第128話:外伝:とっちゃんのアウトな日々──6話
サブタイトルがナンバリングだけって、すげー楽。
そしてアウトの場合、書くのがすげー楽。
視点:言うまでもなくアウト
居住スペースの説明していたら、木の上に居たトウゾさんに話しかけられたっス。
トウゾさんは悪いゴブリンではないんスけど、隠密かけてヒトを驚かせるのが好きなゴブリンでも有るんス。
見た目がカッコいいんで、ハマってると言えばハマってるんスけどね。
──しかも今は、グラサンにタバコというハードボイルド要素。
「何もってんだアウト。お前さん、武器の類いはからっきしだろ?」
「ああこれはマイクっスよ。
アニキに頼まれて、居住スペースを回ってたっス」
そう言うと、一服タバコを燻らせて煙を吐くっス。
あっ、煙の輪っか。上手いもんスね。
「マイク……? 拡声器のことか。
<指揮>持ちの指示に使えそうだな」
あっ、そんな風に使うんスか。
いや、拡声器ってそういうもんスよね。普通。
念話も有るんスけど、きちんと声で指示を出した方が効果が高まるんスよ。
まあこれ、拡声器としての機能有るんスけど、画像検索で出てくるような、テレビマイク風なんスけどね。
「トウゾさんのサングラスとタバコはどうしたんスか?」
「おう。これは大将の試作品でな。
俺はテスターの1人なんだわ」
「あー。なるほど。どんな能力が有るんスか?」
オイラ達がアニキの製品をテストすることはよく有るっス。
ほら、死んでも平気なんで。
最初から、不具合なく完璧に作るよりも、マイナスが有っても良いんで沢山作る。
それから検証した方が、結果的に良い製品を、より多く作成出来るらしいっス。
タバコを口の端に咥えて上下させながら、煙を燻らせてるっス。
すげー決まってるっスねぇ。
「このサングラスは、視覚系の強化だな。
大将が1から作り出したガラスに、光・闇属性魔術と、視覚系スキルを付与したもんでな。
<暗視>が出来たり、閃光からの視覚保護とかも出来んだよ」
ほえー。
ネタ装備かと思いきや、がっちり実用的な品っスね。
「それは良さそうっスけど、何か他には有るんスか?」
「視覚系程じゃないが、敵への<集中>効果が有るみたいで、命中率が少しだけ上昇する。
あと何故か、<投擲>への補助が入る」
それはどう考えても、アニキのイメージじゃないっスかね。
グラサンのイメージが、スナイパー的な。
「ただ、良いこと尽くめって訳でもないんだな。
日光下でも、暗闇でも安定した視界を確保出来る代わりに、色彩感覚がな。
モノトーンに近くなる上に、色の見え方が変わる。
俺としちゃあ、充分すぎる程に効果が有ると思うんだが、我等が大将は流石だな。
妥協せず、上を目指すとよ」
「まあアニキっスからねぇ」
グラサンの時点で色変わるの仕方なくないスかね?
「んで、こっちのタバコは大将の前世に有ったようなタバコとは違って、依存物質も快楽物質も入ってねぇ。
天然素材だけらしい。
天然っても、農園とかで取れたハーブとかだけどな」
天然ハーブのタバコって、嫌なイメージなんスけど……。
アニキだから大丈夫なはず。
きっと、たぶん、めいびー。スっスっス。
「むしろ身体に良いみたいだぜ?
魔力の回復速度上昇とかな。
しかも、ポーションなんかと競合せず、同時服用可能。相乗効果も有るぐらいだ」
「それはお腹に入れるポーションと、肺に入れるタバコの違いから産まれるんスかね?」
「それも検証中だ。
ただ、身体に害自体はねぇんだが、肺に煙を入れるっつーことが出来ねぇのも居るんだわ。
俺はこれに慣れたけどな。
しかも、このタバコだと、消臭効果が有る上に、隠密に補正が掛かるんだよ」
「おお! それは凄いっスね!」
「微量だがな。だがその微量で命運を分けるってことも有るもんだ。
そういや、アウトにはテストの宣告も行ってねぇようだな。その様子だと。
まぁ、アウトにはタバコ(の煙)は合わなそうだな」
「そうっスね。オイラにタバコは(雰囲気的に)会わないと思うっス」
「……おっと、次のを出すか」
咥えるフィルターって言うんスかね?
そこまで吸った吸い殻を、指パッチンして燃やし。
懐から出したタバコケースからトントンして、新しいタバコを咥えて、指パッチン。
「──ふー」
「すんごい突っ込みどころ合ったっスね」
あのトントンする仕草はどう考えてもアニキの入れ知恵っス。
アニキ自身はタバコは好きじゃなかった筈っスけど、タバコキャラは好きだったっスからねぇ。
死ぬときに、あーこの一本位吸わせてくれや、みたいにカッコいいオトコ的な。
キセルな女主人キャラも良いとか言ってたかな?
「トウゾさんも魔術取得したんスか?」
確かゴブリン隊では、マホさんとホリィさんが魔術メインで。
アナさんがサブで使ってた筈。
「おう。主にエル様の教えを貰ってな?
そろそろ、物理メインでもサブで魔術が有った方が良いってことでな。
選択肢が増えるし、魔術付与した槍とかを自前で出来るようになるのはデカイ」
それはそうっスね。
戦士キャラでも、1つくらいは持たせとかないと、詰んだりするし。
オイラはグーパンチ極振りなんスけど、グーパンチで大体出来るっスから。
アニキは、一極万能型とか言ってたかな?
「それじゃあトウゾさんは、火属性を?」
でも何か違ったような。
感じから、スキルではなく魔術なのは分かったけれど、それ以上は専門じゃないからさっぱりっスね。
「いいや? 俺のは違う。<生活魔術>って奴さ」
「生活? それって、各属性の、初級以下の寄せ集めみたいな?」
「その認識で、一応は合ってるさ」
そう言って、トウゾさんは指パッチンしながら火種を、水を、微風を、砂を作りだしたっス。
指パッチン似合うっスねぇ。
そういや、最近アニキが魔術の詠唱行動のトリガーとして使い始めてたから、その真似かな?
「一応は、っスね。
あのアニキのことだから、そんな単純じゃあ」
「ないわな」
やっぱり。
「アウト。生活ってなぁ、なんだ?」
「? 生きて活動することっスよね?」
「だわな。普通の人間なら、火種やら水やら、それが生活に必要だろうな。
だが、俺たちはなんだ?
俺たちが生活するのは、何の為であり、何が生活に当たる?」
ハッ!
まさか!
「そういうことさ」
そう言って、トウゾさんはもう一度指パッチン。
ボオゥッ!
「うわ! おっきい火の玉っスね」
「まっ。まだスキルレベルは低いし、そもそも魔術系ステータスも低い。
だが、充分に武器の1つだ。
特に俺はアイテムと組み合わせて使うのが前提だからな」
うわぁ。エグい。
手榴弾に火種とか、薬の散布に風とか。
水で地面を泥濘に変えたり、砂で埋めて工作したり。
そもそもの<生活魔術>でも、使いようによっては極悪なのに。
オイラ達の生活。
それ即ち人間を滅ぼすこと。
その為の、<生活魔術>。
「確かアニキは文学的アプローチとか言ってましたっけ?
確か尊敬している作家の言葉が元になっているらしいっスけど」
「すげぇもんだよな。スキルには、認識の壁ってのが有るらしいが実際に変わるし。
……それを成すために、凄まじい意識改造されたけどな。
よくアウトは耐えられたな、アレ」
「あっ、トウゾさんも食らったんスか、アレ。
アレ丸一日は意識飛ぶっスよねー」
「おま……1日で済むのかよ……。
いや何でもねぇ。
やっぱお前さんは凄いな」
「? なんのことっスか?」
「わかんねぇなら良いさ……ん?
ありゃー。リチャードの旦那と、……大将!?」
「あれ? ここ居住スペースっスけど」
何か技術革新したんスかね?
アニキは自分のポケットである、<レッドの腕輪>内には入れない筈っスけど。
行ってみるっスかねー。
出遅れテイマーのその日暮らしという作品を最近読んでます。
そろそろ現行まで追い付きそう。
この作品は転生したら剣でした、の作者の棚架ユウ先生の別作品で、VRMMO風味です。
書籍化もされてるようです。
棚架ユウ先生の作品は、個人的に合うようです。
皆さんも、感性に合う作品に出会えることを、こっそり願っておきます。
出来れば自作品とか。
合わなかったら、何も言わずにブクマ解除しましょう。
批評は良いですが、批判はしない、そんな誰にも優しい世界に。




