第58話:中々魔物が豊富になってきたぞ──交易都市は?
11日目:交易都市ハラスラまでの草原地帯
見通しが良いため、色々と見付かる。
隠れていたコボルトを敢えて嗅覚攻めをやめる。
解体めんどくさかったよ。そうくさかったの。
なので、<風属性魔術><音響爆弾>で聴覚破壊。
あれ? 気絶してる。
雷を追加して、フラッシュバンにしたからかな。
魔物なのに、軟弱だぞ?
スタグレさんが実は非殺傷とは名ばかりの威力とはいえ。
フォルトゥーナさんが、舵輪型投擲・殴打武器<ツェール>で倒れたコボルトに止めを刺す。
新しく作ってみた、フォルトゥーナ専用武器だ。
<ツェール>
ランク:レア
スキル:<思念誘導><運命砕き>
舵輪のような形をした、投擲・殴打武器。
個体名:レッドが、個体名:フォルトゥーナの為だけに作り出したマジックアイテム。
地属性魔術による鉱石と、木属性魔術による木材。
そしてフォルトゥーナの体毛と生え代わりで抜けた角を用いて、錬金術により作成された。
フォルトゥーナの魔力を用い<変異誘発>が仕事をして、スキルが付いた。
<思念誘導>はいい。
これは俺が武器によく付ける奴だ。
フォルトゥーナ由来の素材を使い、魔力も練り込んだので、<投擲>しても戻ってくる仕様だ。
カーブも出来る。
問題は<運命砕き>だ。
マジかよ……。
女神のいい感じの名前を付けた可愛いうさぎさんなので、それにちなんで武器を作ったらこれだぞ?
<運命砕き>
舵輪がぶつかった相手の運命を砕き、不運にさせる。
行動失敗率上昇。
回避率ダウン。耐性ダウン。状態異常確率上昇。
持ち主の不運な運命さえも、砕いて進む。
相手へのバッドステータスは良いんだ。
この能力は有用だ。
だけど、自分の不運すら砕くって、凄いな。
もしかして俺は、球体と靴と壺まで作らないといけないのだろうか。
あっ、ちなみに舵輪の大きさはフォルトゥーナより少し大きいサイズだ。
それを投擲する光景の不思議さよ……。
使わないときは、俺が収納している。
使うときは、フリスビーのようにフォルトゥーナに投げる。
戦わなくても投げる。
フォルトゥーナは楽しい。
可愛いので俺も楽しい。
くいしんぼ兎さんに連れられて、食材を集めつつ、食用の魔物も狩っていく。
凄いよな、一度も引き返してない。
ルートはきっちり交易都市ハラスラ方面だ。
しかし、使える素材多いもんだなー。
魔素なんてものがある世界だから、素材も更に多種多様だし。
エル:壁の外は死に繋がる世界です。例え食用の素材を見付けても、持ち帰る量、換金時の金額等を鑑みるため、普遍的な素材は残りやすいものと思われます。
俺みたいに便利なアイテムボックスなんて、流通どころか国宝だからなー。
もっと簡易なアイテムボックスでも、数が少なく出回らないし。
空間属性とか、収納スキル持ちも激レアさんだし。
空間属性……欲しいなー。
俺が出来るの<レッドカード>にくっついてる緊急転移位だし。
解析かなり難しいからなー。
エル:精進します。
エルさんはめっちゃ頑張ってるよ。無理してない?
エル:限界までは遠いです。まだ大丈夫です。
うむ。無理する前に言えよ?
エル:マスターの無理も非推奨です。
はい! すみません!
『キュ!』
『すみません! じゃなかった。おっ、あれは』
首を下に伸ばし、草を食んでいる。
強靭な脚の筋肉。固そうな蹄。
縦長な顔。
馬面だ。
というか馬だ。
【ステータス】
個体名:───
性別:男/女
種族:グラスランド・ホース(馬種)
レベル:21~50
ランク:3
草原の馬? 場所で変わるの?
エル:森のフォレスト・ホース、砂漠のデザート・ホース等も確認されています。
グラスランド、名前カッコいいよね。名前だけ。
横に付いた目で、広い視野を持っている。
草食動物出身だしな。
数頭の群れ。リーダーの居ない、単なる集団か。
6頭の頭上から、誘導加速させた<投擲>。
広い視野の狭い死角。
空から、音のしにくい誘導投剣を落とす。
地上から魔術込みで全力<投擲>。
最高点に到達してから、下向きに落ちていくのを、刻み込んだ術式とスキルで誘導。
真っ直ぐ加速しながら落ちてきて、グラスランド・ホースの頭蓋に突き刺さる。
ランク3や、人類のレベル50位までは、物理法則先生は強い。
心臓を潰せば、首を絶ち切れば、眼球を穿ち脳を抉れば、生命力は刈り取れる。
警戒させるまでもなく、ささっと馬たちを収納。
これで、馬車フラグが立ったぞ!(厨二脳)
ちなみに、ランク6や、レベル100を越えた辺りから、物理法則さんは勝てなくなる。
やべー、首切られちゃったよ。一瞬で付け直して回復したから平気だけど。とか。
心臓吹っ飛ばされたわー、全身の筋肉で血液回しながら戦って再生させたけど。とか。
コイツら頭おかしい。
だが、頭おかしい奴等こそ、狙いだ。
作戦たてて、地力を付けなければ。
「キュー(お腹すいた)」
「そろそろ昼だな。色んな肉あるし、食べ比べするか?」
「キュー!(わーい)」
うむ。
兎なのに、完全に肉食である。
魔物の馬や牛も、肉と言うか、人食うしな。
ストレスに弱いどころか、スピード出すの好きな兎さんだ。
めっちゃ楽しみまくってるよこの子。
──────────
フォルトゥーナのご要望通り、お肉の取り合わせ。
生食出来る部分の取り合わせと、いい感じの焼き加減の取り合わせ。
生食イケる?
あっ、イケるんですか……。
ちゃんと<回復魔術>と<料理>で、細菌処理はしとくけど、気を付けるんだよ?
あっ、美味しい? それは良かった。
こっちの大根モドキのすりおろしと、レモンモドキもかけてみろ。
おいしかろー?
あれ? 可愛い 女の子にご飯作ってもらう筈なのに、俺はうさぎさんにご飯作ってる?
「キュー?」
可愛いから良いや。
ほれほれ、果物の盛り合わせだぞー?
「キュ!」
──────────
<レッドの腕輪>内で猛特訓中の魔物たちにも、料理をたっぷりと送りつつ。
フォルトゥーナの顔周りと、歯を磨いてやる。
兎マークの入ったナイフとフォークを収納し、出発。
昼食中も含めて、ゴブリンやコボルト。
猪、馬、牛、兎、鳥を刈り取りながら進む。
どうも、フォルトゥーナが<幸運>を無意識に使って食材を引き寄せてるみたいだ。
それはそれで、素材も増えるし、リソースも増えるので良いこと尽くめ。
高ランクとは遭遇しない、流石は幸運!?
『キュー!!!』
あれは!
【ステータス】
個体名:───
性別:男
種族:幸運兎(ラビット種)
レベル:82
ランク:1
角のない、単なる魔物の兎!?
ラッキー種だ!
『キュアー!』
容赦なくやれと!
よし、<投擲>!────外れた!?
エル:相手の<幸運>によるものです。フォルトゥーナを<投擲>することを推奨します。
『フォル! お前を投げるぞ。ただし、肉質が悪くならないように、キックだ!』
『キュー!』
気合いの入っている兎を狙う兎を装備。
逃げようとしている、野良幸運兎に、<投擲>!
ラビット・キック!
敵:兎の頸部に直撃! クリティカルヒット!
『流石だ! すぐに<解体>するからな!』
『キュゥゥウウウ!!!』
幸運兎が美味しい種族であることを知っている兎さんである。
今までよりも全力を以て<解体>する。
『フォルトゥーナ、これは、もっと良い設備の有るところで料理しよう。
その方が上手いぞ』
『キュ? キュー……。キュ!』
『よしよし。これはお前の獲物だからな。このお肉はお前の好きにして良いぞ』
『キュウ!』
『おっ、みんなで食って良いのか? お前は優しいなー』
『キュー♡』
くいしんぼ兎さんは、味にうるさいが、量には拘りのない、分け合う良い兎さんである。
食材は兎だが……。
兎さんを撫で撫でしながら、遠目に見えてきた。
他の町とは明らかに規模の違う、都市。
交易都市、ハラスラ。
────ここで俺は、出会うのだ────
────あの存在と────
エル:マスター、それはなんですか?
フラグ立ててたの! シー!
カッコつけたから恥ずかしいだろ!
『キュー(やれやれ)』
あっ、フォルトゥーナまで!
こうしてやる! こうしてやる!
『キュー♡♡♡』
保存しようとした瞬間、ロードが遅くなり、落ちてビビった。
保存されてて、良かった。マジで良かった。
ようやく、交易都市ハラスラに入ります。
今章の山場です。章立ててないですけど。




