第133話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──11話
視点:更なる改造を施されたアウト。
どうも、アウトっス。
あのあと、更にもう1つ大きな訓練をしたんスけど、別の意味で大変だったスよー。
確かにアレなら、オイラの弱点はかなり改善される。
というか、弱点どーのこーの話じゃなくなるレベル……。
その代わり脳が震える……もとい脳が溶けるレベルの難易度っスけど。
慣れればなんとかなるとか、アレ慣れるんスかねぇ。
しかも、氣力に込めるイメージの向上が図れたので、それを更に使いこなすために紅血の間に叩き込まれたっス。
しかも、新ステージっスよ?
いわゆるβ版で、デバッグがオイラっス。
その仮名は【紅血の森】。
おいでよ紅血の森、と言いたいらしいっス。
──誰がアニキに吹き込んだっスかぁ!!!
ステージのモチーフは勿論森っス。
動物は居ないっス。
訂正。お友だちになれるような可愛らしいのはさっぱり。
敵性動物が沢山居るっス。
その上、生えている樹木は大体トレント擬きだったり、ウッド・ゴーレムだったり、バイト中のトレントさんだったり。
はたまた普通の樹木に見せ掛けて、食虫植物ならぬ、食人植物だったり。
動かないけれど、そもそも毒持ちだったり。
毒はなくともカミソリのような葉っぱをしてたり。
草木だって、魔物だったり、魔物じゃなくともヤバい植物だったり。
溶解液だぱーだったり。
そして地面だって、いきなり落とし穴出来たり。
逆に隆起したり、振動したり、バイトのモグラさん居たり。
はたまたバイトのワームさんが丸のみしてきたり。
加えて、アース・ゴーレムやサンド・ゴーレムが襲ってくるし。
しかもしかも、空中には花粉は有るわ、粉塵は舞ってるわ、毒の霧だったりするわ、そもそも大気バランス狂ってたりするわ。
大抵の動植物には毒が有るし、酸があるし。
川には魚がいても、大体毒だし。水が毒だし。
そもそもウォーター・ゴーレムやアクア・ゴーレムだったりするっス。
ええ、まず死ぬっス。
存在して2秒で死ぬっス。
次にグーパンチで気流を作り出してなんとか呼吸確保したら地面にクレバスが現れて死ぬっス。
空飛ぶと空中に仕掛けられていた糸によってバラバラになったり、粘着したり、爆発したり。
ええ、戦う以前っスよ。
まあ今までの経験で慣れてるんで、数十回のトライアウトなアウト君であるオイラは、やっとのことで戦闘に持ち込み。
そこから数百回の試行錯誤でなんとかエリアボスにたどり着き。
そして更に100回位でボスを落とせたっス……。
いやぁ、酷いっス。
続編の飛び出せ紅血の森にチャレンジ可能! とかマジでグーパンチっス。
むりむりカタツムリっス。
スっスっス。
その代わり、大分使えるようになったんスけどねー。
まず威力の向上は有るっス。加えて消費の削減。
イメージ伝達の高速化と効率化により、使えるグーパンチの種類も増えたっス。
何より、この技術により会得したものがあるっス。
オイラは最初、グーパンチは単発でしか出来なかったっス。
その後、ボクシングのワンツーのように、連発出来るようになったっス。
そして、今。
なんと、1回のグーパンチで、連発が叩き込めるようになったんス!
アニキに、『釘を打ち付けるイメージっスかね?』と聞いたところ。
『お前マジでそのイメージは止めろかなりヤバいしゃれにならない』
と句点なく却下されたっス。
『そうだな。拳銃みたいなイメージだろうな。
お前の腕が砲身・銃身。
グーパンチが弾丸だ。
そして弾丸・銃弾を幾つか腕にセットし、連続で撃ってみたり、連撃を一息に打ち込んだり、或いは数発を纏めて一撃にしたり。
いろいろと出来ること、やれることは増える。
その代わり慣れるのは大変だ。選択肢が増えることによる、訓練の分散も有る。
だ、か、ら。
纏めて逝ってこい?』
あっ、思い出さなくて良いとこまで思い出したっス。
そんなわけで、オイラのグーパンチは更に進化したっス。
お陰で、1度に対処出来る数も増えたし、付与できる数・精度も上がって。
何より一撃を強く出来るんで、でぃーぴーえすが明らかに上がり戦闘時間の短縮にもなり、消費の削減に繋がるっス。
あっ、でぃーぴーえすは、ダメージ/時間のことっス。
元はゲーム用語らしいっスね。
damage per second。
secondって、2番目以外に秒という意味も有るっス。
最初は不思議だったんスけど、考えてみたら日本語の方がチャンク凄いっスよねぇ。
あっ、secondはminuteに変えられることも有るらしい?
まぁ時間辺りのダメージ量。
瞬間的な攻撃力とも近いっスねー。
いやー、硬い相手にも効くようになってありがたいっス。
その代わり拳壊れるんで、治す必要や強化する必要有るっスけど。
まぁ、死に戻りすれば治るんで、自爆前提の技も多いんスよねー……。
そんなことをつらつら考えていると。
『よおアウト』
「あっ、アニキっスか。
あの森の難易度酷くないっスか?」
『まぁβ版だしな。ちなみにあれ難易度【やさしい】なんだけど』
「あれで!? じゃあ、飛び出せの方は?」
『【ふつう】だな。それ以上はまだ作ってないけど。 』
「なんという難易度詐欺っスか」
『まああれは紅血の間のエクストラステージみたいな扱いだからな。
紅血の間デフォルトを鼻唄混じりに歩ける位じゃないと2秒持たないし』
「ええ大変だったっス……。あれ?
アニキはどうしてここへ?
何かオイラに有るんスか?
流石に飛び出せの方に行くのは待って欲しいっス」
『うむ。お前のその拒否ではなく延期にするところがとっちゃんである証だな。
また模擬戦のオーダーだよ』
「ああ。今度はどなたになるんスか?」
『ゴブリン隊』
「ゴブリン隊っスかー。どなたっスかね?
前衛の人たちならともかく、ヒーラーのホリィさんや、アナリストのアナさんだと、流石に合わない気がするっスけど」
『お前分かってて言ってるだろ。ゴブリン隊だ』
「…………」
『…………』
「隊……。つまりは、9対1?」
『うむ』
「いやいやいやいや!? ゴブリン隊はアニキが設定したパーティー戦闘前提じゃないっスか!
1対1ならまだなんとかなる余地あっても、パーティー戦じゃあ皆無っスよ!」
またむりむりカタツムリさんが出てきてしまうっス!
『おっ、次はカタツムリでも創造しようかな』
「ナチュラルに心読んで来るっスねぇ。
まあアニキの思考が基なんで簡単でしょうけど。
ただ本気で模擬戦にならないっスよ?
ただでさえ落ちこぼれゴブリンですし」
『流石にハンデはやるさ。
まず、フィールドはアウトが選んで良い。
そして、アウトには魔力・氣力の無限充填。
つまり、お前の上限まで使いたい放題だ。
お前のグーパンチの消費のデカさは知っている。
これで、なんとか釣り合いは取れんじゃないか?
お前は回復も付与も出来るんだし』
「あー、それならなんとかなるんスかねぇ?」
『何、ゴブリン隊の方には更に使い捨てアイテムの制限まで有る。
良い勝負にはなると思うぜ?
まぁ、一発。やってみな?』
「そうっスねぇ。それじゃあやってみるっス。
オイラは全力でやって良いんスよね?」
『勿論。アレも全力でやっちまえ』
よーし!
やってやるっスよ!
アウトの外伝は、アウト対ゴブリン隊辺りで一段落です。
そのあと別の外伝……かなんか入れて本編に戻ります。
いやぁ、アウトは本当に書きやすい。




