第59話:交易都市ハラスラ編突入──いきなり外伝にはならない
紛うことなきネタタイトルです。
後に変える可能性が有ります。
11日目:交易都市ハラスラ
「次の方」
「お願いします」
「冒険者の方ですね。こちらの水晶に手を」
「分かりました」
「……はい、ありがとうございました。ハラスラへようこそ──次の方」
交易都市というだけあって、人の出入りが多いな。
今は昼過ぎなんだが、商人らしき馬車が多い。
冒険者はギルドの方から税金が入るし、冒険者ギルドに嫌われても困るので、出入りは簡略化されている。
商人の方も、ある程度の検閲でスルーできる。
その代わり、都市内部では衛兵が厳しく取り締まっている。
交易を活性化させるために、扉は大きく開く。
だが、中でコトを起こそうとすれば、容赦はしない。と言うわけだ。
実際は、闇と上層部がくっついてそうだがな。
ここは交易の都市。
金がモノを言う場所でも有り、裏では暴力の支配する都市でもある。
表はかなり綺麗にしてるがな。
定番になってきたネズミを放ち、新たな偵察従魔も一緒に放つ。
【ステータス】
個体名:───
年齢:0
性別:男/女
種族:魔猫(猫種)
レベル:1
ランク:2
【ステータス】
個体名:───
年齢:0
性別:男/女
種族:魔犬(犬種)
レベル:1
ランク:2
魔猫は猫そのままだ。
魔犬は、コボルトの犬要素をこねこねしつつ、実際に野犬を検体にすることで出来た。
どちらもランク2下位で、ペットとしても飼われるし、町中に居てもおかしくない。
ネズミとかはめっちゃ居るしな。
そもそも普通の猫・犬に偽装してるけど。
猫と魔猫の違いなんざ、魔石の有無くらいだ。
余談だが、犬種って、そのままけんしゅに見える。
閑話休題
冒険者ギルドへと向かい、討伐証明部位や、ご依頼の品を納品しておく。
暇そうな受付嬢をスルーし、仕事の出来そうな受け付け男に話を聞く。
何故かって? <直感>が働いたからさ。
入都市する前に、フォルトゥーナは腕輪に送ったから兎の勘は無いが、テンプレの予感と、<直感>先生が、止めとけ! フリじゃないぞ! と言ったので、スルー。
「やぁ、今日も君は麗しいね。そんな君に、この花束を送ろう。
リラックス出来る香りの花が入荷していたんだ。
貰ってくれたまえ」
「はぁ、ありがとうございます。サウランさん。
依頼のご報告ですか?」
「いやなに。
君に似合うであろう花を見付けてしまったからね。
プレゼントに寄ったまで、さ!」
はい。フラグ回収。
これはスルーした受付嬢に、勘違いキザ野郎がナンパしている図である。
いちいち挙動が派手で、尚且つウザイ。
ありがとう、<直感>先生。
隣で行われる喜劇を努めて無視し、こちらに興味が来ないように、メガネな伊達男の受け付けに話を聞いていく。
……ん?
こちらを注目している女性冒険者が多いな。
やけに息が荒いが……この受け付け男のファンだろうか。
邪魔にはなってないし、このまま続行だ。
<直感>も、特に訴えてこないし。
───
『ねぇねぇ、あっち見て』
『何よ……うわ、またサウランがやってるよ。キモがられてるってまだ気付かないのかしら』
『そっちじゃないわよ! そんなバカはほっといてあっちよあっち』
『……あら? エザリ様と、赤髪の冒険者? 初めて見るわね』
『ねぇねぇ、あの雰囲気、怪しくない?』
『……そうね。普段表情を崩さないエザリ様も、少し微笑んでるし、私たちよりも距離が近いわ』
『最初は地味に感じたけど、赤い子も顔立ち綺麗だし。貴女はどっち?』
『そんなもの、エザリ様が攻撃手でしょうよ』
『えー? あの赤い子が腕力に任せてってのも──』
───
なんだ、<直感>先生は何も言ってないのに、背筋がゾクゾクする。
「蚤の市は、明日行われます。北のこの地区で主に行われますが、東のこの地区でも行われます。
ですが、こちらは推奨できません」
何故か光っているように感じるメガネは、
「こちらは治安の良くない地区です。
問題も多く、衛兵も強く出れません」
と言う。
メガネ、この世界でも流通している。
とはいえ、そこそこの値段がするものだ。
めっさ似合ってるなこの人。
「では、行くなら北に限定した方が安全ですね」
「そうなされた方が宜しいでしょう」
行かないとは言ってない。
「高めの宿でもよく、治安とサービスが良い宿なら、ここ、西区画の火蜂の宿、もしくは白鴎亭が宜しいでしょう」
ふむ。2つか……。
白鴎亭……は止めとこう、微妙に嫌な予感がする。
「では火蜂の宿に行ってみようと思います。ありがとうございました」
「いえ。またのお越しをお待ちしております」
何故あの女性冒険者達はため息を付いているんだ……?
気にせずギルドを出る。
──────────
うむうむ、MAPが埋まっていくが、広い都市だけあってなかなか進まないな。
航空による都市内データは大分揃っているが、内部からのデータは重要だ。
第一、地下がある気がするんだよなぁ。
この感じだと。
もぐらさんじゃあ無理だし、魔術も対策されてそう。
今回は止めておくか。
とりあえず、脳内メモ帳に記録して……と。
ふむふむ、交易都市だけあって、さまざまな食材や調味料、香辛料が有るな。
鑑定と話術を駆使して値引き交渉しつつ、情報を引き出していく。
ここでは、チップも有るが、値切るのが当然の場所みたいだな。
あっちでお上りさんがボラれてた。
おっ、味噌だ。
関西圏の味噌に似てるかな。
米とか醤油とか、普通にあるんだよな。この世界。
流石は創造神様やで。
明らかに日本由来のものも買い求めつつ、普通に行われている市場を通っていく。
こういう食品買っても、転移者とか転生者とかは全くバレる心配ないな。
みんな買ってるし。
──────────
「いらっしゃいませ。火蜂の宿へようこそ」
ふむ。エントランスも広く、掃除も行き届いている。
酒場ではなく、barだな、ありゃ。
食堂も有り、中々に拡張高い。
ドレスコードは設定されてないが、品のない者には辛かろう。
……品のない奴はそもそも気にしないか。
大きな風呂と、個人風呂も有り、サービス良し。
それだけの料金はかかるが、その分の接客ではある。
「ギルドのエザリさんから、ここを紹介されました。
冒険者のレッドと言います」
「カードを確認致しました。お返しいたします。
こちらが料金表になります。
何泊ご利用になられますか?」
うむ。
中々のお値段だ。
食事別でこの値段だが、その分の価値は有ろう。
明日の蚤の市。
明後日には奴隷市だ。
今日を含めて、まずは4日分かな。
1日は予備日だ。
奴隷市のあと、裏で闇市が行われることも聞いたしな。
「では4日分お預かり致しました。
彼がご案内致します」
「案内させて頂きます。お荷物はございますか?」
「ではこれをお願いします」
荷物運びの……丁稚とかいう存在かな?
それともベルボーイかな?
日本人的に遠慮するのはダメだと聞いたことがある。日本人気分ではないけれど。
冒険者として、大切な装備ではなく、偽装用の荷物を預ける。
先程、コンシェルジュにチップをこっそり渡したが、マジックみたいに隠したよ。すげぇ。
「こちらのお部屋になります。御用が御座いましたら、備え付けのベルを鳴らして、どうぞお申し付け下さい」
「ああ。ありがとね」
荷物を受けとる代わりに、手のひらにそっと銅貨を握らせる。
コンシェルジュには大銅貨。この辺の差別化は必要だろう。
とはいえ、ここは中々の宿だ。
ちょくちょくチップを払った方が良いだろうな。
「では失礼致します」
当社比2,5倍程、良くなった動きでお辞儀をし、去っていく。
うむ。部屋の内装も良い。
あっ、このベッドやソファーの品質を調べておこう。
さて、夕食まで時間が有る。
生産の許可は取ったし、この部屋は防音だ。
とはいえ、静かに、荒らさず、じゃんじゃか作るとしよう。
尊敬語、謙譲語、丁寧語は習っていますが殆ど忘れていますので適当です。
部屋備え付けのベルは、簡易的なマジックアイテムです。
対になったベルが鳴ります。
効果距離が極めて短いので、モールス信号とかで現代知識チートじゃー!
とかは無理です。
チリンチリン鳴るだけです。




