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第135話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──13話

 

 視点:シレイ:ゴブリン隊指揮官。兼ゴブリン種の統括。兼レッド配下幹部。



『──!』


 アナからの緊急防護要請。


『<誘引盾>! <ガーディアン>! <不動剛壁>!!!』


 それを受けて、未だに治りきらないキシが<盾術>で攻撃を呼び込み、仲間のガードと防御力強化をかける。


『<魔力盾><魔力壁><防御強化:土>』


 マホは掛けられるだけの防御魔術を。


 俺はこのパーティーの要であるアナを庇いながら防御系の技、<氣力壁>を発動させる。


 他の前衛型であるセンシとソウシも防御。

 ユミは直ぐ様キシの後ろに隠れ、最初から狙われていないトウゾは回復待機。


 最後に。


『<リアクティブ・ヒーリング>』


 ホリィが事後回復をかけて備える。

 もうこれ以上は無理だ!


『対ショック体勢!』


<指揮>スキルによる微量のステータス補正に願いをかけ備える。



 アナの緊急時、思考加速リンクによって一応の対応は出来た。



 来る!



 アウトが居た土煙からエネルギー波が飛んでくる──12発!


 アイツ、同時に2発迄の筈なのに。しかもどれも威力が半端ない!



 キシ(と後ろに居るユミ)に6つ誘引され。


 センシとソウシに1発ずつ。

 マホとホリィに1発ずつ。


 俺と後ろに庇うアナに2発!


 壁は容易く破壊されるも、装備した防具と鍛えた肉体、氣力操作により、ある程度は受け流す。


 通してたまるか!

 アナがやられると、一気に持っていかれる!


 数秒ものエネルギー投射が終わる。



『ぐぁ、損害報告!』


『センシ左腕潰れた。まだまだイケる!』

『ソウシ槍と両腕。回復求む』

『ユミ支障なし。キシ危険!』

『マホ両腕。なんとか逸らせた。魔術は出来る』

『ホリィ右手右足~。<皆に(オール)癒し齎す(・ヒーリング・)光照(ライト)>』


『トウゾだ! ゾーン使い始めた。

 おまけに、グーパンチが飛んでやがる!

 10本5対だ!』


『確認。キシは一旦切り捨てる。ホリィ、センシ・ソウシ優先。


 シレイ、作戦を提案』


 俺も両腕爛れてる。

 だが動ける。


 キシはアレを防ぎきった代わりに、盾が破壊。

 肉体も破壊されきってる。

 氣力も使いきったから、現状使い物にならないカードだ。


 キシもそれを分かっている。

 そもそも模擬戦だ、あのアウトを捌かなきゃならねぇ。



 アナから提案された4つの案から、1つを改案して決定だ。


 もともと後衛に防御を集中させたお陰で、マホもホリィも動けはする。



 というかなんだありゃあ、手の先から肘までの腕……グーパンチと呼ぶべきか。

 ビット・グーパンチと仮称する。

 それが5対10本浮いている。


 アウト本体の腕と合わせて12本……だがアナと意見が一致している。



 ──アウトは大将の性質を色濃く受け継いだ個体だ。あれが全部の訳がない。



『トウゾ!』


『あいよ! 死んでくらぁ!』


 この中でダメージが殆どないのはトウゾとユミ。


 トウゾは隠形を用いた、近接暗殺術で相手をするがどこまで──



『──!』


 咄嗟に壊れかけの棍棒を壊れかけの腕でガードに当て、身体で受ける。


『<剛体>!』


 ゴハッ!


『<マジックブースト><クワトロ・ヒーリング>!』


 ホリィがセンシ達の為にキャストしていた回復を当てて、なんとか耐えた。


 なんなんだ、あれは。


 アウトの背中に、幾つものグーパンチ。

 まるで翼のようなソレ。


 アナの解析と予想では、殴って移動させるグーパンチと、加速のグーパンチの重ね技。


 その加速で得られたエネルギーを、運動エネルギーに変えて俺が食らった訳か……。


『上警戒!』


 アナから再度の警告。


 あれは、ビットが1対飛んでいるのか!

 空中のビットから、エネルギー弾がバラ巻かれる。

 あれそんなに遠隔で出来るのか!?


 威力は低いが、かなりの阻害だ。

 トウゾが避け回り、ユミは同じく<弓術>のばらまき技で対抗。


 そしてあのビットは常に移動するために当てづらいようだ。



『ガッ!』


 くっ、キシが完全に落ちた。

 あれは阻害だけでなく、追撃か!


 思考を加速しながら、飛びそうになる意識を保ちながら、考え続ける。


 アウトが強くなっていることは分かっていた。


 大将がまたアウトに実験をして、成果を上げていることは聞いていた。

 特に弱点を克服させていること。


 アイツは紅血の森をクリアしている。

 あの紅血の森の1面を、ソロでだ。


 俺たち9人がパーティーで、未だに30秒以上生存できず対応に手間取るような死地をだ。


 戦闘が始まってからも、気配を探れず。

 あちらは攻撃を一気に仕掛けてきた。


 どんだけ強くなってるんだアイツはー!


 背中に付いていたビットが更にアウトを動かし、技後硬直殆どなしで今度はマホに襲いかかる。


『! <アクア・ウォール>!』


 水の壁がアウトの進撃を阻める訳もないが、その壁は粘性に特化した壁。

 一瞬だが遅れる。


 その隙にトウゾがマホにも隠形を適応させ、隠す。


 そこに、左腕群による40ものエネルギー弾幕。


『嘘だろ!?』『間に合わない!』


 トウゾに右腕からのアルティメット・グーパンチ。

 マホにはビット4本の攻撃。


『すまん……』『カハッ……』


 トウゾが一撃だと……。

 確かに防御ステータスは高くないとはいえ、どんな威力だ。

 マホもダメージが累積してた分も合わせて閾値を越えた。


 物理的に手が増えるとこんなに厄介なのか!



 アウトの野郎。

 何が一番ステータスの低い落ちこぼれだ!

 お前が一番イレギュラーなことをいい加減認識しろ!


 一撃でやられたトウゾだが、置き土産に罠を置いていった。


 糸による遅延・阻害効果!


 隠形からの発動故に、異常に鋭くなったアウトの感知でも対応は──。


『──対応早すぎるだろう! ええい<氣炎・大爆斧>!』『<氣槍形成><投槍・蹴飛>!』


 罠にはかかったものの、ものの数瞬で対応され、仕掛けておいた地雷も効果が薄い。


 どれだけ紅血の森で鍛えられたんだ!


 センシの爆炎を起こす投げ斧と、ソウシの足で放つ投槍。


 それらを上空に飛び出すことで避けたアウトに、ユミの狙撃──も外れる!?


 あのビットは足場代りにもなるのか!


 しかも、足場にした上に加速付与。

 空中からばらまきをしていたのはこの布石でも有ったのか!?


 加速したアウトはセンシに肉薄。


 あの加速はアナの思考でも追い付くのに必死だ!


 センシに突き刺さる右腕群のグーパンチ。

 動かない左腕側からの攻撃に、センシは対応出来ない──訳ではない!


『俺ごとやれぇ!』『ああ<足槍・突貫>!』


 右腕でアウトを掴み、そこをソウシが槍に見立てたドロップキック。


『だぁ! ビット反則過ぎんだろ!』『もう一撃!』


 左腕群のビットの2本がソウシの攻撃を防ぎ、本体と合わせて残り3本のグーパンチがセンシを更に穿つ。


 更にユミが追撃するも、余りにも早すぎる対応で防がれる。


 そしてクールタイムが過ぎたのか、ソウシが吹っ飛ばされる。



 ホリィによって回復した俺が、最後の砦だ。


『こちらの勝利条件はアウトの戦闘不能!


 アウトは氣力・魔力は無限でも、集中力はそうはいかない!


 しのぎきれぇ!』


 アナの提案。

 ゾーンの使用可能時間を凌ぎきること。


 出来れば倒して終わりたいなんてのは綺麗事だ。


 勝利条件が有るのなら、それを達成すれば良いだけだ!

 俺たちの満足よりも、勝利こそが必要となる。



『<矢振雨>』


 ユミが不規則な動きをする雨のような矢撃。


 アウトはそれを──特攻!


『<跳弾矢羽>』


 矢達は更にぶつかり合って、軌道を変える。


『あっ、あれを読まれるの~』


 それを更にアウトがビットで叩き、軌道をズラして安全圏を作り上げる。


 そしてユミがグーパンチを受ける。



「<挑発>!」



 前線指揮官たる俺は、部下を守るために攻撃を引き受けるスキルを持つ。

 本来なら指揮官がやるべきではないことでも、指揮官がやるからこそ味方の指揮が上がる。


 アナの補助と、ホリィの回復。


 さあ、受けきってやる!



 アウトがまた、ビットによる超加速。


 俺の目の前に来たのに合わせ。


『<剛体><豪腕><鉄塊>!!!』


 身体の自壊なんて気にせず、一気にスキルの重ねがけ。

 脳の血管が破けようと、筋繊維が悲鳴をあげようと、俺で止める!



 アウトの腕が上がり。


 氣力が高まり。


 コマ送りでさえも速く見えるアウトのグーパンチは。










 俺に当たる前に落ちていった。










『はっ?』













『あー。アウトの戦闘不能を確認。

 ゴブリン隊の勝利だ』


 勝った、のか?


『ゾーンの時間切れだな。そもそもアレ使うと更に時間短くなるし。


 ゴブリン隊の粘り勝ちだな。

 良くやったぞ。残り3人でも勝ちは勝ちだ。


 回復していくぞ』


「はっ、ハッ! ありがとうございます」


『不完全燃焼だろうが、そもそもアウトにはエネルギー無限というアドバンテージがある。


 アウトは燃費が悪いがその分、それをどうにかするとこんだけ手に負えなくなる。


 これで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』


「ハッ。これでアウトに対して舐めた態度をとるものは少なくなると思われます」


『俺もアウトも気にしてないがな。

 まぁ、良い模擬戦にもなったし、色々と見付かることもあっただろう。


 後で反省会すると良いが、まずはゆっくりと休みな』


「ハッ」



 ふぅ。

 不完全燃焼か。確かに。


 勝ちは勝ちだ。俺たちの満足よりも、重要だ。



 それでも、出来れば自滅待ちよりも、倒して勝ちたかった。





 回復したら、紅血の間のマラソン。


 加えて、紅血の森リトライだ!








普段のアウトならアルティメット2、3発でガス欠です。

しかも、ビット使うと数秒ですっからかん。


だが、どーにか出来たらめっちゃ強い。

これで更に強くなるんだぜ、コイツ。

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