第40話:はじめてのさつがい──にんげんへん
有る意味本日1話目?
7日目:リエーナの町近辺:盗賊の根城、元砦近く。
<隠者の半仮面>を装備し、<隠密・潜伏>でこっそり近付いた。
内部の情報は、魔鳥達の聴覚が拾った声などから把握している。
魔鳥達は、可聴域こそ狭いが、感度は良いみたいだからな。
また、エルさんが反響音などで、立体的なMAPを構築している。
あっ、これ反響定位とか獲得する流れやん?
さて、話から察するに、こいつらは夜中から朝方まで宴を開催し、色々と頑張っていたみたいで。
昼を過ぎても酔い潰れているのが多い。
これ以上待つと、活動出来る盗賊が増えてしまう。
罠を張るのはこれくらいで良いかな。
『トウゾ、良く見といたか?』
『ハッ、学んでいます』
今回は、トウゾにも<罠之技術>の実演を見せつつ、罠を仕掛けた。
名前の通り、盗賊役だからな。
ゴブリン・シーフになって欲しい。
盗賊達のレベルは、ある程度把握している。
だが、頭目は強そうだ。
余りにも強ければ、即座にやめる予定だったが、これはイケるかな。
殺すことは、俺にとっての命題だ。
だが、今殺さなくてはならない訳でもなく、大切なことを履き違えてはならない。
だが、殺しても良く、問題にならず。
そしてチャンスが有るのなら、やりたいね。
俺は生き物を殺すことに抵抗はないが、人間はどうかの確認をしておきたい。
特に、神へ色々やらかしてくれちゃった奴等にはな。
実験も必要だろうな。色々と。それはもう、色々と。
『では始めるぞ。みんな、<レッドカード>は持っているな』
よしよし。ダブルチェックは大事だ。
基本的に、俺・エルでダブルなのは置いといて。
『俺が<純粋なる殺戮遊戯>で、逃げられないフィールドを作る。
お前らは、動けない奴等の殺害。鹵獲を進めろ。
死体の損壊は、殺したあとは防げ。
殺すときには頓着しない。
出来るなら生捕りだが、殺すこと前提でな』
所詮は盗賊だしな。
殺して問題の有る相手は居ない。
問題と言っても、Fランクの冒険者の俺が、と言うのもあるが、幾つか力は見せているし。
最初から力のあった冒険者で通せる。
プランは有るし、そもそも問題になるなら盗賊をやったことを出さなければ良い。
まぁまずは、殺してから考えよう。
何が有るか分からないのだから。
どれだけ準備したところで。
『魔鳥隊は撹乱。ゴブリン隊がメインでやれ。今回はアウトも入れ。
だが、アウトは知っての通り、まだ使えないからな。<レッドカード>を早々に使って良いから、少し経験を積ませろ。
フォルトゥーナの<幸運>による察知も重要視しとけ』
全員が理解している。
知能が高いって良いな。
あっ、分かってないアホが居る。エル。
エル:了。
『俺は起きている連中を殺していく。特に頭目狙いだ。
だが、予想外に強ければ逃げの一手だ。
シレイとアナは考えておけ』
『ハッ×2』
今回展開する<純粋なる殺戮遊戯>。
舞台はクローズドの旧砦。
突如襲いかかる、ゴブリンと魔鳥、そして仮面を着けた赤い髪の男。
逃げることは出来ず、全員を殺さなければならない。
1度に殺しきれなければ、一定時間で復活する。
その仕様は、ゲーム参加者にアナウンスされない。
それすらも、自分で探すのがルールである。
ランクが低いと油断するな。
赤い髪の男だけは、強さの質が違うぞ。
さぁ、パニックと殺意の宴が始まる。
2日続けて、宴を始めよう。
ここに、宴は用意した。
『<純粋なる殺戮遊戯>、発動』
隠蔽された、逃走不能空間が、旧砦:盗賊達を包み込む。
『行け、我が僕ども。宴を盛り上げてやれ』
さあて、ノリノリだぞ?
───────────
視点:盗賊の頭
「何が起こってやがる!」
オレ自身もやり過ぎて、起きたのは昼過ぎだ。
迎え酒しつつ、体調を整えて、大々的に準備を始めようとした刹那。
何かを感じ取った。
オレが今まで盗賊としてやってこれた理由の2つ、<直感>と、<盗人の嗅覚>が、危険を嗅ぎ取った。
一番広い、オレの部屋に居る幹部4人と、ブッ壊れた女が2人。
「頭! ダメだ、窓からは出られねぇ。なんかのスキルがかかってやがる!」
「扉は平気だが、静か過ぎるぞ。騒いでないどころか、気配を感じられねぇ」
くそが! 使い捨てだっつっても、大事な駒どもだぞ。
冒険者か!? もう嗅ぎ付けたのかよ!
「お前ら、武器と身体は」
「武器も有る。全員、態勢は整った。女どもは?」
「扉だ。壁にしようと思って。ダメだったか?」
「いや、構わねぇ。壊れてるし、丁度良い肉壁だ。それで動揺なりなんなりしてくれんなら儲けもんよ」
くっそ、本格的に嫌な予感がしやがる!
雑魚どももこねぇし、確実にやられたなこりゃあ。
なんなんだ、あの窓の外に出れねぇスキルは。
お陰で、隠し通路すら使えねぇ!
しかも攻撃が通じねぇし。
──!?
「なんだ今の音は!」「どっから」「何が起きて」
──静かにしろッ!──
「いいか、黙ってろ。音に警戒しろ。扉もだ」
コイツらは殺させるわけにゃあいかねぇ。
替えの効く雑魚と違って、長いこと盗みやって来た奴等だ。
──カタンッ。
「扉ァ!」
ガジンが槍を突き立て、ボットが斧をぶん投げる。
「──なに? 居ない……口を塞げ!」
ボワッ!
煙幕に毒霧だぁ!?
女どもも巻き込まれてやがる! 冒険者じゃなくて同業か!?
──!
「窓ォ!?」
「ぐぎゃ!」「んなばかn」
「ラダ! ケストォ! テメーかぁ!」
2人やられた!
ちくしょうが! 今のは何だ、飛道具か!
「<氣槍撃・二連>!」
「<斧撃・豪>!」
魔術の壁!?
魔術師!──じゃねぇ! なんだその身のこなしは!
「ぎゃあああ、熱いぃぃ!!!」「目ッ、目が!」
くそっ、オレの方にも魔術が飛んでくる。
氣剣で切り払うが。
なんつー威力だ。
コイツ、魔術も体術もここまでイケるとなると、EやDランクじゃ足りねぇ。Dの上位以上は有りやがる!
「テメー、なんでこんなことしやがる!」
返ってきたのは言葉ではなく、飛道具!
チィ! 言葉に付き合ってくれねぇか!
「もういい! テメーがつえぇのも、仲間がやられたのも分かった!
もうどうなっても知らねぇ!
やってやんよぉ!」
どうせ、盗賊団は壊滅!
オレも生きれるかわかんねぇ!
ならよぉ!
「禁止薬ってなァ、知ってたか仮面野郎!」
仕込んでおいたヤクを噛み砕き、<狂戦士化>に<限界突破>。
ヒャー!
ハァァァァアアアアアア!!!!!!!
死ネェェェエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!
仮面野郎さんがゴブリンとかいうオチは流石にないですよ?




