第115話:強力無比にして神算鬼謀たる呪術師の華麗なる英雄譚──小物のどうでも良い歴史:後編
2018 3/21
ブックマークが200を越えてました。
凄く嬉しいことです。
あのあらすじとタグを乗り越え、お読み頂ける読者の方々へ、お礼申し上げますm(_ _)m
これからもお付き合い頂ければ幸いです。
視点:リッチ=ウォーレス・ミルワード
む……ここは。
リライガ王国で起きた魔物の氾濫。
それらをある程度確認し、王族の、特にあの第二王女の死亡もきっちりと視認してから、術式を発動した。
そして今、俺……いや我はここに再誕した。
この身体は……リッチか。
鑑定等はできないし、それらの技能もない。
ただ、自分が何が出来るか、どういう存在なのかはある程度分かる。
魔物は本能的に自分の力を理解できるとは本当のことだったか。
いや、生まれる際に情報が我に組み込まれているのか?
俺が死に、我になるまで、数百年単位で時間が過ぎているのが分かる。
術式が発動し、効力を表すのに元々時間がかかるのは想定内であった。
むしろ、時間が経つ方が、我のことを知るものが減って助かるというもの。
うむ。呪術の力はかなり増している。
加えて、死霊魔術も使えるようになっているな。
元々興味が有り調べていた魔術だ、使えるようになって嬉しいものだ。
他には……精神魔術。リッチの得意とする魔術はある程度使える。
……だが、リライガ王国で生まれた負の怨念を使ったにしては、少し弱いような。
もっと強くなっていてもおかしくはない。
確かにリッチの強さは、その狡猾さと、不死を生かした成長とされるのだが。
お?
我の持つ杖、これは俺の時から持っていたものではないか。
操る能力を増す、そこそこのカースド・ウェポンだった為くすねて使っていたものだ。
転生のとき、付いてきたのかだろうか?
む? カースド・ウェポンも成長するのは知っていたが、これも成長したのか。
この杖を通して使うと、死霊魔術の通りが良い。そのような力が有るのだろうか。
呪術師だったとはいえ、その鑑定能力はあったわけではない為、確実には分からないな。
そうだ!
確かもう1つ、死の間際にも使っていたものがあった。
<復讐ノ連鎖>という名称の鎖で、リチャードを操るのに使ったカースド・ウェポン。
……反応がある!
「召喚ダ!」
鎖を通じて、何かを感じる。
おお!
懐かしさすら感じるこの力!
「リチャード! 貴様リチャードカ!」
鎖という因果を通じて、我に使役されていたのか!
……我より、明らかに強くないか、リチャード。
英雄であるリチャードが、俺より強かったのは流石にわかっている。
転生しても、リチャードの方が強いだと。
ハッ! まさか、こいつが負の怨念を吸収したために、力が分散してしまったのでは!?
なんと忌々しい……待てよ?
我より強いだろうが、こいつは我の力、我の剣ではないか?
「命令ダ! リチャード、剣ヲ素振リシテイロ!」
ずっと待機していたリチャードに、命令を与えるとそのまま動き出した。
おお、おお、おお!
これは良い!
我より強いが、あのリチャード程の力はないように感じる。
だがしかし、リチャードは天才だ。
こいつを調べ尽くした我は知っている。
こいつなら、何でも出来る! こいつがいれば、我は無敵だ!
ククク、クックック!
「なんだぁ? あっちから音がすんぜぇ?」
「ゴーレムかぁ? 冒険者さん、ゴーレムだったら頼んます」
「おうよ、任せておきな!」
チッ、邪魔を……。ここは、鉱山か?
ならば人間が、手駒に出来るものが居るじゃないか!
今の我なら、殺して支配できる!
「行ケ! リチャード! 出来ル限リ傷ヲ付ケズ殺シテ来イ!」
リチャードの力はやはり素晴らしかった!
技剣のリチャードと呼ばれただけはあり、綺麗な死体がたくさん手に入った。
リチャードの剣も、リチャードが人間だったから頃からの引き継ぎのようだ。
いやはや、我は最強ではないか?
「こっちの方から変な気配がするぞ」
「鉱夫達の反応は?」
「そっちはダメだ」
「こっちは……んな! リッチだと!?」
また素材が集まるな。
「リチャードヨ! 襲ッテクル冒険者ヲ殺シテ来イ!」
5人もの素材が集まった。
魔術の試し打ちも出来たし、うむ。このリッチの身体、人間の時より良いものだ。
──────────
転生してから、3日ほど経った。
あれから、ゴーレムを動かしてみたり、ゾンビを作ってみたり、レイスを放ってみたり、色々と実験してみた。
楽しいものだ。ただ、素材が集まらないのが残念だ。
人間以外なら集まるのだが……。
1つ問題を見付けた。
リチャードは強い。
その分、他の雑魚と併用できない。
まぁ、我とリチャードが居れば何も問題はないがな。
お?
素材が来たか?
……
…………
………………
ふむ、スケルトンを倒せる強さか。
おかしなパーティーなことだ。
……
…………
…………………
ゴーレムを倒し、目も消され、我は自ら戦ってやろうと前へ出た。
まずは下僕どもで相手をしてやろ……消された?
ふむ。人間というものは、躊躇したりするはずなのだが。
リッチになり、精神構造も変わったのか、人間を殺し、支配することに何も感じない。
人間のときは、人間を殺すことを流石に少しは感じていたはずなのだが。
ゾンビ達はあっさり浄化され、手下と思われる仮面ゴブリン達に回収された。
まぁいい、所詮は雑魚だ。
こいつらを殺せば戻ってくる。
ほう、アイテムボックス持ちか。有用な素材のようだ。
ククク、使えそうだな。
さぁ、リチャード、さっさとカタをつけてしまえ。
──────────
あいつは本当に人間なのか!?
リチャードの剣が首を断ったと思ったら、血液が武器になってリチャードを襲い出した!
流石にリチャードの方が圧倒的だが、どれだけ斬りつけてもすぐに治ってしまう。
おまけに、我の呪術は返されてしまうだと!
しかも仮面ゴブリンと、妙な角ウサギどもが襲ってくる。
力は大したことはないが、邪魔だ。
おまけに、奥に居たドワーフは簡単に倒れたが、ゴブリンのうちの1体が解呪を使えるようだ。
ゴブリンのくせになまいきだ!
妙な角ウサギには、そもそも呪いが弾かれる上に、妙な打撃武器で、呪いに近い何かを付与される。
対抗は出来るが、なんと面倒な!
一番小柄なゴブリンは、一番弱いかと思ったら一番厄介だ!
なぜ呪術を殴って弾けるんだ!
ある程度は通じるが、他のゴブリン程には通じない上に、一番前に出てきては殴ってくる!
グッ、負の生命力を僅かだが削られる。
特攻か? いったいなんなんだあの変なゴブリンは!
しかも、こいつら揃って精神魔術が効きやしない!
死霊魔術はリチャードを使っているため、殆ど使えない上に、あのゴブリンが邪魔で使えるものも使えない!
ええい!
いい加減、あの人間もどきをさっさと殺さないか!
英雄の名が泣くぞ!
ゴブリン達も邪魔だ!
無属性魔術を使って、呪術と織り混ぜていく。
!
なんだ!
なんだあの武器は!
強い呪いの気配……が、一瞬で消えた? 隠された?
あいつもカースド・ウェポン使いか!
────!
あっ、あいつ!
リチャードの動きに付いていっている!?
それどころか、どんどん動きが良くなって、リチャードが、あのリチャードが押されている!?
ええい! ゴブリンどもめ! 邪魔するな! さっさと死ね!
なぜウサギには何一つ攻撃が当たらないのだ!
ゴブリンどもにかかずらっているうちに、リチャードの四肢が斬り飛ばされ、止めを刺された!?
だが、リチャードはアンデッド!
我の死霊魔術で再度────
「貴様! リチャード二何ヲシタ!」
リチャードと我の間に繋がったパスが、ない!?
どういうことだ!
──まっ、まずい!
奴が来る! どこかリチャードに似た動きで、やつが、くる!
「クッ! コウナッタラ────」
死霊魔術を──
「ア゛─────!!!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!
リッチの身体で、何故こんなにも痛みを!?
これは呪い!?
呪術師の我に、呪いがなぜ!?
アアアア!?
狂う壊れる砕ける乱れる割ける裂ける痛む傷むア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛─────
──我が一体、何をしたと、何が成せたと、言うのだ──
『知るかボケ』
─────────ッ。




