第137話:外伝:安寧齎ス杖ノ末路ハ反転ス
今日は特別な日です。
今日は何の日ー?
ねーのひ☆(゜o(○=(゜ο゜)o(今年は戊戌:つちのえいぬ・ぼじゅつです)
彼女は祈る。
その手に握る杖に力を込めて。
彼女は祈りを捧げる。
死者に安寧を。
彼女は祈りを力に変える。
死者が亡者となりて生者を蝕むことのないように。
彼女は杖を手に、祈り続ける。
聖職者たる彼女は常に祈り続けていた。
聖別された愛用の杖を携え、村々を周り、埋葬を行う。
丁寧に手向けられなかった死者は、亡者となり再び現れる。
不浄にして、負なる生命を持ち、彼らは生前の思いを歪に歪めて引き継いで、生者を襲っていく。
故に、彼女の仕事は重要だ。
彼女の信仰する宗教のやり方に沿いながら、魂の安寧を祈り、肉体を保護して、また世界へと還れるように手配する。
人々はその仕事に感謝をし、時には金銭を、時には作物を、時には彼女の祈りに必要なものを、対価として支払っていた。
だが、全ての人々はそうではない。
彼女の仕事は、死者という、穢れを扱うもの。
その穢れを祓うことこそが仕事であるが、短慮な人々は穢れのみを見て、その仕事を嫌う。
彼女の美点にして、欠点は、清廉過ぎたことにあるだろう。
人の善意を信じ、いつかは解ってくれると。
彼女は村々を周り、埋葬を続けた。
彼女は知っていた筈だった。
人の悪意こそが亡者を産み、亡者は悪意を連鎖させ生者を襲う。
それでもなお、人々を信じ続けたのは彼女の信仰か、それとも単なる狂信か。
今ではわからない。
ただ彼女は、どうしようもなく下劣で低劣な村長の居る村で、死にそうになっている。
それが答えであった。
何時ものように、村々を周り、その村についた。
そして彼女は、埋葬の準備をするなかで、襲われた。
彼女ごと、穢れを祓おうと。
彼女を痛め付けることで、彼女に穢れを溜め、一気に周辺の穢れを祓おうと。
それは悪逆なる儀式。
下劣で低劣なれども、村のことは考えてはいることが救えない。
彼らはただ、彼女の仕事の意味を知らず、また唆されたのだ。
その方が良いと。
その方法を取ることで、より良い結果になると。
それが、亡者達の策略とは気付かずに。
村々を周るために、彼女の戦闘技術は高い。
亡者と戦うこともある。
それでも彼女は、人々に手を下せない。
彼女の修めた力は、生者に向けるのではなく、死者であり亡者に向けるためのものだからだ。
結局は多勢に無勢。
加えて、何処か強い村人たちに捕らえられた彼女は、どこまでも悪意をその身に受けた。
それは亡者達すらも想像しなかった、村人達の悪意。
唆されたという大義名分を得た彼等は。
何処か気味の悪い、穢れを扱う彼女に対して、何処までもその悪意を解放し迫った。
人間の原罪とでもいうべき、悪辣なるもの。
回復力も高い彼女に対し、彼等は切れ味の悪い包丁で、破壊力の低いハンマーで、そこらにある石で、すぐに切れそうな縄で、村にある様々な道具。
ゴミにしかならないようなものも使い、彼女に試した。
なまじ強い彼女は死ねない。
ただただ、悪意ともに壊れ行くのみ。
壊れていく肉体と、精神。
信仰を持ち、それだけで村々を周る彼女は、とかくその心の持ちようが強靭で、また歪であった。
その身に、村人の言う穢れを。
または、止めどない呪詛を溜め込みながら、彼女は埋められる。
未だに死なぬ彼女を、そのまま土へと還した。
彼女と共に埋められた杖。
ずっとずっと、壊れて行きながらも携えていた杖。
村人がすっかり彼女のことを忘れた頃。
世代も2つ程交代し、そもそも知るものすら少なくなった頃。
とある埋葬場所から、亡者が現れた。
時折現れるものと同じだと考えて、倒そうとした村人は亡者の仲間入りを果たした。
その筆頭は、とある女性だった。
開花すれば聖女とすら呼ばれたであろう、その才能と心の有り様。
しかし上層部と合わず、村々を周るのが精一杯であった彼女の、成れの果て。
今まで安寧を齎した亡者達を引き連れて、彼女は世界に戻ってきた。
生者達に終わらぬ苦しみを。
亡者達に終わらぬ安寧を。
齎すために。
彼女の振り翳す杖のもと、村は滅びた。
村人の殆どが亡者となり、村を後にする。
彼女をまた、村々を周り始めた。
彼女は祈る。
その手に握る杖に呪詛を込めて。
彼女は祈りを捧げる。
生者に苦しみを。
彼女は祈りを力に変える。
生者は亡者に。亡者となったものたちは、生者を亡者に変えるように。
彼女は何処までも何処までも、周り続けた。
その代の聖女に討たれるまで。
1つの国を滅ぼしかけるまで、彼女は周り続けた。
そして彼女は滅びてなおも、杖と共にある。
生者を亡者に変えよ。
亡者を率いて、生者達を滅ぼせてと。
杖を持つものを亡者に変え、亡者を率いる杖は、亡者に憧れた呪術師の手を経て、とある者の手に渡る。
それは────
──────────
「うむ。これで良いな。
しかし、イフと比べると意思が弱いと言うか、確立されきってないな?」
『旦那様ー。恐らく、リッチの転生に合わせて飛んだので、撒き散らした呪詛や、溜め込んだ怨嗟が少ないのでしょう。
ワタシはこれでも年季有りますし、彼女達よりも先輩です』
「彼女? この鎖と杖も、女性の精神なのか?」
『恐らくそうですよ。旦那様。
育てば、意思も確立し、より強い呪いへと昇華します』
「ふーん。まあ使えそうだしな。こっちも新しい力を得たし」
<死霊ヲ支配セシ司令杖>
ランク:エクストラ
スキル:<死霊魔術:支配・強化><司令:強化><死霊誘引・魅了>new
それぞれの簡易的なスキル説明はというと。
<死霊魔術:支配・強化>
死霊魔術の強化、特に死霊に属するものに対する支配力に補正。
<司令:強化>
指揮系スキルであり、死霊に対する司令の強化補正。
<死霊誘引・魅了>
死霊を集めやすくなり、魅了させ支配下に置きやすくする。
本来ならば、死を求めるものに杖が廻り合いやすくなる力であり、持ち主を死に誘うスキルになる筈だったが、個体名:レッドの異常なる殺意により変化した。
俺の影響力凄いなー。
この杖はアンデッド系にかなり使えそうだ。
リチャードの意見も聞きつつ、色々やってみるかな。
鎖はというと。
<伸縮自在><因果縛全><無限ノ鎖><復讐ノ心得>new<不運転嫁>newだな。
<伸縮自在>
伸び縮みや、鎖の操作が容易となる。
鎖の意思が強くなれば、自立行動も可能となるスキル。
<因果縛全>
例え因果であろうと縛り尽くすスキル。
漠然としたものでも縛り干渉することが可能となる。
<無限ノ鎖>
何処までも伸び、切れても繋がり、断たれ続けることはない。
呪詛を糧に、何処までも何処までも、鎖は連鎖する。
<復讐ノ心得>
本来ならば、持ち主や周囲を復讐に駆り立てるスキル。
現在は、復讐時のボーナスや、周囲の復讐心の感知等に変化している。
個体名:レッドの影響である。
<不運転嫁>
本来ならば、持ち主や周囲に不運を与え、復讐の可能性を増やすスキル。
個体名:レッドの強烈なる呪詛と、豪勢なる幸運により変化。
装備者:レッドに降りかかる不運は全て鎖へと集約され、敵対者に転嫁するスキル。
状態異常やステータスダウンを、相手に移すことも可能となる。
おう。
俺が影響及ぼしたスキルなんかパない能力になってんな。
『旦那様ですから』
エル:マスターの力故です。
あっ、そうですか。
さて、鎖は身体に仕込んでおくかなー。
他の装備の調節しないとな。
4/13
某ジェイソンの日です。
ちなみに暦の関係上、1年に2、3回は確実に来るのだそうで。
あと関係あるかわかりませんが名探偵コナンが好きです。
いやぁ、先週のコナン面白かったですねー。
なんてったって色んな伏線が……。
おっと、私はネタバレかますようなツイッタラーとは違うので、ネタバレなんてしません。
知りたい人はそういうサイトに自己責任で。
あっ、面白かったですよ?




