第20話:俺は敢えて、奴に挑む
─────────────────────────────────────────────睡眠時トライアル終了。通常トライアルへ移行……完了。獲得スキル、及びレベル上昇スキル、ステータス変化、耐性獲得の情報をまとめます。
3日目:アルサの町:風鷲の宿、客室
おはよう、エル。
エル:おはようございます。睡眠時トライアルのデータを表示しますか?
よろしく。
【ステータス・変更点のみ】
個体名:レッド
レベル:4(+1)
生命力:4200(+1200)
体力:412(+107)
魔力:688(+256)
氣力:674(+249)
ノーマルスキル
<魔力操作:レベル:3(+1)>up
<氣力操作:レベル:3(+1)>up
<回復魔術:レベル:3(+1)>up
<無属性魔術:レベル:2(+1)>up
<索敵:レベル:2(+1)>up
<念動力:レベル:2(+1)>up
<集中:レベル:7(+6)> up
<氣力活性:レベル:1>new
<魔力回復:レベル:1>new
<氣力回復:レベル:1>new
エクストラスキル
<詠唱技術:レベル:4(+2)>up
<思考技術:レベル:1>new及び上位化・統合
耐性
<毒物耐性:レベル:1>new
うっわ、すげぇ。
スキルの総獲得数って、制限有るのにどんだけ増えてんだ。いや、俺が望んだのだけど。
スキルを持っていると、新規スキルは少しずつ獲得しにくくなってくる。
人の魂を本に例えると、本に書かれる文章が、経験値だ。
そして、それらの文章がきちんと形になり、目次に載るような、一纏まりが、<スキル>となる。
本の大きさ、ページ数は、レベルによって拡大されていく。
そう、本の容量が小さければ。書き込みすぎて、もう白紙が無ければ。
新しいスキルの獲得は難しいのだ。
その本は、当人の魂の資質やら、才能やらで、書きやすさや、書きにくさ、拡張のしやすさが変わる。
また、上手く書けるかどうかでも変わるのだ。
文才が有る者=才能が有る者は、すぐスキルとして形になる。
文才が無い者は、まあお察しだ。
では俺は?
とても綺麗に、理路整然に書ける敏腕秘書が居るのだ。
アルティメットスキル<凌駕する唯一者>の効果もデカイ。
俺という魂の本は、他人から見ればチート満載である。
さて、見ていこう。既存スキルのレベルアップは、緩やかだな。
当然だ。必要経験値の量は、等比級数に近似して上がっていく。
そうそう、上がるものではない。
スキルとして形になると、本に書き込む内容が的確になっていくので、効率的に上げることが出来る……が、1日でぽんぽこ上がるかー! という話。
特に、上位スキルなんぞ、上がるものではないのだ。エル御大じゃなければ。
ねぇ? おかしいだろ? <集中>なんて爆速で上がってる。
<詠唱技術>もレベル2つ上昇。
あと何か強化されてる。
そう、エルの領域に近いスキルは、熟練度の上がり方が半端ではない。
エルさんは、俺の一部であり、入る経験値も、俺の一部でしか無いのだが。
ヤバい。俺要らない子説が毎朝出てくるぞこれ。
エル:エルはマスターのものです。エルの全てはマスターのものであるため、マスターが存在しないのであれば、またエルも存在しません。
ありがとうエルさん、俺頑張るよ。
エル:新規スキルの解説を表示します。
あいよ。
ノーマルスキル
<氣力活性:レベル:1>new
氣力により、肉体を活性化するスキル。
活性化することにより、負傷を癒し、毒物などに対する代謝を亢進させる。
肉体を活性化することで、ステータスを一時的に微上昇。種族特性と併せ、ステータスを永続的に極々微量上昇。
<氣力操作>スキルの派生であり、個体名:レッドの認識により獲得した。
<魔力回復:レベル:1>new
魔力回復に関わるスキル。
魔力回復速度の上昇。
単位時間辺りに回復する量を増量する。
戦闘時にも少し効果がある。
睡眠時と、装備効果、ポーションによる回復メカニズムをエルが探究することで獲得。メカニズムの把握が進むことでも経験値は獲得できる。
<氣力回復:レベル:1>new
魔力回復の魔力部分を、氣力に置き換えただけ。
ただし、こちらは装備効果の参考が無いので、効果が少し弱め。
エクストラスキル
<思考技術:レベル:1>new及び上位化・統合
<思考超加速>スキルに、<並列思考>、<直列思考>、<計算力上昇>等が統合された上位スキル。
<思考超加速>よりも、エクストラスキルという枠内において上位。<思考超加速>の能力も向上している。
エルとのシナジー効果が ある。
耐性
<毒物耐性:レベル:1>new
毒に対する耐性。
毒のダメージ・阻害効果を軽減する。
毒の無効化までの時間短縮、効率上昇。
・特記事項、<トロドの毒>に対しての効果はより高い。
おお! 使えるの多いな!
回復系は、あったら便利なパッシブスキルだなー、と思ってたのを、エルが形にしてくれた。
<氣力活性>は、本当に認識が形に、名前になるんだな。
これ、本来は余りにもやり過ぎると、身体を壊すし、寿命が削れる。
俺はむしろ増える。この身体にしてくれた神に感謝感激だな。
耐性も。
なー、エル。有った方が良かろ? より安全になるし、何よりエルが居るんだから。
エル:……了。
よしよし、今日のタスクをこなすとしよう。
本日もまた、冒険者ギルドへ。
──────────
「レッドさん、おはようございます。時間通りですね」
「はい。時間を守るのは大事だと教わりましたので」
もう、この町の担当に近いぞ、受付嬢ミーシャよ。
「それは良いことですね。新人研修はあちらの訓練場で行います。
でも、本当に戦闘訓練だけで良いんですか?」
冒険者ギルドでは、新人の無理な損耗を避けるために、新人研修を行っている。
任意参加だが、参加していると素行の良い冒険者として見られるし、得られることも多い。
新人研修は大まかに3項目。
1、ベテラン冒険者による、戦闘訓練。
2、ベテラン冒険者付き添いによる、実地研修:採取。
3、ベテラン冒険者付き添いによる、実地研修:討伐。
となる。冒険者は、基本戦闘系職業だ。戦闘が重要項目であることは間違いない。
実地研修は、経験の少ない冒険者が危険に陥らないように、サポートする。
報酬は少なくなるが、受ける新人は多い。
ベテラン冒険者にも、メリットはある。
報酬はとても少ないが、冒険者ギルドからの信用と信頼は高まる。
また、有望な新人を自分のパーティー、クランに入れたい者にも、青田買いのチャンスだ。
その為、手の空いている冒険者や、元冒険者のギルド職員等が、教員を担当している。
「大丈夫です。元々、森を突っ切ってこの町に来たぐらいですし」
「あっ、そうでしたね。ではレッドさん、頑張ってくださいね」
「どうも、行ってきます」
それは筋肉にやってくれ。
……! まずい、フラグ立てたか?
──────────
くっ! フラグが立ちやがってたか!
「では、最後に。俺はギルド職員のライドウだ。冒険者出身で主に剣と体術、氣力に関してアドバイス出来る」
教員達の自己紹介と、得意科目の紹介が終わる。
新人達の自己紹介は無しだ。教わりたい教員の元に行ってから、自己紹介する。
一人のギルド職員以外の冒険者の方に、新人は散らばっている。
新人結構居るんだな、明らかに経験足りない──俺が言えたことではない──が。
新人共の考えは分かる。
現役の冒険者に教わりたいだろう。
そして、あの筋肉ムキムキのギルド職員では嫌だろう。
そう、ギルド職員とは何か──ギルドマスターが含まれる。
冒険者出身とは──止めたとは言ってない。
フラグは、ギルドマスターフラグだったよ!
エル:あの時、受け付けに居た者と同一人物で有ることが確定です。また、この場で最も強者である確率ほぼ100%。
やはりか。
だが、考えようによってはチャンスだ。
強者相手に、稽古つけてもらえるチャンス。
そして、ある程度の不自然は、<人間ヲ嫌ウ者>による隠蔽可能。
行くか。
「ライドウさん、Fランク冒険者のレッドです。お願いします」
行った。言った。
次回、筋肉ギルドマスター、ライドウ視点(予定)。




