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第1話:唐突な勧誘劇


 今日も今日とて、人間が嫌いだった。


 生まれたときから人間が嫌い。

 そんな気持ちを抱えながら、オレは生きていた。

 いや、死にながら生きていると言っても過言ではないだろう。


 日々行っていることと言えば、三大欲求を満たしつつ、人間として不自然でない程度の生活。


 自分が異常であることは、気付いていた。

 恐らく、いや確実に親も気付いていただろう。親という生物は、子供のことに関して生ぬるいものではない。

 たとえ、スマホ依存だの、ネグレクトだの、居たとしても、それはオレ的理論から言えば親ではない。前提から省けば、それは全て真っ当な親を示せる。


 その親たちに対し、子供であるところのオレの感じていたこと、考えていたことなど筒抜けだろう。


 それでも、無下にすることなく、兄弟と同じだけの愛情を注いで育ててくれたことには感謝している。

 人間が嫌いなオレだとしても、オレは人間が嫌いなだけの、普通な人間だ。感謝の心はきちんと持っている。愛情だって有る。

 ただそれが、人間が嫌いなためにひねくれてるだけだ。


 そんなことを子供の頃から考えられるのだから、頭は悪いわけではないのだろう。

 学校にも行かせてくれた。その学校で、ある程度真面目に生きていた。通信簿に、少し大人しい子です。もっと自信を持って人と関わりましょう。なんて書かれる程度だ。

 他人に見抜かれるような、擬態ではない。先生受けは良くはないが、悪くもない。印象は薄く、そういえば居たなぁ、位だろう。


 人間が嫌いなオレは、人間のために役立とうとは思えなかった。でも、愛情をきちんと注いでくれた親という生き物は、嫌いでも、嫌いきれないから、惰性で学校にも通い、大学に行っている。

 偏差値そこそこ、就職率そこそこ。


 日々の糧は、文字の世界。

 書物や、ライトノベルなど。文字の中にいる人間。漫画の人間は、嫌いじゃない。


 ずっとずっと、本を読んで、人間が嫌いが故に、人間関係を最小限にして。


 この、人間が嫌いで嫌いで、滅ぼしたくて、自分もろとも壊してしまいたいという欲求を抱えたまま、死んでいくのだと、そう、ただただ思い続けていた。



 そう、その日までは。


 オレが、俺になれた。


 その日のことを。


 ──────────


 それは唐突であった。

 晴天の霹靂という言葉を、実感できた。


 何故なら、本当に雷が降ってきたのだから。


 よく晴れた、洗濯日和の空。


 通学のため、駅まで歩くその道で。


 雷が降ってきた。多分。


 多分なのは、オレに当たったからだ。


 その瞬間、オレは()()()()


 何に?

 何かに。


 それは、こう言った。


『───その強い欲求。その精神の在り方。実に、良い───』

『───我は汝の理解できる概念で言うのなら、異世界の神なり───』

『───汝に頼みが有る───』

『───我が神として存在した世界を、世界の人間を滅ぼしてほしい───』

『───我の力を与え、人間を滅ぼせる方法を汝に与える───』


『───汝は世界で、自由に、人間を滅ぼしてくれ───』


 そんな情報が流れ込んできた。

 オレは、何故だか、そこまで錯乱していなかった。

 驚きはある。でも、高揚もある。

 当たり前だ。こんな、ライトノベルのような状況だ。

 一時期、厨二病と結び付きかけた人間嫌いの精神だが、厨二心そのものは有る。


 そして、人間を滅ぼす。滅ぼせる、か。


 良いじゃないか。


 どうせ、この世界で生きていたところで何になると言うのだ。


 だから。考えていることなど後付けで。

 実際にはこう言っていた。いや、考えた、だろうか。


「良いだろう、条件次第だ」


 と。


 ──────────


 その後、この神とやらは、気分を害することなく、むしろ喜んでいるかのように、オレの質問に答えてくれた。

 答えと言っても、情報が封じられたファイルが脳内の仮想コンピューターで開くような感じだろうか。未だ、フルダイブ型のラノベようなものは、一般的に知るところにはないのだが。


 まず。


 1、異世界の人間を本当に滅ぼして良いのか、それに至った理由は?


 存分に絶滅させてくれ。理由は、この神自体は、元々人間達に信仰されていたのだが、最近疎外されてるし、アホなことするし。

 ほとほと愛想が尽きたどころか、神の肉体を引っ張り落とし利用しまくっているらしい。


 つまり神の気まぐれではなく、人間、いや人類達に非は有りまくりなのである。

 理由があったんです? 知るか、それでかみさま(他人)に迷惑かけんなや。せめて信仰しろよ。


 2、上記に併せて、異世界どんな世界?


 この神、オレの思考や記憶をやはり把握できるらしく、それに併せて情報ファイルを送ってくれた。

 人間ではなく、むしろ人間に困らされた神なので、オレ的好感度は高い。というか人間以外は普通だし。


 異世界、神が実在し、存在が確認されている世界であり、世界の名前もある。

 世界名:イリガルド

 この今いる世界は、便宜上:アース、と読んでいるのだとか。

 異世界転移した勇者がとりあえずそう言ったら、定着したらしい。


 そう、この世界。

 ラノベのプロットに出来る世界なのだ。


 ステータスがあり、スキルがあり、魔法があり、異種族がいて、魔物がいれば、魔族も魔王も魔神もいる。

 凡そファンタジーを色々揃えている。


 なんでも、世界そのものの成り立ちが、このアースのファンタジー感を、基礎情報として生まれた世界らしい。

 イレギュラーばかりの世界だから、イリガルド。

 世界の創造神:マ・コトーサ=トゥは、世界をつくり、満足して消えたと言う。

 うん、きっと日本に何万人かは居そうだな。


 世界は、異世界転移する奴等が多いので、ファンタジーお馴染み、中世ベースだけど一部めちゃくちゃ進んでいる世界なのだ。


 発展しきらない理由は、文明が滅ぶ、滅びかけるから。

 危険が多い世界が故に、そうなる。

 というか、発展しすぎると壊れるように創造神が設定したらしい。


 そして、オレと話してるこの神、人類の裁定者としての役割も持つらしい。しかし、それを知っている一部の人類が色々頑張ったので力を大分失った。

 そこで、代わりに人類ぷぎゃーしてくれる人材を、この基幹世界である、通称アースで探していたと言う。

 うん、途中から送ってくる情報ファイルがおかしくなってる。オレの記憶のせいだろう。

 オレのテンションが上がっているのも要因だろう。


 既に人類ぷぎゃーを受ける気満々である。


 3、どうやって滅ぼすのか。そして、ここにいるオレはどうなるのか。


 滅ぼす方法として、ダンジョン関連の力をくれるらしい。

 そう、ファンタジーの、あのダンジョンだ。


 何故ならこの神、ダンジョン関連の神でも有るから。

 ダンジョン関連の神は複数いるのだが、その中でも主神クラスだ。

 加えて裁定者なので狙われたのだが。


 あっ、神には名前がないそうです。落とされて失ったらしい。なんて酷いことをするんだ異世界人類は。


 ダンジョンの力、それから派生する力。

 そして、オレ自身に成長の力をくれるらしい。


 あくまでも、ダンジョンの力は方法の1つ。やり方はオレにお任せ。


 そして!


 何より!


 一番興味深いのは!


 オレは人間では無くなるということだ!!!


 この世界のオレは、このまま雷に撃たれて死ぬらしい。普通に火葬コース。

 故に問題は起こりにくい。親には申し訳ない気持ちも少しあるが、保険金もあるし、兄弟達はオレのことを煙たがっていた。

 ちょうど良いだろう。


 そして、異世界に行く方法は、転生でもあるし、転移でもある。

 一度死に、世界間を魂で移動。向こうの世界イリガルドで肉体を再構成。


 この時に! 人間ではない! 別の! 唯一の種族に変わるらしい!


 人間ではなくなることに、神は色々考えたらしいが、オレにとっては最高だ。

 人の形をした化け物、最高じゃないか。



 そうこう、色々話し合いつつ。


 異世界へ行くことを決意し、準備は整った。



『───汝に感謝する。人間共に鉄槌を───』

「オレにとっても最高の話さ。お互い様だ」


『───それでも、だ。では汝:***

 **よ ───』

「っと、そいつは捨てる名前だ。そうだな───オレは、いや、俺は! レッド! 人類の裁定者の代理者にして、自らの意思で人類を滅ぼすものだ!」


『───うむ! 汝:レッドよ! イリガルドでの活躍を期待する!───』

「ああ、出来たらまた、今度はイリガルド(向こう)で会おうぜ」


『───それも期待しておこう、いざ───』


 そうして、オレは死に。


 俺:レッドは異世界へ旅立った。

レッド君には、名字として設定しようとしてあえて破棄した名前が有ります。

読んだ人は多分分かってしまうでしょうが……。


彼の日本名が未定なのは、ジャイ子システムです。

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