第26話:モフモフとは何か──殺戮対象である
4日目:アルサの町近辺:北の森
ほうほう。
もふもふやな。もこもこやな。
【ステータス】
個体名:───
年齢:4ヶ月
性別:男
種族:ニードル・ラビット(ラビット種)
レベル:49
ランク:2
うさぎである。
ただし、角付きうさぎである。
一本の鋭い角が額に生えている、もふもふのうさぎである。
予想通り、<突進>スキルが有る。<睡眠>系はないな。
あの角が、討伐証明部位になるし、買取り金額も高い。
そしてうさぎ肉もそこそこの需要があり、うさぎ皮や、うさぎ羽毛も買い取ってくれる。
【ステータス】
生命力:0/84
あっ、うん。勿論もう殺ってるよ?
既に解体を始めますが何か?
ランク2下位とはいえ、モンスターなのだよ。
その角で、畑を荒らすことも有るとか。
刺さると大怪我だ。
ゴブリンにも言ったが、良いモフモフは、撫でさせてくれるモフモフなのだよ。
そんなわけで、うさぎ系魔物を数羽(数匹?)狩りつつ、やはり鳥を獲る。
鳥……。魔物ですらない。
あっ、はぐれゴブリンだ!
ひゃっはー!
──────────
おっとっと、ゴブリンを倒すときの様式美をしてしまった。俺流で行こう。
投擲用の石。薬になる素材。毒になる素材。
はぐれゴブリン。角うさぎ。
あと描写はしていなかったが、虫とか、蟲とか。
エルさんのお陰で、群がられることもないし、先に倒せているが、めんどい。
<索敵>の情報も、エルさんが精査してくれるから楽だが、虫がいっぱい居るとこは嫌だな。
人間嫌いだからといって、無条件で他の生物が好きな訳じゃない。
人外だって、好みはある。そこはやはり人間準拠なのであれなのだが……。
わざわざ、精神性を狂わせる訳でもない。
俺は、唯一の俺だからな。これで良いのだ。
途中で昼食を取りつつ、串焼きの串を<投擲>!
──マジで鳥獲れたよ。氣力で強化したとはいえ、刺さってるよ。串。
そんなこんなで、森を楽しみつつ、タスクをこなしつつ、アルサの町へ戻る。
時間は、おやつ時を過ぎたくらい。
この時間帯の方が、混まなくて良い。
素材も有るしな。
北門を通り、冒険者ギルドへ。
くっ、ミーシャは居ないが、ギルマスは居やがる。
ギルマスの受け付けに行かなきゃ不自然になるな。
しゃーなしだな。
「どうも、一応報告に来ました」
「おう。律儀なのは、冒険者には良いことだ。首尾はどうだった?」
「ゴブリンとうさぎ、あとは鳥ですね」
「この辺にゃあ、モンスターはすくねぇからな。ウリは安全だ。お前さん、腕は良いんだろう?
今後はどうするんだ?」
おっ、丁度言いな。心配性より、戦闘狂の方が、相談しやすいことだ。
「元々は、迷宮都市ガザラエンを目指していまして。ここで最低限学んだら、行くつもりでした」
「ほう、ガザラエンか。幾つか迷宮都市は有るが、ガザラエンを選ぶのは良いと思うぜ。
だが、仲間は増やした方が良いだろうよ。
お前さんに合わせられる新人は少ないだろうがな」
それはそうだが。まぁ予定はあるし、エルさんが一番の相棒で、仲間で、天使だからな。
「はい。幾つか予定は有ります。この町では、明日まで宿を取っているので、明日出立しようと」
「明日か……。まぁお前さんの実力なら大丈夫だろうな。警戒心も強そうだ。
移動のアシはどうするんだ?」
明らかに、お前なら考えているんだろう? という目で見てくる。
「護衛依頼が有れば、受けようかと」
ギルマスが頷き、
「まっ、そうだわな。確か……明日の朝の護衛依頼が有る。これにねじ込んどくか?」
「ええ、きちんと依頼を確認してから、判断してみます」
「おう、それで良い。警戒心は武器だぜ?」
ニヤリと笑いながら、笑いかけてくる。いや、顔怖いから。
最近は、温い冒険者が~~等と言っているギルマス。
俺が買取りカウンターに行っているうちに、依頼表を確認してくれるらしい。
予想外に気が利くのな。
「じゃあ、これで全部かな? 確認するよ?
ゴブリンの討伐73、魔石73。
ランサー1、ウォーリア1、ソードマン1、リーダー1ずつ。
ニードル・ラビットの角と魔石、5。
ニードル・ラビットの羽毛、5羽分。
鳥肉と、鳥の羽毛も数羽分。
これで良いかい?」
結構、群れのゴブリン居たんだわ。はぐれも、<索敵>の向上により見付けやすくて、数増えたしな。
「ええ、お願いします」
「じゃあ、ランク2のゴブリンで、14600。
ランサー4000、ウォーリア4000、ソードマン4000、リーダー5000。
ニードル・ラビットの角1500と、魔石500。
羽毛1000。
鳥関係で、3000。
合わせて、37600エン。
銀貨3、大銅貨7、銅貨6だね」
エル:適正だと判断できます。
「はい。銀貨2枚分をギルドカードに、残りを貨幣でお願いします」
「……よし、完了したよ。これが貨幣分だね」
うん、結構稼げたな。矢玉を補充しておこう。
他にも、必要なもの買っても大きくプラスだな。
「おう、終わったみたいだな。これが俺のオススメってやつだ」
【依頼】
種別:護衛
ランク:F以上
・アルサの町と、近郊の町リエーナを行き来する商隊の護衛。
・複数のパーティー、冒険者による合同が前提。
・新人可。
「そいつは、リエーナとの定期便の依頼でな。基本常設だ。
なかなか大きな商隊で、そんなに危険のないルートなんだが、新人の輸送もやってくれるし、安全な町だけあって、家族がここに住んでいる冒険者も多い。
そいつらがついでに受ける依頼でも有るんだわ。
既にベテランが何人か入ってる。お前さんの良く回る舌なら平気だろう。やるか?」
ふむ。報酬も適正できちんと情報も載っている。
エル:受注によるデメリットは、あまり見当たりません。
他者に合わせること。戦法を見られること。アイテムボックスなどの隠蔽が必要なこと。
よし。
「受けます」
「んじゃ、処理しとくぜ。朝の時間に遅れんなよ」
「はい。では失礼します」
いよいよ、始まりの町から出発だ。
幾つかの仕込みをしてから、寝るとしよう。
──────────
訓練を終え、普通に夕食を食べ、お風呂に入り。
ポーションを作り、簡単な毒を作り。
木を加工してみたり、魔力で試してみたり。
既に日課と呼べることをしながら、エルに任せる。
では、おやすみ!
エル:おやすみなさいマスター。
4日目終了。
ニードル・ラビット
ラビット種で、有名な下位種。
素人が手を出すと危険だが、角に気を付ければ大体倒せる。
角は買取り対象なので、折らないように気を付けよう。
ゴブリン程ではないが、大体何処にでも繁殖している。
種族スキル<突進><発情>




