第131話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──9話
遅くなりました。
主な原因は、ドッキリと10万円で出来るかなのせいです。
視点:死地へと赴くアウト──つまりは何時ものこと
赴いてないっス!
連行されてるんス!
無理やりなんスよー!
『おいおい。流石に俺もランク8でバリバリのリチャードとそのままやらせようとは思ってねーよ。
得られるものが少なすぎるからな』
「あっ。そうなんスか?」
アニキっスから、有り得なくもないんスけど。
『俺のスキルも向上したことで、<レッドカード>の使用のアップデートと、俺が創造した魔物でなくとも、配下の魔物ならインストール出来るようになったんだわ』
「話の流れ的に、リチャードさんも<レッドカード>装備個体なんスね?」
「そうだよアウト君。私も<レッドカード>を下賜されているんだ」
リチャードさんはゆらりと、自然体のままに、でもそれが一番怖い態勢っス。
『ここは名付けるとしたら【リチャード道場】だな。
その道場主であるリチャードに稽古つけてもらえるという意味合いが強いが、もう1つ。
リチャード自身の鍛える場所という意味合いが有るんだ』
「私はロードに幾つかの願い事をしています。
その1つ。私は剣を高め続けたいこと。
ここでは死ぬこともなく、いえ死にながらも戦い続けることが出来る。
そして、<レッドカード>の機能には、効率的な弱体化をもたらすものがあります」
「ああ。復活できる代わりのステータスダウン。
デメリットなんスけど、そう使うことも出来るっスね」
弱体化により、得られる経験値も微量増えるらしいっス。
あれっス。縛りプレイの方が、プレイヤースキルの向上を図れる、みたいな。
『なんで、俺は更に弱体化の度合いを強めたり、弱体化の項目を詳細にしてみたり、色々と加えてみたわけだ。
リチャードのものは、カスタマイズされた<レッドカード>でリソースかかってるけど、充分に価値の有るものだと思っている。
今回の場合、アウトには何もなし。
リチャードは、装備を専用装備<ふかいなる剣>ではなく、ほぼ同じ重さ長さ釣り合い、その数打ちの剣を。
そしてステータスをランク4~5程度に制限。
ただし技量はそのまま。
これで、ステータス的には殆ど問題はない。
あとはアウトの問題だな。
フィールドはこの道場もどき。
幾らでもぶっ壊して構わねぇ。
これならどうだ?』
「どうだ……と言われても、確かにそれなら戦いにはなる……んスかねぇ。
まぁかなりの経験になるだろうし。
宜しくお願いするっス」
「こちらこそお願いするよ。
アウト君の動きはロード譲りで、支離滅裂に見えてきちんと練られていて、その上で奇想天外だと聞いている。
とても楽しみだ」
誰っスかね! 支離滅裂とか!
あっ、アニキが親指だけグッとしてる。
アニキっスね……なら仕方ないんスかねー?
『んじゃ両者、構えることなく始めろ。
──死合にルールなんてねぇ』
──────────
──!
アニキのセリフが入った瞬間、オイラは右へ飛びながら、推進グーパンチも発動させて緊急回避。
「流石だね。攻撃の兆候を読み取ったのではなく、状況を悟るや否や回避に全力を注いだ。
幾らステータス制限が有ろうとも、そのままだったら真っ二つにしていたよ」
視野を広く持ち、元いた場所を見ると、縦に斬撃が入っていたっス。
斬撃を飛ばしたんスかね。
数打ち品を、痛めることなく、技量を発揮させる。
とんでもねー相手っス。
元より相手は、技剣のリチャードと謳われた、技力系の剣士。
ステータス上の数字よりも、その技量と経験こそが武器。
そして止まっていてはそれで終わり。
元より相手は、技剣のリチャードと謳われた、遥かな上位者。
胸を借りるつもりで、全力を出すだけっス!
「1つ殴って加速! 2つ殴って更に加速!
グーパンチ!」
付与を速度上昇に極振り。
推進力を発生させるグーパンチで、とにかく動き回る。
何故ならば。
「斬撃の結界。良い判断だ。
止まればそこは君の死地となる」
剣が、見えない。
疾すぎる。
速いかどうかならば、速いと言える。
でもその速度そのものは速くない。
ステータスが低いから。
でもその行動の起こりが全く読み取れない。
これが、英雄の技量。
操られることなく、自らの意思で身体を扱う、剣士の高み。
まっ、オイラはグーパンチ。
剣の高みとかタカミーとか宝の富ーとか知らないっス。
オイラの飛ばすグーパンチと、リチャードさんの飛ぶ斬撃。
衝突すれば、オイラのグーパンチは負ける。
威力が違うんス。
下地となるステータスは似たようなものでも、引き出せる威力が違いすぎるっス。
だから、飛ぶ斬撃には、そのままグーパンチを当てる。
もちろん、真正面から当てるわけもないっス。
側面から殴り付けて、破壊し、逸らし、逸らした先の他の斬撃に当てて、安全圏を増やす。
そして、薄くなったところに突撃!
最速の一撃!
グーパン────中止!
「…………剣の間合いっスよね」
「そうとも。ここより先は、私の剣界。
入れば即座に切り落とす。
遠くにいるというならば、唯唯斬撃を飛ばしていくだけさ。
君のそのグーパンチという技術は実に素晴らしい。
私の斬撃。自信の有るものなのだが、ひょいひょい逸らしてくれている。
ロードが目をかけるだけはある。
だがそれだけだ。
君は動きを見せすぎている」
くっ!
捌ききれない攻撃と、捌きにくい攻撃の合わせ技!
詰将棋のように、必死をかけながら、オイラの選択肢を削ってくる!
角度により、破壊も逸らしも難しい斬撃を最小限に受け。
捌きにくくとも捌けてしまうが故に、捌かずにはいられず。
捌かなければそもそも終わり、捌けば次の選択肢が削られる。
身体に無数の切り傷を作りつつも、斬撃の波を潜り抜ける。
次に、来る。
そう、次の波は、詰め。
逃げ場のない終わり。
だからこそ──ここしかないっスよ!
更なる、重ねがけ。
本来なら、無理なんスけど。
無理を通して、道理を蹴っ飛ばす、否、道理をグーパンチして破壊する!
偉大なるアニキの言葉。
そう、身体が自壊するのを厭わずにやれば!
更なる加速は出来る!
たとえ5秒後にのたうち回ろうとも!
だって1秒後に死にそうだから!
本来2本のグーパンチの、2つの付与。
しかし、グーパンチを構成する指は母指を除き8本!
それぞれの加速をもって、8回の重ねがけ!
「ほう」
身体を壊しながら、更に進む!
放つは最速の、グーパンチ!
「そこは私の剣界だ」
音はない。
音を発生させるような、生なかな技量ではない斬撃。
数打ちの濫造品である筈のそれは、驚異の切れ味をもってオイラの腕を侵食していく。
伸ばした右腕は、断たれる。
痛みの信号が脳に伝達される前に、右腕は吹っ飛んでいく。
そのままの勢いで、リチャードさんの方向に飛んでいく、オイラの右腕であった物体。
「残念だったね。君の腕では、私に届かない」
「いいや! 届くっス!
届かせる! 届いてるっス!」
オイラの右腕は!
あなたの目の前に有る!
「遅延式グーパンチ発動! 例え断たれていても、力は残っているっス!」
込めたイメージは!
「うっ! 閃光!」
フラッシュグレネード!
ただ眩しくうるさいだけじゃない!
贄としての力を発揮させた、ジャミング!
例え目と耳以外の感覚で情報を得ようとしても、それを乱すオイラの腕!
そして放つ!
残りすべてのエネルギーをもって放つ!
オイラの必殺技!
「<究極願望的殴拳打>!!!」
最速をも越える、究極を望む一撃は。
「凄いね。でも、<剣士の勘>をジャミング出来なかったのが、君の敗因だ」
目も見えず、耳も聞こえず、空間をジャミングされてなお。
勘ただ1つで──オイラの左腕。
残った唯一の武器が飛んでいき。
「経験しておくと良い。
これが、剣の術だ」
オイラはサイコロ状に切り裂かれたっス……。
勘って強すぎィ!
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新年度が本格的に始まるので、来週から不定期になっていきます。
楽しみにしてくれる方には申し訳ありませんが、執筆を続けるにはリアルをどうにかしなければいけないという、至極当然の理屈が存在します。
どうか、ブクマはそのままで、更新してたら良いな、位の気持ちでお待ちいただけると幸いです。
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