第30話:馬車に揺られて、スキル考察
5日目:アルサ・リエーナ間:街道
ガラガラと、わだち(?)を作りながら馬車は街道を行く。
想定したより、揺れないというのが感想だ。
異世界転移勇者のうち、生産系勇者は一定割合いて、その中に馬車を改造することに命をかけたアホが居たらしい。
利権だのなんだのに妨害されまくり、全ての情報が広まった訳では無いものの。
少しは民間にも広がり、独占するより、広めた方が良いと考えた一部地域で開発が進んでいた。
まあ実際には、魔物に滅ぼされたり、知識が逸失したりしてるんだけど。
なんにせよ、中世×馬車=ヤバイ。理論が破綻した。
有り難いことだ。
この身体、三半規管も強いし、バランス感覚も良い。
回復魔術や氣力も有るが、酔わないに越したことはないのだ。
今護衛している商隊は、5台の商用馬車と、2台の護衛用馬車。
ロンドのCランクパーティー<斬破>と、ソロのFランク冒険者の俺:レッド。
で、1台の護衛馬車。
もう1台に、
Eランク冒険者パーティーだ。
まあ、妥当な分け方だろう。
高ランクパーティーと一緒にされた俺を、Eランクパーティーが恨むかとも思ったが、むしろ可哀想な目で見られた。
ああ、うん。乱暴者ですね。
実際に、ロンドは乱暴者で粗忽者なのだが、上手いこと言いくるめたら、何故か気に入られた。
1人筋肉が居るため暑苦しいが、残りのパーティーメンバー3人は細身のため、そこまで狭くは感じない。
そして、パーティーメンバーは喋れるらしい。
いや、そうなんだけど。普通なんだけど。
ロンドのやることに口を挟まないらしい。
幼馴染み故の理解力。
恐らく、周りが思っているだろうことにはならず、明るい会話が出来ていた。
会話しているうちに、頭の片隅で、今日の朝見た新規スキルを思い返す。
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エル:新規スキルを表示します。
【ステータス】
ノーマルスキル
<薬・毒剤生成:レベル:2(+1)>up及びnew統合
<皮膚強化:レベル:1>new
<薬効強化:レベル:1>new
<採取:レベル:1>new
<解体:レベル:1>new
<工作:レベル:1>new
エクストラスキル
<極限集中:レベル:1>new(<集中>が上位化)
耐性
<斬撃耐性:レベル:1>new
<火属性耐性:レベル:1>new
<風属性耐性:レベル:1>new
うむ、既存スキルもアップしていたし、新規も多いな。
マジで1日に上がるような、生易しい世界ではないのだが、リソースの殆どをぶっこんだだけはあるな。
というか、エルさんマジで凄すぎら。
エル:それぞれのスキルの解説を表示します。
安定のスルー。
ノーマルスキル
<薬・毒剤生成:レベル:2(+1)>up及びnew統合
既存の薬剤生成スキルに、毒剤生成スキルを統合した。
薬と毒に大きな違いはなく、その量と対象による。
統合したことで、より詳細に薬・毒の境界に迫ることが出来る。
<皮膚強化:レベル:1>new
皮膚を傷付け、氣力・魔力で再生を続けたことで獲得。
主に<耐性>に関わる。
現在は、主に<斬撃・火属性・風属性>に強い。
皮膚そのものは、外から触れた場合、違いは殆ど無いが、危害を加えられると、耐性が効力を発揮する。
また、火傷しにくい。切創が出来にくい。
擦れても傷付きにくくなり、ターンオーバーによる再生が早まる。
皮膚のなめらかさ、艶やかさ、キメ、張りも上昇する。魅力値上昇。
<薬効強化:レベル:1>new
主な効果は3つ。
1、<薬・毒剤生成>スキルに補正。作り出した物の効能を上昇させる。
2、薬剤などを摂取した際に、その薬効の吸収率を上げる。ポーションなどの効能を余すことなく吸収出来るように成っていく。
3、後述する<採取><解体>スキルの補正。
薬効に類する素材が劣化・流出しにくくなる。
<採取:レベル:1>new
採取に関わることに補正。
採取とは、取る、採ることに関する全てに補正が入る。
採取時、価値の減少を食い止める。より良い物を採取出来る確率が上がる。
<ソナー>等とのシナジー効果有り。
<解体:レベル:1>new
解体に関わることに補正。
解体とは、バラバラにすること。その全てに補正が入る。
解体時、価値の減少を食い止める。
<ソナー>等とのシナジー効果有り。
また、生体を解体する時に、より痛みを与えない、もしくは与えると言ったことにも補正が入る。
<工作:レベル:1>new
工作に関わることに補正。
主に、生産系の補正だが、目的のための計画・下準備にも補正が入る。
様々なスキルとのシナジー効果有り。
エクストラスキル
<極限集中:レベル:1>new(<集中>が上位化)
集中が上位化して生まれたスキル。
<集中>の効果を拡大発展させたスキル。
また、特殊状態<極限集中>の任意使用可能。
<思考技術>スキルとの、強大なるシナジー効果有り。
耐性
<斬撃耐性:レベル:1>new
<火属性耐性:レベル:1>new
<風属性耐性:レベル:1>new
一括説明。
それらに対する、耐性。
ダメージ軽減。回復も容易になる。
<皮膚強化>との関連性が強く、特に皮膚に関しての耐性が高い。
おおー。
凄いな。どれも基本のスキルが見えるけど、効力が半端ない。
スキルの補正値こそ、小さいものだが、範囲が異様に広い。
偏極型を目指す俺にとっては、有難い。
重なれば、更にシナジー効果を起こすし、育つのも早く、新規獲得のハードルは低い。
エル:マスターのスキルに置ける汎用性の広さは、認識によります。
それもなのか?
エル:明確なスキル名を認識していること。単語に関する知識を持つこと。スキル名などに対し、文学的なアプローチで認識していることによります。
文学的なアプローチ。どこかの感想欄で読んだことが有る気がするな。
それもあって、こんなスキルになっているのか。
エル:また、<採取>等に関しても、<薬草採取>、<鉱石採取>ではなく、<採取>という大分類になっていることにも起因します。
だからあれだけ広いのか。
とすると、<感知>は。
エル:個別のものを統合しているので、大分類<感知>より、それぞれの補正値は高いです。今後も、<感知>系統の獲得を推奨します。
ああ、そうだな。
<感知>系は重要だ。俺も頑張るが、エルも頼むぞ。
エル:了。
しかし、皮膚に対する俺の認識はなんだろう?
いやまぁ、良いことに関して文句はないのだが。
耐性も有るし、皮膚そのものの再生も早くなっているようなんだが。
美容系に行ってないか?
前世の遠い記憶──エルに頼めば即リカバリー──を探っても、家族という枠組みだった人間たちに、美容に力をかけていた者は居なかった。
美人らしいと聞いたことは有るんだが……。
美容系のアイテム売れるだろうか。
みんな大好きNAISEI。エルさんにお任せコース。
エル:案を構築しておきます。
あれ!? ネタがマジ拾いされた!?
まっ、ええか。
生産系でも、木を削ったりしただけで、<工作>。
しかも、そっちの意味も。これぞ文学的なアプローチ。
隠蔽工作や、懐柔工作はしていたが、こーなるか。
なんだろう、こっちの意味での成長の方が早そうだ。
そして、第3のエクストラスキル!
一般人が死ぬような思いで努力して辿り着く、エクストラスキル。
そう、5日目で2つ上位化。1つ、更なる上位化しました。
ええ、成長チートです。
まあ、<集中>だしな。それの上位化。
無駄になるであろう、全てのリソースをぶっこんで効率をなすエルさんが使うと、マジヤバイ。
俺も使うけど、どんどん使いやすくなって、すぐ上位化したしな。いつの間にか。
んで、ゾーンか。
<極限集中>
ゾーンに任意で入ることが出来る。
・ポテンシャルをフルで展開できる。
・一時的なスキル補正の上昇。
・ゾーン継続に伴う、莫大な消耗・疲弊。レベル・熟練度の上昇により、ゾーン時間、消耗に補正。
・より深く、ゾーンに入れるようになっていく。
うわー。
エル:凡そマスターの想定するゾーンと同じものです。
つーかこれ。エルさんが普段やっているような状態なんじゃ。
エル:否。ゾーン発動には、それだけのリソースを消費します。睡眠時トライアル、緊急事態等に限定しています。
してんのね。
というか、<氣力活性>、<思考技術>の思考加速と、限定的身体加速。
そして、ゾーン。
限界いけるんじゃね?
エル:非推奨です。
いや、緊急事態とかにさ。
その時のための、手段でね?
エル:……非推奨です。
そりゃー、ならないように、<工作>はするよ?
緊急事態にならないようにするのが、腕の見せ所。
だけど、何が起こるかなんて分からない。
その時に、不慣れな限界突破と。
既にデータ取りが出来ている限界突破なら、データを取っていた方が良いだろう?
エル:…………非、推奨ですが、賛成します。
ありがとう、エルさん。
エル:無理はしないでください。
自分の能力に謝る図。だが俺は、これで良い。
俺はエルを個人として見ているんだからな。
スキルとは、認識によって変わる。
可能性とは、無限大である。Byマ・コトーサ=トゥ




