第120話:鍛冶師の熱は滾る──その2
視点:ヤード・ギルザ(都市セイレルの親方鍛冶師)
契約ってのは、普通に約束するものとは違う。
お互いの魂に、契約条項を盛り込み、世界のルールとやらがそれを強制するものだ。
きちんとは知らねぇ。
ここら辺は、神の領域になるからな。
ただ、契約系スキルや、それらを用いて作る契約アイテムの効果はかなり強い。
その契約を持ち出してきたと言うことは、何かしらの理由が有る。
そしてその契約内容の報酬、それは防具を、レッドの盾を造ること。
それはなんのことはねぇ、俺は鍛冶師だ。
俺の防具が欲しいのならそれで良い、それでこの事態が収束できるなら尚更だ。
そして、俺の鍛冶風景が見たいってのは良くわからん。
鍛冶師なら分かるが、なんで冒険者が見たいのかね。
そんで、契約するのならと、俺も盛り込んだ。
俺も付いていくと。
これでも俺は戦えるし、オーダーメイドで造るのなら採掘から、戦い方を見てからやりたかった。
最後にレッドは、情報の秘匿だ。
アイテムボックスなんて持っている上に、腕の良い錬金術師との伝が有るという。
加えて冒険者には、奥の手が有るものだ。
まぁ、色々と有るんだろうが、聞くのは野暮ってものだろう。
きちんと話し合い、条項と条件を詰める。
こういうのは、適当に済ませられんかな。
あまり得意ではないんだが。
ギルドの嬢ちゃんにも見てもらい、サインする。
翌日、鉱山へのアタックだ。
きちんと準備しよう。
──────────
俺が準備を整えてギルドへ行くと、レッドが待っていた。
テイマーらしいのは知っていたが、強力そうな馬たちだ。
下手な貴族なら所持していないだろうという魔物馬。
その俺に、レッドはアクセサリーを渡してきた。
<物品鑑定>で見たところ、呪詛耐性が付いていた上に、装備者の位置を対応する装備に送信する機能が付いていた。
呪詛耐性は有りがたいし、位置送信ははぐれた時のためだろう。
髭に絡まないように気を付けて、ネックレス型のアクセサリーを装備する。
馬車にはうさぎも居た。
やけに雰囲気の有るつのうさぎだ。
うさぎだけでなく、鳥も居る。
かなりの手数だな。
オーク・キングは、従魔の力も使って倒したのだろう。
馬が魔術を、しかも適性の少ない光系を使えるなんてな。
レイスが襲ってきたが、レッドがあっさりと倒してしまった。
退散系のスキルか?
隠したいのも分かるな。
教会と関り合いになりたくないように思えたし、退散系を持っていると、あいつらは追ってくるからな。
追うのはアンデッドにしとけってんだ。
鉱山施設は、殆ど壊されていなかった。
レッドが言うには、アンデッドが居そうだという。
更に従魔を呼び出した。
サモニングも出来るとはな……。
呼び出されたのは、ゴブリン。
しかし、醜悪な感じでもなく、知性を感じさせる動きだ。
特に忌避感がないのは、仮面か?
<仮面の色彩>というパーティー名だが、それはレッドとユニ嬢ちゃんだけじゃなかったんだな。
上位種であり、それぞれの装備が有る。
魔物装備と言う奴は、鍛冶師泣かせだな。
勝手に強くなりやがるし。
その武器も、きちんと鍛えたものを、更に進化させるとより凶悪になる。
良いものを持ってるな、このゴブリン達は。
それを見ていると、スケルトンが現れた。
人骨だけでなく、色々な動物の骨格も居る。
スケルトン相手には、俺の鎚は有効だ。
レッドは妙な形の杖でスケルトンを殴りまくり、ゴブリン達もそれぞれ、前衛・中衛・後衛に別れ、有機的に行動している。
俺もハンマーで砕いていたが、良い働きをするな、こいつら。
そしてレッドが光の攻撃で、リーダーらしき奴を倒すと更に楽になった。
ユニ嬢ちゃんも、何らかの妨害攻撃をしていたようで、良く回りが見えているようだった。
良いパーティーだな。
鉱山に入ると、レッドと明かりを確保した。
地理系のスキルも有るらしく、頼もしい限りだ。
鉱山内部ではゴーレムが出てきた。
ここでも俺の鎚は使える。
レッドが先程とは違う、棍を装備しゴーレムを砕いていく。
俺も鎚で砕く。よし、俺もまだまだ戦えるな。
しかし本当にレッドは多彩で、なおかつ色々な手札を持っているな。
アイテムボックスにもよく入るようだし。
隠し事が多いのも大変だろうな。
ゴーレムを倒し、一息つくと、ゾンビだ。
何人かは、見覚えがある。
知り合いの鉱夫だ。
レッドに駄目元で頼んでみると、聞いてくれた。
というか腐臭をどうにかしてくれたのは本当に助かった。
まさか水を使うとは思わなかったがな。
浄化の水を操って攻撃と妨害を両立するとは。
お陰で、死体だけとはいえ、確保できた。
この辺から、完全に俺は足手まといだったな。
リッチが出てきて、冒険者のゾンビという強力な相手をすぐさま無力化し、リッチの垂れ流す話から色々と情報を拾い上げているようだった。
その後、元英雄らしいアンデッドが出てきた。
そのアンデッドの持つ風格はかなりのものだ。
レッドの首が切り裂かれ、血が噴き出してもうダメかと思ったよ。
幻術と後で聞いたがな。
不甲斐ないことに、俺は途中リッチの呪術で気絶しちまった。
レッドから預かったネックレスで、気絶で済み、レッドがリッチ達を倒せたから良かった。
本当に良かったぜ。
レッドの動きや戦いぶりを見られなかったのは残念だが、今までの動きだけでも、ある程度レッドの動きは把握できた。
その後も、もぐらの従魔や、やけに手際の良い採掘を横目に、俺も採掘して、様々な鉱石を得られた。
アイテムボックスってのは、本当に便利だな。
あと低ランクって絶対嘘だろそれ。
セイレルに帰ってきて、ギルドへの報告。
そして俺は鍛冶の準備を整え、レッドを案内している。
さあ、ここ数日燻っていた俺の熱を。
全てを込めて鍛冶をしよう。
契約の、依頼の報酬でもあるし、俺が鍛冶をしたいからでもある。
俺の最高傑作って奴を造ってやるとするか!
作中のヤードの視点には色々突っ込みどころ満載です。
勘違い要素って、これで良いのか……?
いや違う(反語)騙してる要素ですね。
3/26
本日のテレビ。
サスケ。
ええ好きです。出れるような肉体ではないですが、見るの大好きです。
今終わりました。ネタバレはしないので、ニュースを見るか、リアルで見た人は多分色々思ってることでしょう。
とりあえず、新ステージぱねぇ。




