第49話:ペテンの基本は真実と偽りを混ぜること──配分は<工作>にお任せコースで
本日2話目?
8日目:冒険者ギルド:個別応対室
視点:ミリロの町:冒険者ギルド受付嬢
「鑑定書を確認しました。お返しします」
最初、個別にお願いしますと言われたときは、面倒事かとも思ったけど、普通にお仕事だったかー。
少し観察してみると、この赤い髪の子、接しやすいわー。
いつも来るアホどもと違って、臭くないし、かっこいいし、話し方も落ち着いてるし、臭くないし、変な目で見てこないし、女性的な綺麗な顔つきで、威圧感無いし
、やっぱり臭くないって良いわねー。
においといえば、可愛い従魔を2羽連れてるけど、嫌な臭いは無いわね。
むしろ、良い香り、ポプリか何かかしら。
登録証も、安いのではなく、少し良いのを着けてるわね。
Fランク冒険者みたいだけど、鑑定書のスキルレベルや、買い取り記録を見ても、評価が低い。
というより追い付いてないのね。有望な新人には有ることだわ。
「ギルドカードに、新しくスキルを記載しました。ご確認ください」
「はい。確認しました」
あら速い。<速読>かー。仕事には欲しいわねー。
ラブレターには要らないわ。むしろ<解読>欲しいくらいよ。
「従魔に関しても別途記載しております」
「そちらも確認しました。それで、別の件なんですけど」
さて、スキルと従魔は片付いたわね。
あの従魔達……。凄く大人しいわね。
テイムしたばかりなのに、きちんと躾けられてるのかしら。
よほど腕が良いのね、アホどもも躾けてくれないかしら。
「盗賊……ですか」
「ええ。魔物達と相討ちになっているところを、横から罠と薬品で混乱させて討ち取りました」
スキルにも、生産系や罠系が有ったわね。
随分と幅広い。
ソロだからかしら。
こういう役割の子が1人居ると、パーティーでは助かるわよねー。
地図を用意して、場所を聞く。
「この辺りだと思います。そこまで確証はないのですが」
「確かこの辺りには、被害の大きな盗賊団が居た筈ですね。
過去の砦か何かをアジトにしていると噂されていた……、これかな。
ノーレンの盗賊団」
「それで、一応首は取ってきてあるんですけど、Fランクなので、どう評価されるかと思いまして」
ああ、そういうこと。
確かに、盗賊討伐なんてFランクがやることじゃないわね。
大体、Dランク位かしら。
それに、依頼自体も、常駐以外は殆ど受けてない。
持ち込みばかりで、その数はともかく回数は少ない。
「それに、盗賊を討伐するとなると、盗賊達の繋がりから恨まれないかどうかと考えまして」
「成る程。当面、首を確認してになりますが、レッドさんがこの盗賊を討伐したことは、ギルドで秘匿させて貰いますね?」
「はい。助かります」
それと……あら?
「レッドさん。この後、素材などを持ち込みなさいますか?」
「はい。宿に置いてある荷物を、盗賊討伐の証明と一緒に持ってくると思います」
「とすると、恐らくランクアップ可能です。
別の町ですが、アルサの町のギルドマスターのお墨付きも有るようですし、あと1つ特定の依頼を受ければDランクまで上がると思います」
ギルドマスターのお墨付きなんて凄いわね。
強さというより、将来を見込んでのものみたいだけど。
今でもかなりの強さじゃないかしら?
Dランクとも、戦えそうだし。
ん?
「特定の依頼とは何でしょうか?」
「そうですね。この場合、護衛でしょうか?
今だと……レイラークという貴族領への護衛依頼でしょうか?」
「レイラーク、ですか?」
「はい、こちらの方向にある少し遠目の貴族領で、最近隆盛している貴族領です」
護衛依頼でも、拘束時間の長い依頼だと、評価する項目が増えて、評価点も高いしね。
「そうですか……。その依頼が無くとも、Eランクには上がれますか?」
あら? 上がる気ないのかしら。
「Eランクには間違いなく上がれると思います。
Dランクも、しばらくすれば上がれると思います」
「では今回は止めておきます。目的地とは少し違う方向ですし、ランクアップに焦っているわけでもないので」
きちんと考えているのねー。
ほんと、見習って欲しいアホが一杯よ。
「分かりました。他に何か有りますか?」
「では、明日資料室を利用したいと考えていまして」
「ではそれを登録しておきますね」
「他には……。有りません、宿に戻って素材を運んできます。
長く時間を取ってしまい、すみません」
「いえいえ、受付嬢としての仕事の1つですし、構いませんよ。
本当に忙しければ、こちらから断ることも有りますから」
「そうなんですか。ですが礼儀として、ありがとうございました」
「では、どういたしまして」
本当に礼儀正しくて良いわねー。
私がお辞儀したら、胸元覗いてくるアホがどんだけ多いことか。
こんな子ばかりだと良いのに。
そんな私の願いは、ホールに戻った瞬間裏切られた。
「よぉ! シスカ! 聞いてくれよ!」
ええい! 臭いから近寄るな!
──────────
よしよし<工作>が役立ったな。
それに<意識投射>で、ところどころに説得力を持たせることも出来た。
砦から意識を逸らしつつ、実際に魔物と交戦した──ゴブリンの群れ──を荒らして置いたからな。
相手が強い盗賊で、こちらがFランク冒険者であることも不自然にならないようにしたし。
Eランクか、これ以上更に早く上げるのは、目が危ないか。
しかし、レイラーク領?
<直感>が恐ろしいほど駆け抜けたぞ。
しかも、迷宮都市に行くコースを、少し外せば行けるコース。
これ、本来なら少し寄り道コース的なアレか!?
全てが疑わしく見えてくるぜ。
なんとか時間を個室で潰すことで、あいつらがギルドから出るまで隠れられたし。
あいつら粘りすぎだ。こっちは会いたくねぇのに。
さて、宿に戻って、フォルトゥーナと氷を置いてこよう。
ギルドに再訪するときは、連れてこない方が良いと、<直感>とエルが言っている。
しかし、<愛撫>の言語以外のコミュニケーションが、身振り手振りも含まれるとは。
言語以外全てだとは知っているが、納得いかねぇ。
凄く役立ったけど、なーんか釈然としねぇ。
<工作>もそうだったけど、慣れるのかなー?
この文学的アプローチの隠れチートスキルに。
「お帰りなさいませレッド様」
「ああすいません。またギルドに荷物を持っていくので。
この子達は置いていきます。
大人しくしているので、よろしくお願いします」
「こんなに頂かなくても……、いえ分かりました。
夕食は御入り用ですか?」
「はい。出来れば部屋に、沢山持ってきてください」
「承りました。では、行ってらっしゃいませ」
動いてる男は臭いそうです。
装備品とかにも、汗の臭いがついてとれにくいとか。
せめてイケメンなら……。
そんなシスカさん27才(隠れ彼氏持ち)でした。




