第22話:3日目は短かった──本来はもっと短いものである
3日目:冒険者ギルド、訓練場
いやー、怖かった。
何がって?
あのおっさんだよ。
だって、途中から笑い出してるんだぜ?
凶悪な顔が、更に凶悪になってたよ。
いやー、怖かった怖かった(棒)。
だが、得たものは多いし、大きい。
やはり、他者と訓練することで得られる経験値は多い。
試したい戦術も、幾つか試せた。
スキルとして形になったものは無いが、それは当たり前だ。
戦闘中に、いきなりスキル獲得だの、レベルアップだのは起こらない。
昇華に時間がかかるからな。本来は。
これはイレギュラーが多い事項だけど。
しかし、なんだろうな。
結構楽しかったな、戦うのは。
しっかりとした目的が有るからだろうか。
前世は、死んだように生きていた。
今の世は、まだ3日目だが、前世の記憶が遠くなるほどに充実している。
ああ、良いものだな。
早くこの世に。
カタストロフを齎したいものだ。
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食事を取り、食休みを挟んでから、午後。
主に、弓の扱いを聞く。
弓の簡単な手入れと共に、弓の射ち方。
強く射つ方法。速度を変える方法。曲射の方法。射抜く射ち方、射砕く射ち方。
「はー、君は随分と飲み込みが良いんだね。本当に初めて?」
「ええ、お遊びのものならともかく、本格的な弓は初めてです。スキルも有りませんし」
「私としては、弓術士でもイケると思うけどねー。この後は、盾の扱いと魔術だっけ? 多芸だね」
「まあ、武器は幾つあっても良いですから」
エル先生のお力と、<投擲>で培ったデータ。<念動力>を活用した効率の良いデータ収集。
お手本を視ることで、ある程度の情報を取得できるし、俺はスキルの関係上、劣化しない。ただ、進化し続けるのみ。
まだまだ、素人より強い程度だが、先は、見えない頂きでは、ない。
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そして、盾の扱いを学び、魔術を習う。
盾の扱い、俺のはバックラーなので、主に攻撃を流すのが目的だ。
これも、中々上手く言った。
流す技術は、剣でも、盾でも、そうは変わらない。
いざとなれば、籠手でも行えるだろうし、計算と思考加速は、それを補助できる。
そして、魔術。
魔術を、使えるだけなら、そこそこ居る。
生活魔術などもある。当然、<生活魔術>という別枠だ。
だが、職に出来るほど魔術に精通しているものは少ない。
冒険者でも、割合はそこまで多くないのだ。
「君も魔術使えるんだね。それも回復魔術。その魔術操作の練度なら、すぐスキルも獲得できるだろうし、どうだい? 僕らのクランに入らないかい?」
勧誘された。勿論断った。角を立てずに。
「そうかい、それは残念だね。それはそうと、僕の教えた風属性の魔術の適性も高そうだ。
さっき、もう一人の魔術師が教えてた火属性の魔術も、淀みなかったし、セカンドジョブに就けるようになったら、魔術師系統をオススメするよ」
これで、火属性、風属性に関する魔術のデータが、0から1になった。
あとはエルさんにお任せ!
エル:了。
というか、弓や魔術を教えるのが、人族ってどうよ。
ここはエルフじゃない? セオリーで。
弓を教わった女性冒険者も、いい感じにぺたん娘だったし、魔術を教わった男性冒険者も、スラッとして、エルフ枠で良かったじゃないか……。
ここには、エルフも、ドワーフも居ないんや。居るのは、獣人やったんや。
さーて、帰ったら、今日の復習と、夜間の準備だ!
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宿に戻り、体術、格闘術の動きを確認。その後、剣術の動きを、盾と共に動いてみる。
食べる、風呂入る。寝ない!
まだ、やることは有る。
まだ回収していない伏線の1つ。
アイテムボックスから、取り出したるは、これ。
<ヨムの薬草>
来るときに採取していた薬草の1つだ。
ギルドに卸さず、確保していたのは、これを使ってポーションとか、薬品作れないかなー、と言うことだ。
ポーションも、実際に飲むことで確認した。
良いポーションは、身体にかけても効果がある。ノーマルでは難しいが。
とりあえず、薬草を摺っていく。
鑑定、ソナー、まー色々使って、確認しながら摺っていく。
スリこぎだのなんだのは、既に購入済みだ。
ヨムの草は、効能が摺ることで少し増すし、これを水に加えることで、簡単なポーションになる。
スリスリ、ぺとぺと、ぐるぐる。
<ヨムの体力ポーション>
ランク:ノーマル
飲むと少しずつ体力がほんの少し回復する。
こうなったか。
次は、回復魔術の魔力を注ぎながらやってみる。
その現物がこちらです。
<ヨムの回復ポーション>
ランク:ノーマル
飲むとほんの少し生命力と体力が回復する。
少しずつ、生命力と体力が回復する。
ほう、即効性が少し有り、リジェネにもなってる。
回復魔術の効果有るのかー。
出来上がったポーション類は、使った瓶を洗ったものに入れたり、買ってきた瓶に入れてある。
後から回復魔術を込めても……ダメだな。これは今は無理……と。
スリスリ、ぺとぺと、ぐるぐる。
とりあえず、使いきってしまった。
他の薬草も、今使えるものは使ったな。
時間は、まだ──ある。
エル、今日も行うからな。
エル:……了。
では、ここに毒とナイフは用意した。
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ふー、ここまでだな。
自作したポーションを呷り、魔力・氣力を使い果たす。
では、今日も宜しくエル。
エル:了。おやすみなさいマスター。
3日目、あっさり終了。




