第130話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──8話
視点:花粉症を知ったアウト
いやーひどい目にあったっス。
オイラのグーパンチには、確かに回復系は有るんス。
殴って回復のイメージを叩き込んだり、毒素だけを殴り飛ばしたり。
相手の魔術を殴ったり、解除したり、幻想をぶち殴ったりも出来るんで、<呪術>にも対抗策は有るんスよ。
ただし、発動できれば、という枕詞がついてしまうんス。
オイラのグーパンチは、世界の常識をも塗り替えるようなイメージ力が必要になるんス。
言い換えれば、集中しなければいけない。
……花粉症って、さっぱり集中出来ないっスねぇ。
そういやこの世界、というか<レッドの腕輪>内は1000倍とは行かないけれど加速された空間……。
「バーストリnぐはぁ!?」
『なにやらかそうとしてるかね』
「いや思い付いたんで、咄嗟に。
というか戦闘能力ないんじゃないんスか?」
今凄い動きで後ろ回し蹴りの踵を叩き込まれたんスけど。
しかもオイラの意識外から放つというおまけ付き。
『これはあれだ。ギャグ時空のみの戦闘力だ』
「マジっスか!?」
あの死んだのに、2コマあとにひょっこり生き返ってたり。
リンゴは潰せないのに頭蓋骨はミシミシできたり。
あのギャグ時空!?
『嘘だ』
「嘘なんスか!?」
『出来るわけがないだろう。ギャグ時空の解析すら出来てないんだから。
単純にこのアヴァタールの動きをオーバーロードさせただけだ。
素早いが威力は大してなかっただろう』
嘘だったっスー。
って、解析する気なんスかこのアニキ。
あのギャグ時空を?
確かに威力なくて、痛くもないのにイタッ! って言っちゃう程度だったっスけど。
『この世に出来ないことはない。というより、創り造った神が神だからな。
そんなスキルがあってもおかしくないし』
「なんという説得力っスか……。
あっ、アホな会話してたら着いたっスね」
ちなみにとことこ歩きながらの会話っス。
危険はないっスよ。すれ違いにもならないんで。
だって皆頭下げてるっス。
アニキ様のお通りっスからね。アヴァタールだけど。
ここはリチャードさんの向かう先にあった、建築中のエリア。
……。
「この【ただいま建築中ですm(_ _)m】の看板要るんスか?
オイラ達行動可能なエリア指定受けてるっスから、こんなの置かなくても誰も忍び込もうとしないっスよ?」
『ぶっちゃけ要らん。単に趣味と実益を兼ねただけだ』
やっぱり要らないんスね。
ちなみに、看板のイメージは、【ただいま工事中】の看板をイメージしてくれれば良いっス。
ご丁寧に、ヘルメットを被ったモグラさんがぺこりしてるっス。
黄色と黒で、m(_ _)mもきちんと描かれてるっス。
「実益?」
『ああ。色んな種族の進化先を俺が奨励してるの知ってるだろ?』
「ええまぁ。最初の頃はともかく、最近はメンバー固定されて、余裕が出来て来たっスからね。
今は特に生産系の発掘に力入れ始めたんスよね?」
ちなみにオイラは何も言われてないっス。
お前はきっと面白いことになるから何も言わねぇ、と。
否定できないっス。?ってなんなんスかねー。
『ああ。ファーマー系に進化して俺もにっこりだ。
ゴブリン達の中で、特に手先が器用で、絵画や描画に興味を示した奴に画材を渡してな。
色々試させたわけよ。
んで、その試作品の1つを置いてみた訳だ』
「それがこの何処かで見たこと有るような看板っスか……」
なるほど、これはゴブリンの試作品だったんスか。
『いやお前見たことないだろ。記憶の情報だろ』
「いやまあ慣用句じゃないっスか。
スキルは習得したんスか? そのゴブリンとアニキは。
というか、絵画と描画って違うんスか?」
『俺的な解釈だが。
絵画:絵と画。画かれた絵のこと。つまりは絵、そのもののこと。
描画。画を描くこと。絵を描くという動作のこと。
みたいな感じだ。
まあ判子と印鑑みたいな関係だな。
名付けたゴブリン、【クロー】【ドモネー】は<描画>スキルを獲得したな。
ずっと絵を描かせてたら、ゴブリン・画家にランクアップしたよ』
クローとドモネー?
「その人、印象派じゃないんスか?」
『いや、適当に思い付いたの付けただけだからなぁ。
むしろダヴィンチさん行かなかったことを褒めて欲しいくらいだ』
「いやいや、適当に名付けてるじゃないっスか。
めっちゃ喜んでるんじゃないっスか? そのゴブリン達」
ダヴィンチさん行かなかったのは……。
「あっ、あの人万能者とか呼ばれてたスゲー人でしたっけ」
『うむ。俺の認識でどうなるか分からないからな。
万能なことが出来そうな奴に名付けようと思い止まった訳だ。
……なんで看板の話でこんなに長くなるのか分からんが……いやアウトのせいか』
「いやいやアニキの影響でしょうよ、殆ど」
『いやいやいや……』
「いやいやいやいや」
いやいやいやいや。
やいのやいのやいのやいの。
やーれんそーらんそらそらそらそら。
……
…………
………………
『気を取り直して行くか。そろそろ準備も出来ただろう』
「あっ、時間稼ぎもあったんスね」
まあ加速係数変えればいいんで、単なる戯れっスけど。
この戯れを羨ましがる配下も一杯っス。
『んじゃ、入るぞ』
そのままエリアに入っていくと……?
「道場?」
『俺の情報有るから分かるわな。
そう、ここは道場。
そんで道場主が──』
「──私になります。改めまして、リチャード・セイズです。
ロードの配下としては新参者で外様ですが、宜しくお願いするよ、アウト殿」
「あっ、こちらこそっス。
オイラは殿呼びなんか要らないっスよ?」
「そうかい? ならばアウト君と呼んでも良いかな?」
「あっ、それでお願いするっス」
綺麗な姿勢っスねぇー。
ピンっと背筋が通っているっスよ。
『んじゃあアウト。とりま一本、リチャードと殺ってこい』
「はい!?」
「では構えてくださいアウト君」
ヤバイ!
分かってないのはオイラだけ!?
いや分かってはいるっスけど。
リチャードさんランク8で、オイラは落ちこぼれのランク4ゴブリンっスよー!?
普通に殺されるっスー!
4/5
超逆境クイズバトル観てます。
面白いですねー。やらせとか全くなさそう。
まあテレビ観てる時にやらせ云々は考えないようにしてますけどね。
今、「あなたの人生、ロードしますか?」「はい/いいえ」という作品を読んでます。
しゅうきちさん、という方が書いていて、骨々だんじょん 作りかけ という作品から入りました。
面白いです。色々と伏線もあって、面白い作品ですよー。




