第41話:コイツ、キメやがったな──覚悟を
本日、2話目?
7日目:旧砦:盗賊の根城
気配を察知しながら入り、配下の魔物達には、効果時間の長い支援・強化魔術をてんこ盛り。
良く学んでおけよ、マホ。
そして、無・風属性魔術<消音領域>を発動。
勿論、隠蔽工作をした魔術だ。
気付かれないようにな。ろくな魔術師は居ないようだが。
念には念を。<念動力>でゴミ回収ってな。
音を響かせないようにする魔術で、より気付かれにくくする。
念話が有るから、意志疎通は大丈夫だ。
フォルトゥーナが送ってきた好き好きオーラがめっちゃ嬉しい。
ゴブリン隊を、まだ潰れてる方に向かわせる。
今回の<純粋なる殺戮遊戯>の特性で、<レッドカード>のステータスダウンは軽減されて、多少力が戻っている。
その代わり、獲得できる経験値の上昇は殆どない。
幾つか、脱出できる謎解き要素を加えることでゲームを成り立たせているが、まあ良いだろう。
逃がさないことこそが大事だ。
経験値は、他の部分でも沢山増える。
さあ、成長特化の<殺戮者>を見せてやろう。
顔は見せないけどな?
──────────
うむ。ゴブリン隊や、魔鳥隊の情報を見ても上手くいっているようだ。
俺の作成した毒剤ポーション。
ゴブリン隊に持たせたのは。
<強制睡眠ポーション>
<ステータス低下ポーション>
<煙玉>
だ。効果は低いが、どれも閉鎖空間で拡がるタイプで、今回には合っている。
強制睡眠は、今も酔い潰れている奴等には良く効く。
起きている奴等も、ステータス低下による行動阻害で、動きが悪くなっている。
おっと、声も届かないよ?
起きている奴等を、しっかりと殺し。
完全に寝入っている奴等には、捕縛したあと、<精神希薄ポーション>を飲ませている。
これは飲ませるタイプの代わりに、効果はそこそこ。
ぼんやりするくらいだが、痛みにも鈍感になるから、縛りやすい。
よしよし、俺もやるかね。
幹部・頭目であろう部屋の前に、大部屋が有る。
数人居るな?
女も数人。ゴブリンへのお土産用に、残しておくかなー?
あれ、生命反応がやけに薄い?
エル:肉体・精神への過剰なショックで、所謂壊れている状態と判断できます。
あっらー。どうでも良いけど、あれゴブリン使えんのかなー?
女は2人。
男が6人。
まずは魔術とポーション。
そして、<投擲>!
なんだかんだ、<投擲>一番使ってるなー。
攻撃魔術を放ち、追撃。
それでも生きている者を<斬撃>!
切れ味と威力を上げる、スキル技:武技ってやつだな。
おっと、女どもも動くな。
顎を軽く蹴って、脳震盪で気絶させとく。
さて、1人の男は未だに寝てる猛者なので、手早くぐーるぐる。
お薬を飲ませて、女と一緒に寝かせとく。
さてさて、おっと?
警戒されてるな?
エル:<直感>系の持ち主だと判断できます。
ほうほう、あの筋肉ギルマスは、より上位の何かで確認できなかったが、<直感>は欲しいな。
エル、イケるか?
エル:現在用いられる技術でラーニングを試みます。
ラーニングって言っちゃった!
さて、浮わついた思考を片隅に。
まずは、時限式の罠を仕込んでおいてから。
ハッ、女を盾にしたところで、俺にはなんの意味もないぞ?
──────────
「扉ァ!」
はい残念。
ホラーゲームは窓からが鉄板だろ?
しかもこの窓、境界になってるから、出れないのに、俺は入れるんだぜ?
ん? この反響。やっぱり隠し通路も有ったな?
罠が発動する。
俺には煙有っても、大して関係ないし、毒など効かない。
「窓ォ!?」
アイツ、頭目だけ反応が異様に早い。
エル:<直感>の他、スキルによるものと確認。情報取得中。
アイツだけレベルも高い。
対応も早い……が。
「ぐぎゃ!」「んなばかn」
2人排除済み。
「<氣槍撃・二連>!」
「<斧撃・豪>!」
っと、速いな。
だが、魔術・氣力・ポーションで強化。
ついでに 自主改造した肉体は伊達じゃないぜ?
体術関連を用いて、いなす。
氣力と、体捌き。そして剣での受け流し。
魔術は攻撃に。
1ターン三回攻撃は無理でも、二回攻撃位なら出来るぜ?
風属性魔術で、火属性魔術を補強し、火力マシマシの新魔術。
<倒誅火葬>だ。
ついでに、地属性魔術を使って火を更に限定。
燃えな。そして、燃える時の情報を与えてくれや。
人間に何をしようと、特に気にしないが。
──それはそれとして、テメーらみたいな下衆は嫌いでな?──
まあ苦しんで死んでくれ。
しかし、頭目は強いな。
レベルは51を越えて、3つのジョブ枠持ちか?
<直感>系とかに、鑑定試すのはリスキーだったが、イケるか?
エル:鑑定可能。レベルは52。ジョブは<高速剣士><強盗賊><静狂戦士>。現在、マスターの強化度なら……!?
「禁止薬ってなァ、知ってたか仮面野郎!」
エル:危険薬剤によるブースト、及び<狂戦士>系、<限界突破>系を確認! マスター!
いや、やるぜ。エル。
エル:マスター、非推奨です!
こちらも、やるだけだ。
アイツの制限時間は短そうだ。
恐らく覚悟も薬もキメて来てるんだろう。
回避や逃避に専念すれば、自滅する。
だがな。いい機会だ。
エル、俺の成長のためだ。
いい踏み台になる。
頼むぜ!
エル:マスター。了。全力でサポートします。<極限集中>開始……!
<凌駕する唯一者>に、この殺戮の高揚感・魂の衝動を捧げる。
余計な雑念を贄となり、殺意と戦意は研ぎ澄まされる。
<氣力活性>による強化係数、安全水域を突破。
<回復魔術>による、負担の回復による戦闘継続時間延長。ただし、痛みはより増える。
<極限集中>、ゾーン発動。
<思考技術>で、全てを統括し強化。
魔術関連の強化係数、安全水域突破。
及び、服用していた強化ポーションを<薬効強化>で無理やりブースト。
メインを<剣術>と<投擲>。
エルに魔術を託し。
さあ行こうか!
限界のその先へ!
──────────
相手はおおよそDランク冒険者上位、Cランク下位の戦闘力。
それを無理やり引き上げて、今はCランク上位と言うべきだ。
こちらは、<身体特殊構成>により、ステータスやスキルを、より発揮出来る身体に。
限界の超え方も、制御しながら。
<高速剣士>らしい、速い剣戟。
強化、狂化により、威力も強い。
だが。
「ナンで、当タラネェ!」
<意識投射>による囮。
<念動力>による、一瞬の阻害。
魔術・鋼糸による妨害。
剣による捌き。
なめるなよ? いや侮ってくれた方がいいか。
こちとらまだ7日目だが、効率厨の如き成長してんだ。
無駄なスキルなんて発現させず、有用なスキルを伸ばし、武器も強化させた。
所詮踏み台だ、テメーは。
おっと、俺の武器を忘れてるぜ?
剣を避け、魔術を切り払い、罠を避ける。
だが、そこには。
<硬魔・思念投石><斬魔・思念投擲短刀><斬魔・思念棒手裏剣><斬魔・思念飛苦無>を既に投げていた。
<投擲>による結界だ!
「グッ、ガァァィ! 効クカァ!」
痛覚の鈍化か。
薬剤ブーストによる、判断力の低下も、ジョブ効果で無視できるってか。
だが、こちらのエルさんはもっとすげぇんだよ!
そして、投擲武器には、ここまで倒してきたゴブリンの魔石を組み込んでおいた。
昼に作った新作。
魔術の媒体だ。
<倒誅火葬>!
更に強化バージョン。
気づいていたかい? そこに落としておいたポーションの中身は、可燃性液体だ!
それも、持続時間の長い、悪魔の炎擬きってな。
まだまだ弱い品だが、ブーストには、充分だろう?
「ウオオオオ!!! <狂刃乱舞>ゥゥゥ!!!」
炎と投擲武器の結界を強引に突っ切り、火ダルマのまま、連撃を繰り出してくる。
「これくらいは言ってやる」
用意しておいた、魔石つきの石斧。
放つは、炎。
「<氣炎・大瀑斧>」
両手に、それぞれの手斧。
回転による、連撃の弾きと。
────怒濤の氣炎撃!────
「ギャァァァアアアアア!!!!!」
ふん。下衆にはお似合いの末路だな。
火葬なだけ、マシだろう?
きちんと、炎の向きも制御してお前だけを燃やしてやったんだから、感謝しろよ?
…………ふー。
エル:マスター! それぞれのスキルを段階的に解除してください!
OKOK。
戦闘終了を確認し、ブーストしまくったスキルを少しずつ落としていく。
代わりに、回復系を全力稼働。
レザー装備も斬られちまったな。
燃えてはいないが、被害はそこそこ。
投擲武器も幾つかダメだな。
だが、やった。
自分よりも、実力では上だったであろう相手を。
正面からぶっ潰せた。今も、反動は動けるぐらい。
反省点も有るが、中々良いんじゃないか。
エル:配下の魔物達を呼び寄せました。マスターはしばらくご休憩を。
ふー。
あいよ。
頼んだよ。
少し疲れた。
武器と、死体を回収。
簡易の結界を発動し、スキル<純粋なる殺戮遊戯>のゲームを終結。
しばらく休もう。
まだ、昼は回ってねぇ。
かなりの収穫があった。
特に、俺は人を殺すことにも、快楽は覚えねぇ。
だが、悪人を殺すことはノリで出来るし。
悪人じゃなくても殺せることもわかった。
よしよし、やってやるからな、神。
また会うのが、楽しみだからよ。
ふー───────────────
──────────
エル:マスターの睡眠を確認。回復を最優先。……もっとお役に……マスター……。
盗賊討伐、一旦終結。
アイテム、多彩なスキルにより、盗賊を一方的に殺害したレッド君ですが。
頭目だけ、かなり強かったようです。
まともに戦ったら、結構危ないです。
まともに戦わず、翻弄してました。
それでも怪我する辺り、強敵は強敵です。
所詮は踏み台程度の強敵ですがね。
ちゃんと選んでます、相手は。




