壺になった。

 透けている訳ではなく、内部は見えない。

 底が抜けているため、妙な形の筒にも思えるな。



 何にせよ、これはフォルトゥーナ司令官への貢ぎ物だ。

 確実に専用装備だよ。


 フォルトゥーナ専用武器<ツェール>を洒落(シャレ)で作ってみたが、セット装備感満載だ。

 こっちはまだ、ランク:レアでしかないけど。


 もしかして、ニードル・ラッキー・ラビットの角は、豊穣の角だったりするのか……?



 とりあえずフォルトゥーナは喜んでるな。

 フォルトゥーナ位の大きさの壺なのだが、さっそく司令官の椅子に乗せて……入ってる。

 つぼうさぎ……悪くないな。



 さて、娼館好きのおっさんの所で買ったのはあと2つ。



<切れない刀>


 文字通り切れない刀。鞘付き。

 ぼろぼろに錆びている。



 これは、鍛冶スキルが今は無いため、後回しだ。

<錬金術>だけでなく、<鍛冶>関連を手に入れてからにしよう。


 これ、ランク:ユニークなんだわ。

 そう、ユニーク。

 壺よりも、ユニーク格では下位だけど、逸品であることに間違いない。 (錬金釜作ろうかな)


 それに、なーんか感じるものが有るんだよなぁ。この刀、そして鞘。

 とりあえずは収納しとこう。

 指を噛みきって、血をペタッと付けといた。

 破傷風を避けるために、清潔にしてから回復っと。



<ぼろに見える布>


 小汚なく見える布。



 うむ。その名の通り、埃被っててきちゃない。

 これは、衣装箱のようなケースを開けたら出てきた、結構な長さの布だ。

 単位は一反 (もめん)だっけか。


 数人分の衣装を作れるだけは有る。

 勿論、これも良い品だ。



適応進化(グローイング・)蜘蛛(アラクネ)の再生布>


 ランク:ハイエスト

 スキル:<魔素再生><適応進化><容易加工>


 適応進化蜘蛛という、特殊な蜘蛛型魔物の糸を織って作られた布。

 作成されてから相当の年月が経つが、その性質のため劣化することなく、むしろ微成長を続けランク:エクストラ→ハイエストへとランクアップした。


 装備者にフィッティングする能力を持ち、服に作り替えられた後も、スキルや耐性を獲得することがある。



 凄いな。

 ユニークが立て続けに2個でたけど、ハイエストも凄いんだこれ。


 Aランク冒険者や、Sランク冒険者下位といった、英雄一歩手前の、超人(ちょうじん)間近(まぢか)な存在が使うランクだ。


 低位~中位貴族も、この辺を装備してたりする。

 そもそも、適応進化蜘蛛ってのも、激レア種だ。

 過去に存在している、災害級で魔王と呼ばれる迄に到った種の1つで、成長性が恐ろしかったのだとか。


 その代の勇者達が、かなりの人・物的損耗と、勇者2人の死亡を以てしても、なんとか()()するのが精一杯な魔王だったのだとか。

 冒険者ギルドの資料室や、本屋で売ってた寓話・童話にも載ってた。


 醜悪な蜘蛛の化け物に挑む、勇者達の冒険と伝説。

 仲間が死んでもなお、人類のために命を懸けて封印した勇者の伝説。


 まぁ、勇者なにやられてんだよ。とか、そもそもやられれば良かったのにー。

 とかが俺の感想だ。

 この布は、そんな超次元的な存在の蜘蛛ではなく、同種の蜘蛛が作り出した糸から織られた布だ。


 魔王の封印のあと、極めて危険視された適応進化蜘蛛さんは、禁忌指定され発見しだい駆逐される。

 勿体ないねー。

 良い布なのに。


 エルさんがきちんと処理してくれたので、綺麗な布になっている。


<容易加工>スキルで、加工しやすいし、後で試してみるか。

<容易加工>は、加工こそしやすいが、加工が完了すると、むしろ干渉しづらくなると言う利点も有る。


<魔素再生>で、自動で直るし、魔力で修復を早めることも出来る。

 凄いな、これ。

 魔力で色合いも変えられるみたいだ。



 情報を読み終わり、また掘り出し物を探しに行く。

 ランク:レアや、ランク:エクストラも時折見付かる。

 アクセサリー類も結構あるし、地方の特産物らしき調味料も有る。


 なにこれ?

 あっ、バニラか!

 天然香料かー。良いね、買った。


 これは?

 染料?

 ほうほう、マジックアイテムの染料か。

 艶消しで隠密行動出来るし、物によっては耐性も付けられるのか。

 永続と一時的が有ると……。


 ふむふむ。悪くないな。

 買った。


 ……


 …………


 ………………



 ………………………………………………………………………………………………………………………………ハッ!?


 めっちゃ買い物してるッ!?


 ついでにスリ捕まえて衛兵突き出したりしてたら、小金も入って、調子にのってやり過ぎたぜ……。


 悪目立ちはしてないけど、普通に上客だな俺よ。

 だけど沢山掘り出し物を見付けた。


 これは[生産]が捗るなー。


『キュー』


 つぼうさぎ状態のフォルトゥーナ司令官がそろそろ帰ろうと言うので、戻るとしよう。


<直感>もそう言っている。

 夜になったら、また出るか。




うさぎさんとレッド君はめっちゃはしゃいでます。


浮かれたように見えるレッド君に手を出そうとしたスリ達はことごとく折られました。


次回は東区画の闇市です。

つまりまたアイテム回です。

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