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第29話:異文:異常なる男の遺族とは──後編──

本日6話……目?


同時投稿、その後半。


更に色々注意。

 

 有り得ない。


 あの兄が。


 あの兄に限って。


 あの兄に、あんな日記は書けない。


 あんな、真心込めた日記は書けるはずがない。


 だとすれば、あの日記は。隠蔽だ。


 あの日記は、兄が、何らかの為に書き残しておいた、道具だ。


 考えられるとしたら、母親のため。


 兄の目には、母親だけは、少し映っていたから。



 ──────────



 産まれた時から、意識があった。

 記憶はないが、知識だけ、私には有った。


 成熟に近い精神と、赤子の精神性が混じったような感覚。


 それが一致したのは、兄の目を。

 兄が見ているであろう光景を、想像してしまってから。


 兄の目に、人間は映っていなかった。

 目に入らないのではない。


 目に、入れたくないから、映らない。


 途中から、兄は母親だけは認めたのか、何なのか。

 母親は、傍目からは分からないが、重度の人間不信だ。

 恐らく、いや確実に、あの男がそうしたのだろう。

 それ故か、兄は母親を、その目に映していた。


 羨ましかった。


 兄は、私を、見てくれない。

 動けない私を、母親と一緒にお世話してくれようとしている。

 だがそれは擬態。そうするのが正しく見えるから、するだけ。

 あの男を見本の1つにして、兄は兄になっていった。


 羨ましかった。


 兄に影響を与えられた男を。

 兄に見てもらえる、母親を。


 だが、母親には感謝している。

 兄を兄にしてくれた。色んな意味で。

 そして、育ててくれる。その愛で。

 兄を溺愛するのは仕方がない。


 だって、あの兄は。


 愛しく感じてしまうもの。


 もう1人の兄はキライだ。

 乱暴だし、外面は良いが、我が儘だ。

 だけど、父親であるあの男にはあまり逆らわない。

 でも、あの男とは一緒に居たくない。

 そして、兄にも、もう1人の兄と言う男は、弱かった。

 身体が成長すると、男二人の眼は嫌なものになってきた。

 避けるためにも、そして兄に見てもらうためにも、兄のそばにいた。


 でも、その目に私は映らない。映れない。


 姉が、羨ましかった。


 姉の世界は、絵だけで完結していた。

 姉は、人間ではなかった。あれは、絵を描くモノだ。


 それ故か、兄は姉を僅かに目に映していた。


 姉は、ヒトになれた。それ以来、姉の世界は、絵と、兄で構成されていた。


 羨ましかった。とてもとても、羨ましかった。


 どうやっても、兄の目に私は映らない。


 映り方だけなら、知っている。


 それは、目に入れるしかないような、入れなければ対処できないような、兄の敵に、なるしかない。

 兄に排除される、そんな存在になるしかない。


 ああ、だけど。


 それは、嫌だ。


 兄に構ってもらうのは嬉しい。例えそれが痛みでも、とてもとても嬉しい。


 だけれど、出来れば私は。

 嫌われたくない。

 貴方にとっての、プラスでありたい。


 その他大勢で良い。貴方を構成する、一部になりたい。

 妹として見てくれれば、最高だ。女として見てくれれば、最高の限界すらも破壊する。


 1人だけを、私だけを見て欲しいなんて言うわけがない。

 兄はとても魅力的だ。


 あのとき、兄の目に映りたいと。


 そう思った時から、私は貴方に全てを奪われて、捧げているのだから。


 それだけじゃない。兄は才能の塊だ。

 表面的な魅力も、溢れている。

 母親譲りなのか、やや女顔の、整った顔。

 特徴らしい特徴はないが、それは欠点がなく、整っていると言うこと。

 モデルや、俳優にスカウトされたこともあると言う。

 告白も良くされるし、バレンタインも大変だ。

 男がなにか騒いでいたが、兄はただ、チョコレートを齧っていた。可愛かった。

 手作りには手を出さず捨てていた。それで良いと思う。

 手作りは、私と母のだけで良い。


 だけど、律儀にお返しをしていた兄は、凄いと思う。

 目に映していない存在に対しても、動けるのだから。

 兄のチョコレートは、苦かったが、美味しかった。


 ああ、兄さん。


 貴方の目に映ろうと、頑張ろうとしていたのに。


 貴方は死んでしまった?


 有り得ない。


 有り得ない。


 有り得ない!!!!!


 あの満足したかのような顔?


 ちがう、あれは期待した顔だ!


 ならば何に期待した?


 兄は、何が好きだった?


 なぜ、雷などに当たった?


 あの兄が?


 ならば、有り得ないのなら、有り得ないのだ。


 私の狭い発想が有り得ないのだ。


 ならば。


 ならば。


 ならば!!!!!


 ──────────


 兄の葬式を終え、兄の肉体、いや、()()()()が燃えていくのを見ながら、考える。


 兄のためなら、母を悲しませる訳にはいかなかった。

 でも、アレなら大丈夫。

 どこまでも想定していたのね。


 姉はもう、変わっている。

 姉の作品は、史上希に見る速さで描き上げられた。


 それは、姉史上の傑作。姉初めての、暗いタッチ。


 ナニカが、描かれた、絵画。


 その後、傑作がすぐに更新された。


 ナニカの、希望が描かれた、絵画。


 今はまた、姉もぬけがらに近いが、また起動するだろう。

 ナニカが、見えていたようだから。


 そのお世話も、母親がしている。


 ならば大丈夫。


 置き手紙を残す。


 母親と姉以外は、気にかける必要などない。


 この世界に、そんな価値のあるものはもう、ない。


 だから。


 拳を振り上げて。


 打ち抜いた。


 ──────────


 次女まで消えた。

 置き手紙には、不穏なことが記されていた。


 こうなると、また!


「そう、あの子も居なくなったのね」


 なんだ?


「それは大変ね」


 妻は。


「探さないとね」


 まさか、もう。


「あなた。今日は何を食べますか」


 妻は、感情が戻った。

 だが、壊れている。


 壊れかけのまま、日記で固まり。


「良いお肉が入りましたので、お肉はどうでしょう」


 歪に、完成してしまった。


 もう妻は。


 次男が生きていた時の記憶と、あの厳重なまでに保護し、コピーを重ねた日記の内容だけで、生きている。


 ただ、過去だけを見て生きる、完璧で綺麗なお人形。


 ああ。


 ああ!


 なんて、興奮するんだ!


 子供を4人産んでもなお、崩れず、年を重ねた色気の有る妻。


 まだ、妊娠出産は可能。


 もう1人、増やしてみようか。


 増やせば増やすほど、成績のよい、こど、も、が……?


 待て、次男にだけ、特に注意を向けていた。

 面倒な長男。

 金を生むが、魅力に欠ける長女。


 そして、異常なる次男に。


 ()()()()()


 次男と良く一緒に居た、普通に優秀な次女だと!?


 あれが。


 まさか。


 記憶に残る、次女の行動。


 まさか。


 まさか!


 異常なのは、次女こそだったのか……?


 ああならば。





 ────勿体無いことをした!!!!!



 あのみずみずしい身体と、あの心を!


 壊してみたかった!



 仕方ない。


 諦めは重要だ。



 何はともあれ、この妻を。


 新しく完璧に型作られた、この魅力的な女を。


「あなた、どうしました?」


 思う存分貪るとしよう。



 ──────────


 蛇足的登場人物設定。


 母親。


 恐ろしく美人で、身体付きはグラビアでも見掛けない程。

 気立ても良く、家事もでき。

 殆ど、奇跡のような完璧美人。


 高校生の時にストーカーに悩み、後の夫である、レッドの前世の父親に出会った。


 その後、ノクターン的な、R18同人みたいな展開になる。


 お嬢様ではないが、気品が有り、お嬢様っぽく見える。

 これで、お稽古事とかしてたら、更に加速していただろう。

 実際には、料理を学んでいた。


 知らぬ間に、魅力を損なわないように、人間不信に、させられていた。

 でも、本人視点では、ずっと幸せ。


 特に、次男を執着寸前になるほど溺愛していた。

 次男が死んだことに受け止められなかった心がパンクしかけていたが、次男の家族愛の籠った日記を読んで、感情が戻る。

 その後、精神操作と、精神崩壊のショックがごちゃ混ぜになり、歪に冷えて固まった。


 見た目には、元に戻ったように見えるが、彼女の認識は過去を生きており、ただ老いて死ぬのみ。

 1つ違うのは、長女の世話をすること。



 長女。


 天才であり、天災である画家。

 絵を描くことを覚えて以来、生存すら危ぶまれるレベルで、狂気的に絵を描き続けていた。


 愛情深い母親により、なんとか成長していたが、そこに弟が加わった。


 風景画や、風景をアレンジした絵を描いていたが、弟が世界に加わってから、絵の幅が異常に広がった。

 電子上でも、絵が描ける。


 彼女の世界に、人は存在しなかったが、自分と似た存在である弟だけ、いつの間にか組み込まれていた。


 彼女は特に考えることもなく、それを飲み込み、絵の幅も広がり、人物像を描くようになった。

 ただし、弟以外のモチーフは全て想像。

 決して、人物画を受け入れなかった。


 身体は、食事不足、睡眠の乱れで、成長できなかった。

 リアルロリ美少女の、美大絵師等と話題になった。

 国宝指定の候補者であるため、国が守ってくれる。

 稼いだお金で、色々防いでる。

 面倒だけど、環境を守る為に、ヒト程度には動いている。


 弟が死に、世界が崩壊した。

 それを絵に描くことで、壊れきるのを防いだ。

 彼女史上最高傑作。


 その後、ナニカを見たのか、世界に希望が満ちた。

 彼女の史上最高傑作が更新された。早かった。


 対にして飾られるようになった、2つの絵は、見たものの心を揺り動かしたという。



 長男。


 クズ2号。

 父親から受け継いだ、異常なる性欲を発散させるべく動いている。

 だが、父親ほど口も火消しも上手くないので、たびたび父親に力を求めている。


 性欲の強さは、それだけ人間(女性)が好きだとも言い換えられる。

 優秀で、不気味な弟がとにかくウザかった。

 誰に言っても信じてくれないので、より荒れた。

 だが、ある程度取り繕いが上手いため、モテることはモテる。

 父親譲りのイケメンと、口の良さ。医大生ということを生かし、色々やっていたが、弟への嫉妬は消えなかった。


 弟が死んですっきり。だけどそれ以来母親がおかしくなったり、妹が失踪したり。

 色々大変。


 でも多分、本質を知っている人は同情してくれない。ざまーみろ。



 父親。


 クズ1号


 精神科医で、心理カウンセラーという表の顔を持つ男。

 その本質はR18同人に出てくる悪人・催眠術師。


 色々毒牙にかけてるし、良い思いをしているが。

 恐ろしく嗅覚──比喩的な──が利き、引き際を弁えているため、決して捕まらないし、最終的に利益を得る。


 生まれつきの、上流階級の出身、顔の良さ、地頭の良さと、特に詐欺師すら騙せるその口達者な技術を用いて、子供の時からR18同人してきた。


 そんな彼は、天職、もとい他人には天災職についてしまった。

 そして、運命の出会いを果たし、運命を無理矢理ねじ曲げて、赤い糸が繋がった。


 その異常なまでの性欲と、異常なまでの性癖は、色んな対象に及んでいた。

 ロリと貧乳以外は対象。まごうことなき星人である。

 次女にも手を出そうとした矢先に失踪され、すごく残念。

 実の親子丼ならず。


 彼はその後も、捕まることなく悪行をなし続けた。

 知るものからは、性王、性侵壊などと呼ばれている。

 性皇にはなれない。



 次女。


 普通の優秀な娘。


 そんなわけがなかった。


 母親の美貌と肢体を受け継ぎ、別種の美しさを体現することに成功した、地元でミス・ワールドと呼ばれている。

 何故か、盗撮は成功しない。

 何故か、アップした画像は壊れている。


 その美しさにも関わらず、人当たりが良く、女子受けが非常に良い。

 逆に男子にあまり関わらないため、更にミステリアス度が増している。

 一部では、百合疑惑も。ゆるくない百合。


 しかして、その実態は──────



 次男。


 色々属性てんこもりで有ることが判明した。


 まさしく、生まれる世界を間違えた男。


 母親から受け継いだ、女顔のイケメン?


 医者の息子で、恐ろしい演技力と、口達者?


 告白されまくり、バレンタインヤバすぎ?


 人知れずストーカーは闇に葬られていたが、ブラコン疑惑の姉妹?


 ふざけんな! 天罰当たれ!


 当たったー!ヾ(@゜▽゜@)ノ


 周り喜ぶ、本人喜ぶ、ウィンウィン。


 だが、彼に憧れていた女性、男性、その他に凄く悲しまれた。

 所詮演技・擬態に騙されていただけだが、その優しさと対応力により、ファン多数。

 本人的には、擬態で、最低限の対応だったのだが、基本が父親且つ二次元なので、恐ろしいことになった。


 女性向けマンガに出てくる登場人物さながら。

 男たちも、容易に嫌えないどころか、わりと好いていた。一部性的に好いていた。


 大体のテンプレを破壊する、アンチどころではない主人公。


 本人は異世界満喫中。



 異常なる男の、遺族……×


 異常なる、男の遺族……○





この作品はフィクションです。

作中に出てくるようなことは一切奨めておりません。

決して真似してはいけません。


特に作中の父親がしていることは犯罪です。

決して、真似してはいけません。


次に更新されるのは、恐らく次章。

迷宮都市までの道のり編。

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[一言] 家族がヤバすぎる。 特に主人公妹。
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